2010年4月11日日曜日

おばあさんがいるのは人間だけ


こんにちは

人間には<おばあさん>がいます。
そんなこと当たり前のことのようですが、動物全体を見渡すと全然あたりまえじゃないんです。
他の動物には<おばあさん>にあたるものは、ちっともいないのです。

鮭の産卵を思い出してみてください。
産卵を終えた親鮭は、そこで死んでしまいます。
動物は、生殖が出来なくなってしまうと死んでしまうのが普通です。
人間と進化的に近いチンパンジーでも、メスの繁殖期間は36,7歳までですが寿命は40歳です。
繁殖期間が終われば、その個体はもうこの世に用はないのです。

ところが人間の女性は80歳を超えるまで生きます。
でも女性が赤ちゃんを産めるのはせいぜい50歳くらいまでです。
普通の動物なら50歳で死ぬのが自然なのです。
なぜ人間の女性は、繁殖年齢を過ぎても30年以上も生き続けるのでしょうか?

進化論の研究に「おばあさん仮説」というものがあります。
それは、<おばあさんが娘の子ども、すなわち孫の面倒をみることが、自分の子孫をたくさん残すことに役立つ>という仮説です。
これはフィンランドとカナダの教会に残されたたくさんの戸籍記録を統計的に解析して得られた結果から分かったことです。
それによると、生殖年齢を過ぎた後に長生きした女性ほどたくさんの成人した孫を持っていたんだそうです。
このことは、おばあさんが育児に参加することが孫の生存率を上げた、と解釈されています。

人間の子育ては大変です。
面倒もかかりますし、期間も長い。
お母さんだけで育て上げるには、負担が大きすぎます。
お母さんだけで育てるためには、たくさんの子どもを産むことは無理。
それでは自分の子孫をたくさん残せません。
そこで<おばあさん>の登場です。
孫の面倒を見ることによって、お母さんの負担を減らします。
するとお母さんはもっと子どもを産むだけの余裕ができます。

人間の子どもは成長に時間がかかる割には、乳離れは早い。
人間の子どもは1年くらいで乳離れします。
チンパンジーの子どもは3年です。
チンパンジーのお母さんは、子どもが乳離れするまで次の子どもは産みません。
ところが人間は、<年子>なる言葉があるように、乳離れしないうちに次の子どもを妊娠することもあります。
おばあさんが孫の面倒をみてくれるので、母親は安心して次の子どもを産むことが出来るというわけです。

最近、少子化が問題になっています。
それは、核家族化で家族におばあさんがいないため、お母さんの子育ての負担
が大きすぎることも、一因になっているのではないでしょうか。

ちなみに<おじいさん>の方は、長生きと孫の数について有意な相関はないそうです。
男は原理的に死ぬまで繁殖可能なので、他の動物と同じなんです。
歯->眼->マラの順にダメになり、そして死んでいくのです。


「おばあさん仮説」については、長谷川真理子『ヒト、この不思議な生き物はどこから来たのか』ウェッジ選書\1200-に書いてありました。
写真は我が家のおばあちゃんと孫。おばあちゃん、長生きしてねー。

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