2010年12月31日金曜日

抗生物質とMRSA

こんにちは

年末に妻が風邪を引いてしまい、病院にかかってきました。
出されたお薬を飲んだとたん下痢に。
原因は抗生物質。
抗生物質は細菌を殺す物質、抗・生物質です。
抗生物質が風邪の細菌だけじゃなく、腸内にもともといる細菌まで殺してしまった。
なので糞便がきちんと形成されず、下利便状態になってしまったのです。

ところで抗生物質は生物を殺す薬です。
人間だって生物です。
人間の細胞は殺さないのでしょうか。

抗生物質は、細胞壁を合成するのを阻害する薬なんです。
小中学校の理科の授業で、植物の細胞に細胞壁があることを習ったと思います。
実は細菌類にも体の外側に細胞壁があるのです。
細菌が分裂して増えるとき、当然細胞壁も作り出さないとなりません。
でも抗生物質があると、この細胞壁を作ることができなくなってしまいます。
それで細菌は増えることができなくなり、死滅してしまうというわけです。

人間など動物の細胞には細胞壁はありません。
抗生物質があっても、まったく影響を受けません。
動物は進化の過程で細胞壁を作ることをやめちゃったんですね。
細胞壁を作る必要がないので、抗生物質があっても平気なんです。

ただし、人間の腸内にはたくさんの共生菌が住んでいます。
ビフィズス菌、大腸菌などの名前を聞いたことがあるでしょう。
その数は数百兆にもなります。
人間の大便の重さの約半分は、この腸内細菌からなっているそうです。
これら腸内細菌も細胞壁を持っています。
抗生物質を服用すると、腸内細菌も殺してしまうのです。
だから便が軟らかくなったり、下痢のような状態になるのです。

この腸内細菌はただ人間に寄生しているだけじゃありません。
消化を助けたり、ビタミンを合成したり、人間にとって必要な活動もしているのです。
細菌が生きていくためには人の体が必要であり、人も生きていくために細菌が腸内に住んでいる必要がある。
その意味で、腸内細菌は寄生ではなく共生していると言っていいのです。
抗生物質でむやみやたらに殺してはいけないのです。

もちろん、病気の時は抗生物質の力を借りる必要もあります。
病気の時などは体の免疫力が落ちます。
免疫力が落ちると、共生菌ではなく悪玉菌が増えてしまう。
悪玉菌が病気をさらに悪化させるのです。
悪玉菌を殺すために抗生物質を飲む必要もあるのです。

手術の時も手術前に抗生物質を注射しておきます。
体の内部は免疫に守られて無菌状態ですが、そこを切り刻むわけです。
傷口にばい菌が付着するのは避けられません。
このばい菌が増殖してしまっては困ります。
だから抗生物質なしに手術はできないのです。

近年、MRSAという細菌が病院内で問題になっています。
MRSAとはメチシリン耐性黄色葡萄球菌といい、抗生物質が効かない細菌です。
病院に入院している患者さんは、体力が落ち、免疫力も弱くなっています。
こういう患者さんにMRSAが感染すると、あっという間に増殖してしまいます。
MRSAを殺すために抗生物質を投与しても、まるで効きません。
そのために最悪の場合、患者さんは死んでしまうこともあります。
そればかりか、感染者の体で増殖したMRSAが病院内に蔓延し、次々と患者さんに感染し、死亡者が増えてしまうのです。

MRSAにはなぜ抗生物質が効かないのか。
細菌類は遺伝子の変化がとても速い生物です。
黄色葡萄球菌自体はごくありふれた細菌で、私たちの皮膚表面にも鼻くその中にもたくさん存在しています。
その細菌の遺伝子が変化し、抗生物質を無効化する遺伝子を獲得してしまったのです。
抗生物質を無効化する酵素を作り出す遺伝子を作り出すことができる。
それがMRSAなのです。

ところでMRSAは病院以外で問題になっていません。
病院以外では増殖することがないようなんです。
なぜなんでしょう。
もちろん病院以外にいる人たちは健康だから、免疫力も強いから、ということもあります。
でもMRSAの仲間である、ごく普通の黄色葡萄球菌は私たちの体でたくさん繁殖しています。
健康な人にMRSAが感染しても、増殖できないんです。

