2010年7月7日水曜日

考えるには時間が要る

こんにちは

ストレスは人生のスパイスである(byセリエ博士)。
前便でそう書きました。
スパイスだってことがミソですよ。
料理だってスパイスは適度にふりかけるのがよいわけです。
少ないと味に締まりがなくなり、美味しくない。
逆にかけすぎると辛くなったり、素材の旨味を殺してしまい、食えないものにしてしまう。
そのさじ加減が大切なんです。
人生も同じですよね。

ストレスの中でも一番心と身体によくないのは、長時間労働だと思っています。
長時間労働はボディーブローのようにじわじわと心と身体を壊していきます。
長い時間働いて、それで生産性が上がるならいいんですが、違うんですよ。
生産量は、効率×時間の積分値です。
効率が変わらなければ時間を大きくすれば当然生産量は増えます。
工場の生産ラインのようにコンスタントに仕事が流れてきて、それをコンスタントにこなすのなら、ラインを動かす時間が増えれば生産量は増えるのは当然です。
ところがそのラインに従事する人間には限界があります。
あまりに長時間仕事を続けると、集中力が下がります。
それが製品の歩留まりを下げたり、事故を誘発したりしてしまうのです。
結局、生産性は上がらなくなってしまいます。

時にはがんばって残業して長時間働く必要もあるでしょう。
トムマデルコ氏の研究によると、確かにがんばれば1ヶ月ほどの間は効率も上がる、もしくは維持されるので、生産量も上がります。
ところが1ヶ月を過ぎるあたりから、効率が下がってきてしまう。
そして生産量=効率×時間の積分値は、2ヶ月を過ぎる頃から残業しても伸びなくなるのです。
それでも長時間労働を続けるとじわじわと効率は下がり、残業しないときよりも生産量を押し下げてしまうのです。
なので、意味ある長時間労働は1ヶ月まで、2ヶ月を過ぎると逆効果、なのです。

長時間労働をすると効率が下がるのは、考える時間がなくなるからです。
仕事は段取り八歩です。
段取りをよく考えてから、作業にかかるから効率が上がる。
長時間労働によって考える時間がなくなると、段取りが不十分になる。
不十分のままやみくもに作業にとりかかってしまうので、途中で判断に迷ったり、やり直しが必要になったりして、効率が悪くなってしまうのです。

芦永奈雄『本当の学力は作文で伸びる』大和書房¥1500-にこうありました。

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「考える」という行為は、机の前でやってもはかどりません。
わたし自身は、歩き回ったり、風呂に入ったりしながら考えることが多いです。
腕組みしたり、頬杖をついたり、頭を掻いたり、歩き回ったり。
こういう行為が思考を助けます。
たぶん、机の前に座らせて考えさせるという行為は、本人にとって苦痛でしょう。
クリエイティブな仕事は、単純作業ではありません。
机の前で生まれるものではありません。(233p)
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仕事の段取りを考えるのは、勤務時間中ではないんですよ、実は。
家で風呂に入っているとき、トイレで用をたしているとき、リラックスして散歩しているときなどに、いいやり方を思いつくんです。
そういう思考をやっておくから、勤務時間には迷いなく作業に取りかかれるのです。
長時間労働をしていると、それができなくなってしまうのです。
家に帰っても飯食って寝るだけ。
しかも十分な睡眠時間を確保できない。
通勤中の電車の中もうたた寝して少しでも睡眠時間を補う。
これじゃー、考える時間なんてないですよねー。

一流ビジネスマンも同じようなことを言っています。
ユニクロ社長の柳井正さんはこう言います。

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夜の付き合いはよほどのことがない限りしません。
そうでなければ続きませんし、急ぎの仕事があるときは帰ってから自宅で続きをやります。
夕食をとってから、考えたり、書類を整理したり。
会社で考えていても、いい案なんて浮かばないです。
ですから社員にも、夜遅くまで残業するなと言いたいです(笑)。
とくに独身者は毎日だらだらと仕事をする場合が多いんですが、会社に長い時間いても、何も生まれないと思います。(『時間とムダの科学』プレジデント社¥952-、10p)
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夜の付き合いもよくありませんよね。
考える時間を奪います。
付き合いも大切ですが、ほどほどにしないとね。
まして、おつきあいで残業なんて以ての外ですよ。
ぼくの尊敬する国語教師、野口芳宏さんはこのことを「絶縁能力」なんて言っています。

いい仕事をするためには、くだらないことは絶縁することが大切。
それは考える時間を生み出すためなんです。
だって、考えるには時間が必要だからです。

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