
その原因は多岐にわたるだろうが,一番は保全技術の軽視であろうと思う.
保全作業というのは,一見いつも同じことをしている.変化がない.
言ってみれば,バカの一つ覚え,のような仕事なのである.
それを,創造的な仕事ではない,と考えてしまう人がいる.
創造性にばかり価値を置く人種である.
そんな仕事はだれでもできる,と短絡的に考える経営者がいる.
そんな仕事をわざわざ高い給料の社員にやらせることはないじゃないか,と.
定型的な保全作業なんだから,マニュアルを整備し,だれでもそれを見て作業できるようにすればいいじゃないか.
だから,作業員はアルバイトや短期雇用でいい.
社員は監督する人だけいればいい.
そうすれば人件費が減り,収益も上がる.
運賃の値上げもしなくてすみ,消費者だって喜ぶ.
そう言う人がいるけど,それは違う.
保全産業のマニュアルは量質とも高い.
それを読みこなすには一定の技量が必要だ.
ファーストフードの店員さんが参照するマニュアルとはまったく別物なのだ.
マニュアルは読みこなせるだけでは不十分だ.
トラブルがあった時に,瞬時に対応できるためには,マニュアルの内容を記憶しておかなくてはならない.
少なくとも,その対応法がマニュアルのどこに書いてあるかわかり,すぐにその部分を読んで行動に移せるようにしておかなくてはならない.
ファーストフード店のようなごく簡単なマニュアルでさえ,きちんと読んで,理解して行動できない人もいる.
店にダメ店員がいて,マニュアル外のことをしてお客さんが怒ったとしても,店長が謝ればそれですむ.
だが保全業務の場合,取り返しの付かない事故につながってしまう.
マニュアルを読みこなし,それをある程度記憶し,瞬時に対応できるようにする.
読むだけではダメで,実際に操作する機械や施設と関連させながら,具体的に内容を把握していく必要がある.
全くゼロからスタートするアルバイトや短期雇用の者に,それを期待できるだろうか.
アルバイトや短期雇用で勤務する者が,いつこの仕事を辞めるかわからない状況で,そんなめんどうなことをしたいと思うだろうか.
そして監督者の育成.
保全技術のマニュアルは,全て実際の機械や施設と強く関連している.あたりまえだけど.
だから,その機械,施設を実際に取り扱う経験がないと,マニュアルを具体的には理解できないのだ.
たとえば昨日まで経理の仕事をしていた社員が,保全作業の監督はできない.
マニュアルを読んでも字面しかわからないからだ.
監督者も具体的な保全作業を通してしか育たないのだ.
定型的な保全作業なんだから,マニュアルを整備し,だれでもそれを見て作業できるようにすればいいじゃないか.
だから,作業員はアルバイトや短期雇用でいい.
社員は監督する人だけいればいい.
その方針に変えても,最初のうちはうまくいく.
監督者がいるからだ.
その監督者は長い年月をかけて,マニュアルを読み込み,実際の機械,施設を操作し,保全してきたからだ.
だから未熟な作業員に対して適切な指導もできるし,その結果を評価し,ダメなら是正することもできる.
けれどもその監督もやがては年を取り,リタイアしていく.
その時,その代わりとなり,引き継ぐことのできる人材がいるか?
いないのである.
仕方なく,昨日まで経理をやっていたような人を配置してしまう.
こうして事故は起こるのである.
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