生物の第一の目的は、増殖して自分たちの子孫を残すことです。
ことに細菌類はじゃんじゃん分裂して数を増やすことを戦略としています。
エサがあり、温度が適温である環境であれば、細菌はどんどん増殖します。
ただし、増殖するための空間が必要なのです。
細菌は空間を埋め尽くすまで繁殖しますが、空間がなくなっちゃえばそれ以上繁殖できなくなります。

ある場所に2種類以上の細菌がいたとき、生存競争に勝つにはいかにその場所の空間を自分の子孫たちで埋め尽くすかが大切です。
つまり、生存競争に勝つためには速く増殖する必要があるのです。
多くの空間を自分の子孫たちで埋め尽くした細菌が、その場所での生存競争に勝つのです。
速く増殖するためには、速く分裂する必要があります。
速く分裂するためには、速く遺伝子を複製する必要があります。
速く遺伝子を複製するためには、遺伝子は小さくコンパクトにしておく必要があるのです。

さて、MRSAは抗生物質を無効化できる酵素を作り出す遺伝子を体の中に持っています。
その分、普通の黄色葡萄球菌より遺伝子が大きくなっているのです。
遺伝子が大きいと言うことは、遺伝子の複製に時間がかかるということです。
すなわち、分裂速度が遅い。
MRSAが感染しても、他に分裂速度の速い細菌がいたら、その空間はあっという間に敵の細菌に埋め尽くされてしまい、生存競争に負けてしまうのです。

これでなぜ病院内だけでMRSA感染が問題になるのかの謎が解けました。
病院内の患者さんは抗生物質を投与されている。
患者さんの体の中にもともといた細菌たちは、抗生物質で死んでしまっている。
MRSAが増殖するための広々とした空間が広がっているわけです。
MRSAは誰に遠慮することもなく、のんびりと増殖をすればいいのです。


抗生物質が効く原理と、MRSAの増殖について夏井睦『傷はぜったい消毒するな』光文社新書¥840-で読みました。
この本、今年ぼくが読んだ科学書で一番の面白さでした。
皆さんにもお勧めします!

2010年12月30日木曜日

レディネス


こんにちは

溌貴君、補助なし自転車に乗れるようになりました!
2輪のキックボードもスイスイ乗れるようになって、平衡感覚もできた。
背も高くなって、自転車にまたがっても足が地面に着くようになった。
体の準備は万全です。

おじいちゃんが大泉中央公園に連れて行ってくれました。
この公園にはなだらかな坂がある。
下り坂を利用すれば、こがなくてもすみます。
平衡感覚だけに集中して乗ればいい。
そして坂から降りたところでペダルをこぐ。
ペダルをこいで走り続ける。
こうやって、たった数回下り坂で練習するだけで、補助なし自転車に乗れるようになっちゃいました。

家に帰ってきてから、家の前の私道で練習。
こぎ始めるところを繰り返し練習し、平らなところでも乗れるようになりました。
さっそくぼくと一緒に近所をグルグル走って回りました。
交差点ではいったん止まって、車に注意ですね。
溌貴君、みんなから「すぐ乗れるようになってすごい!運動神経バツグンだね~」って褒められて、ご満悦です。
また自信がつきましたねー。

『楽しい授業 2010.11』に板倉聖宣「個性を考える」という文章が載っていました。

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私は「個性などというものはたいしたものではない」と思っている。
そんなものはちょっとした偶然がもとになってできたものが少なくない、と思っている。
実際、本当にだれでもできなければならないことは、生理的欠陥さえなければ早い遅いの違いはあっても、だれでもできるようになるから心配はいらない。(85p)
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補助なし自転車に乗るのも、溌貴君の幼稚園の同級生の中では遅い方だったみたいです。
他の子はお父さんがかなり特訓して乗れるようにしたようです。
でもぼくは「特訓」は嫌いなんですよ。
まだ心と体の準備が整っていない子どもに特訓するのはよろしくない。
やっぱりできないし、なかなかできるようにならない。
できないことを繰り返すと、自信を奪います。
卑屈になります。
だいいち楽しくない。
そうまでして、早く何かをやらせる必要はない、と思っているのです。

板倉さんの言うとおり、誰でもできなければならないことは、早い遅いの違いはあっても誰でもできるようになる、のです。
できるようになるために、心と体の準備が整ったところで挑戦させればいい。
そうすれば、スッとできるようになっちゃう。
その方が楽しいし、自信にもなるんじゃないかって思うんですよ。
それがレディネスってもんだと思います。

もちろん、レディネスが整ったなと思ったら、他の子たちよりも早く挑戦させるってこともあるでしょう。
他の子や学校のカリキュラムなんか待っている必要もない。
そういうタイミングは逃さないようにしたいですね。
他の子よりも早くできた、学校で習うことより先にやれた、っていうのも自信の素になります。

他の子よりも遅いときは「まだ君は心と体の準備が整っていないだけなんだよ。近いうちにできるようになるから気にしないでいいよ」と言う。
他の子より早くできたときは「さすがだ。君はすごい」と言う。
どっちに転んでもシメタ、でいきたいですねー。

2010年12月28日火曜日

自分は他者が創る


こんにちは

溌貴君と「ダンモデ」を作りました。
ダンモデとは段ボールで作るキット。
1つ500円程度で買えます。
予めカットされているので、木工ボンドさえあればok。
かなり大きいキットなので、迫力もあり、作りがいもある。
小学校低学年くらいの男の子に最適ですね。
ぼくが説明書を読んであげながらですが、溌貴君は独力で作り上げられましたよ。
スバラシイ!

溌貴君は作る過程で、内側に折る、外側から差し込む、など具体的な作業を通して言葉を覚えたようです。
小学生、10歳までは言葉を身に着ける年代だと思います。
それも具体的な事物、具体的な作業を通して、それらと関連させての言葉ですね。
こういう言葉を豊かに身につけないと、抽象語の理解ができるようにならないんです。
抽象語には具体語が10個から100個くらい張り付いているんですよ。
その張り付いている言葉が多ければ多いほど、抽象語を具体的にイメージできるようになり、青年期になって抽象的な思考ができるようになるわけです。
だから幼少期から少年期は、多くの経験、体験を通して言葉を身につける必要があるんです。

『楽しい授業 2010.11』板倉聖宣「アマチュア主義の伝統が生きる時代」にこうありました。

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感動なしに言葉を知っちゃうということは、恐ろしく空虚なことです。
新しい言葉が出てきたのは、その背景に素晴らしいことがあるからです。(95p)
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そうなんです、だから特に男の子には中学受験が向かないんです。
中学受験に向けて小学3年くらいから塾通いを始める。
8歳や9歳の時期に、経験、体験を抜きにして言葉の世界だけを学ばされる。
実体験を伴わない言葉は、何の感動もなしに詰め込まれるわけです。
そういう言葉は上っ面な理解に留まってしまう。
そのうえ、その言葉が生まれてきた素晴らしい背景をも経験することがなくなる。
長い人生から見たら、とても損なことだと思います。

ところでこのダンモデ、ボーイスカウトのクリスマス会でのプレゼント交換でいただいたものです。
こういう機会がなければ、ダンモデなんて商品があることを知ることがなかったでしょう。
知らなければ、作る経験、完成させる感動もなかった。
それは新しい自分の可能性も拓かれなかったってことです。
新しい自分は他者からもたらされるんですよね。
他者からもたらされたもので、自分は形作られていくんです。
だから多くの経験、体験が必要なんです。
ボーイスカウトにも感謝ですねー。

2010年12月26日日曜日

恐いくらいでちょうどいい


こんにちは

「お子さんがワガママを言ったとき、どうなさっていますか」
三育小学校の面接の時、先生からこう問われました。
まあもう溌貴君はあまりワガママなことは言わないんですがね。
晶ちゃんは、「きちんと説明して、納得させるようにしています」と答えました。
ぼくは

 ぼくはそういうとき、説明なんかしません。
 ダメなものはダメ、と言って、取り合わないようにしています。
 子どもがいくら泣いて、地団駄踏んでも取り合いません。

と答えました。
先生は「厳しいですねー」とおっしゃいました。
すかさず溌貴君が「もうちょっと優しくてもいいんだけどね」と言って、笑いを取りましたがー。

ともかく、世の中には絶対やってはいけないことがあるんです。
それは理屈じゃなく、ダメなものはダメ。
説明不能なものだったりする。
幼児段階ではまだ論理も理解できないでしょう。
その上泣き叫んでいるときは、親の話なんか聞いちゃいないんですから。
だから、取り合わない。
自分で泣いてもダメなんだと自然に分かるまで待つ。

齋藤孝『やる気も成績も必ず上がる家庭勉強法』筑摩書房¥1400-にこうありました。

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やはり、男親は恐いぐらいの存在でないと、男の子には示しがつかないというか、あとで軌道修正ができないところがあります。
最近は友だち親子のような親子もはやっていますが、私はそれにハマり過ぎるのは、危険だと思います。
実際、現場の先生も”友だち親子”風のほうが問題児が多いといいます。(220p)
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友だち親子はぼくも嫌なんですよ。
子どもと親は対等じゃないし、対等であってはいけない。
親は親のやるべきことを、ある時は権威、権力を持ってやらなくちゃいけない。
子どもと対峙することも厭わない勇気が、親には必要だと思うのです。
それに友だち親子って対等じゃなくて、むしろ親が子どもの下僕化してるじゃないですか。
それが子どもをダメにしていると思うんです。

陰山英男『百ます計算の真実』学研新書¥740-にもこうありました。

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「キレる」子どもが社会問題になって久しいですが、子どもがなぜキレるようになったのか。
早寝早起き・朝ごはんができていない等、原因はさまざまで複雑ですが、そのひとつとして、「子どもにとって、怖いものがなくなった」ことが挙げられると思います。
かつて、子どもにとって大人は怖い存在でした。
先生は言うに及ばず、親戚のおじさんや、近所のおじさんに怒鳴られ、震え上がった経験を今でも覚えている方は多いのではないでしょうか。
ところが最近は、「子どもの心を傷つけてはいけない」と、おとなが及び腰になってしまった。
腫れ物を触るように扱われ、チヤホヤされ、子どもは怖いものがなくなった。
今の子どもは、「神様」「仏様」も怖くない。だから我慢できなくなってしまったのです。(122p)
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最新の脳科学でも、「Go-NoGo」問題がきちんとできるかどうかが脳の発達に関わっている、という結果になっています。
Go-NoGoとは、やるべきときにやり、やるべき時ではないときには自分を抑える。
特に、抑えることができるかどうか。
それを訓練することが幼少期の脳の発達には重要なんです。
NoGoが上手くできないと、Goも上手くできないんです。
抑えるところを抑えられるから、やるべきこと、やりたいことができるようになる。
やってはいけないことを抑えられないような人間に、何かをやらせようなんてできない。
社会はそういう仕組みになっているからです。

父親は恐いくらいでちょうどいいと思います。
こんなことをやったらお父さんに叱られる、子どもがそう考えるようになるといい。
そういう父親の方が、友だち親子の親より、結局は子どもにとって価値があり、子どもからも慕われることになる。
子どもってそういうことには敏感で、誰が自分のためになることをしてくれるのか、直感的に分かるんですよ。
もちろんずるくて、誰が自分の言いなりになるかも直感的に分かる。
親が怒ったとしても、親の都合で怒っているのか、子どものために怒っているのかも分かる。
まあ動物に近いですからね、子どもは。

2010年12月25日土曜日

居心地の悪い家がいい


こんにちは

我が家は完全注文住宅。
設計に1年もかけましたからねー。
住み心地抜群ですよ。
個室というものがなく、すべての部屋がつながっているんです。
家全体が一つの空間になっているんです。

その代わり、冬は暖房効率が悪いんですがねー。
今の時期、ちょいと寒い。
でもちょっと寒いくらいの方が、日本の家としてはよいと思っているのです。
夏は家の中は涼しいですよ。
今年は猛暑でしたが、エアコンもあまり使わずにすみました。

我が子たちも今のところ我が家がいいらしい。
大空間なので走り回れるしね。
押し入れに昇ってかくれんぼしたり、いろいろ遊べますから。
溌貴君は来年小学校入学ですが、勉強机も買いませんよ。
ダイニングの食卓で勉強すればいい。
小学生くらいの子どもは、親のそばで勉強したいんですよ。
勉強しているところを見てもらいたい、しっかりできたら褒めてもらいたい。
小学生は個室じゃ勉強する気にならないんです。
小学生くらいまでの子どもにとっては、家の中に常に家族の気配がある方が安心なんですよ。
その意味で我が家は最適な家だと思います。

でも我が子たちが中学生くらいになったら、居心地は悪くなるんじゃないかって思っています。
個室がありませんから、プライバシーなんかないわけです。
中学生にもなれば、自分ひとりで静かに物思いにふけりたくなるはずです。
そうなると、我が家は居心地の悪い家になってしまうのです。
それは必然であって、我が子たちの成長にとってよいことになると思うのです。

藤原和博『つなげる力』文春文庫¥552-にこうありました。

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はっきりいうが、ずっと居心地がよければ、子どもは大人になれないだろう。
成長の機会というものは常に試練とともにあるからだ。(130p)

私は、家も学校も、適当に居心地が悪いほうが子どもたちの自立を助けると信じている。
「負」の体験をごまかしたり、目をそらしたり、きれいにオブラートに包んだりして抵抗力のない人間に育てないでほしい。(131p)
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居心地が悪ければ、早く家から出て行きたくなるでしょう。
出て行くためには自立心が必要になり、いやでも自律しなければなりません。
自活するため、料理をしたり、掃除をしたりする技術も必要です。
もちろん、自分の生活費を自分で稼ぐことができなくてはなりません。
そういう能力は、居心地の悪い家にいた方が開発されると思うのです。
出て行くために、出て行っても困らないように、自分を鍛えるチャンスになるのです。

いつか我が子たちが我が家を出て行く日。
考えるだけで寂しく、かつ嬉しいことですよ。

2010年12月21日火曜日

タイミング・イズ・マネー


こんにちは

「ちゃんと何月何日と日付をはっきり言え!」
工程会議中、同僚(後輩)を怒鳴りつけてしまいました。
必要な書類を提出してもらう締め切り日を指示する場面。
後輩は「なるべく早く」とか言っている。
いらいらしちゃって、つい強く言ってしまいました。

ぼくは「締め切り日が明確じゃない仕事は仕事じゃない」と思っています。
だから「なるべく早く」なんてあいまいに言う奴は、能力が低いと思います。
前工程、後工程を考え、相手の事情、こちらの事情も勘案し、的確な締め切り日程を○月○日とビシッと言えてこそ、仕事力です。
日程をはっきりと指示できないのは、自信がないからです。
前工程、後工程を考え、相手の事情、こちらの事情も勘案することができない。
だから曖昧な言い方しかできないのです。

まあ、若いんだから仕方がない。
でも仕方がないに甘えちゃいけません。
自分なりに考えて、最後は勘でもいいから日付を明確にする。
明確にするから、たとえそれば上手く行かなくても経験値が上がるんです。
日程通りに行かなかったら、次への反省が生まれます。
自分の考えの何が至らなかったからスケジュールが狂ったのかを検討できるからです。
日程がきちんと決まっていなかったら、それさえできないんです。
腕が上がるわけがない。

それに日程がはっきりすると、作業するスタッフにとってもいいんです。
ゴールがはっきりするから、そこに向けて作業を段取っていくことができます。
曖昧な日程では、いつ何をやっていけばいいのかも曖昧になり、結局作業も遅れてしまうのです。
日程がはっきりするから、やるべきことも明快になる。

日程が決まっていれば、それぞれの思いに齟齬がなくなります。
「なるべく早く」は、人それぞれの解釈が成り立ちます。
こっちは来週くらいにと思っていても、相手は今月中ならいいやと思っているかもしれません。
そろそろ提出して欲しいと思っても、催促しにくい。
「なるべく早くって頼んだじゃないか」なんて催促しても、「え?それって今週までって意味だったの?今月中だと思ってまだ何もやっていないよ」なんてことにもなりかねません。
日程が明確なら前の週に、「来週が約束の期日ですよ。よろしくお願いしますね」なんて予告もできます。
そうすれば相手のエンジンもかかって、スケジュール通りに進めることができるんです。

時々、どのくらい進んでいるかをチェックするのもいい。
ちょっと遅れているようだったら、ボトルネックになっているところをその場で解決してあげられる。
資料が足らないのだったら補ってやる、やり方がわからなくなっているなら丁寧に説明してやる、マンパワーが足りないなら配置してやる。
日付が明確だから、進捗管理もできるのです。

だから、ある程度の年齢になった人が「なるべく早く」なんて言っていたら、こいつ厳しい仕事をしてこなかったな、と思って間違いありません。
日付を決め、そこに向けて自分やスタッフを追い込んでいく。
そういう仕事をしてこなかったから、いい年になっても「なるべく早く」なんて言うんです。
後輩にはそういうおじさんにはなってもらいたくないですからね。
ちょっと厳しく言っちゃったんですよ。
分かって欲しいな。

たいていの仕事は一つの仕事をスタッフたちと一緒にしています。
その意味で、一緒に大きな円を描いているのです。
ひとりひとりは、大きな円の円弧を描いているのです。
きれいな円にするためには、コンパスの針を中心にしっかりと突き刺さなければいけません。
針がずれると、きれいな円にはならず、がたがたな円弧になってしまう。

日付を明確にすることは、コンパスの針を中心にしっかり突き刺すことなんです。
スケジュールを守るって、結局のところそういうことなんだと思います。
やるべき時にやるべきことを確実にこなしていく。
タイミング・イズ・マネーだからね。
中心をずらさないで大きくきれいな円を描く。
それがみんなでいい仕事をしていくコツなんだと思うのです。


週末にXFEL動力盤改修を行いました。
日程を決め、そこに向けてスタッフ一丸になって追い込んでいく。
スケジュール通りに完了し、満足、満足!

2010年12月15日水曜日

誰もがリーダーになれるわけじゃない


こんにちは

11月に会社で受講した(義務!)リーダーシップ研修の講師の方から、こんなコメントをいただきました。

 関口さんは、明朗な人柄と積極的な働きかけにより周囲を盛り上げていける力を有しています。
 集団場面では、率先して飾り気のない発言をすることで場の参画姿勢を醸成したうえ、
 ユーモアあふれた発言によりチームのムードを高めることに貢献しました。
 ただし、ある程度の成果で満足し、より高みを目指すという言動は希薄でした。
 一方で対人場面では、面接で相手に気づきを与えることはできないという、
 自身の信念を貫き説得行為を選択せず、あたり障りのない面談に終始しました。
 最終的には、時間を大幅に残して自ら面談を取りやめました。
 今後は、自身の価値観に固執し過ぎたり、成果の獲得を途中であきらめたりすることのないよう、
 目標達成への責任感を今まで以上に高めてください。

嬉しいですねー。
ぼくが思う自分と、講師の方から見たぼくがほぼ一致しています。

この研修ではロールプレイなんてのをやったんですよ。
その課題は、成果は上げているけど会社の意向と違ったことをするスタッフに、会社の意向通りにさせようと、そのスタッフの上司に当たる人を説得する、というもの。
なぜ成果を上げているのに会社の意向に従わせないといけないの?
なぜその人本人じゃなくて、その上司を説得しなくちゃいけないの?
状況説明書を熟読しても、その意図がよく分からないし、納得できなかったんです。
自分で納得できないモノに対して、いくらロールプレイという仮想劇だとしても、熱を入れてやることはできませんでした。

というわけで、上のような講師の方のコメントになったわけですね。
ぼくのモットーは「創造的無能」。
強い部分だけじゃなく、意図的に弱い部分もつくっているんです。
ムードメーカーとしてチームをエナジャイズすること。
でも自分の意に反したことはしない。

このリーダーシップ研修って、参加者全員をリーダーにしようと思っているらしい。
この研修でも、自分の行動特性を心理学的に理解するという課題もありました。
DiSC理論では、人の行動特性を「D;主導型」「i;感化型」「S;安定型」「C;慎重型」に分類します。
このうちリーダーに向いているのは、D型かi型。ぼくはi型でしたよ。
人は誰でもこれらのモザイクですが、強い弱いがあります。
S型やC型が強い人は、D型かi型の特性をトレーニングで強めて、リーダーになろうというわけです。

でもね、誰もがリーダーになれるわけじゃないし、なりたいわけでもないですよね。
ある程度はトレーニングできるかもしれませんが、人間の根本の心理特性はあまり変わらないものです。
根本と異なることをやると、やっぱり苦しいので、長続きしないものです。
リーダーに向いていないのにリーダーを続けるのは辛いですよ。
短期間なら頑張れるかもしれませんが、いつかは破綻する。
結局のところ、会社の生産性を下げてしまうのです。
それは、本人にとっても会社にとっても不幸なことだと思います。

高橋俊介『スローキャリア』PHP¥1300-にこんな話が書いてありました。

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『盲導犬クイールの一生』という映画がある。かなり話題になったのでご覧になった方も多いと思うが、この映画でクイールを演じた犬は、ほんとうに盲導犬の訓練を受けた犬だという。
しかし現実にはトレーニングの最終段階で失格となり、ついに本物の盲導犬にはなれなかったそうだ。
技能が未熟など、訓練の過程で盲導犬になれずリジェクトされる理由は幾つかあるが、とくに動機に問題がある場合、その犬は盲導犬として長く続けることは困難なので、それがはっきりした時点でリジェクトされるらしい。
簡単に言うと、同じゴールデンリトリバーでも、相手のペースに合わせて歩くのに動機を感じるタイプと、自分のペースで走りまわりたいタイプの二種類がいて、後者だと、いくら技能はしっかり身についていても、人間で言えば自分を偽って働くことになるのでどこかに無理が来るし、なかには燃え尽きてしまう犬もいるらしい。
そうなると犬も人どちらにとっても不幸なので、早めに見つけてリジェクトするのである。
そして、今まではこのような犬のことをリジェクト犬と呼んでいたが、最近ではキャリアチェンジ犬と言い換えているそうだ。
盲導犬としての適正はなかったが、犬として失格というわけではないのだから、この言い換えはきわめて正しい。
こういう考え方は、人間の社会にもぜひ広めて欲しいものである。(210p)
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ぼくも犬だけの問題じゃないと思います。
訓練できる部分と、変わらない部分が人間にもある。
変わらないのは「動機」に関わる部分ですね。
これをやりたい、あるいは、これはやりたくない、という部分。
ここは生涯変わらない、変わりたくない、変えられたくない部分なんでしょう。
自分を偽ることになるからです。
短期間なら自分を偽ってでも成果を上げることができるかもしれませんが、継続は無理なんです。
楽しんでできないですからね。
だって、本当はやりたくないんですから。

一番効率的で生産性を上げられるのは、その人が楽しんでやれる仕事をしているときです。
それが「適材適所」です。
適材適所に配置することこそが「人事」なんだと思います。
だから、誰もをリーダーに育てよう、全員をリーダーにしようとしたら間違いの素だと思います。
自分自身でも自らが楽しんでやれる仕事ができるように、コントロールすることが大切だと思います。
もちろん楽しんでやれて、かつ会社にも貢献できることです。
そのポジションまでは昇進すること、そして、そのポジションに留まること。
それが「創造的無能」の極意なんです!


筑波細胞研究リソース棟も内装工事が佳境です。
現場は楽しいなー!