2010年7月12日月曜日

汗をかく人になろう!

こんにちは

大阪市立科学館から科学館友の会の会報への原稿を頼まれました。
XFELや次世代スパコンの建物や設備に関する話を書いてほしい、とのこと。
おっけー、お手のもんだぜー。
実験機器や研究内容のことなら研究者など他にも書ける人はたくさんいるし、そっちに頼んだ方がいい。
でも建物について一般の人が読んでも面白い話を書けるのはぼくしかいません!
なーんちゃって。

それに加えてぼくは「心は今でも教師」なので、子どもたちの未来のことも気になるわけです。
子どもたちがどんな人物になりたいと思っているのか。
意外と子どもたちは情報が少ないんですよ。
普段見る大人は、親と学校の先生だけ。
その他はテレビからの情報に頼っている。
すると、親や先生のようにはなりたくないんですな、しょぼくれてるから。あははは。
で、テレビに出てくる人があこがれになってしまう。
タレントになりたい、プロスポーツ選手になりたい、とかね。
それって狭いよね。

科学館に足繁く通う子どもたちも、あこがれは研究者だったりします。
目に見えやすいし、紹介する方も研究者ばかり紹介するかですね。
あー、狭い、狭い。
ぼくも研究所にどっぷりと浸かって早15年、いいところも悪いところも見てきました。
研究者だからって夢が見られるわけじゃありません。
けっこう人間関係もむずかしかったりします。
それに研究者だけでは研究は進まないんです。
技術者が研究者のやりたいことを現実化する。
事務員が研究者のやりたいことのために予算をとってくる。
そういう仕事もあるわけです。
そして技術者や事務員の仕事だってやりがいはあるし、楽しいんです。
そういうことも伝えたかった。

『大人の社会科見学マニアックス~加速器編~』分苑堂\2286-にKEK(高エネルギー加速器研究機構)の多田将さんのインタビューにこうありました。

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日本には物理学者ってたくさんいるんです。
毎年毎年、卒業したり博士号取ってる人は結構いるんですけど、そのほとんどは学者さんなんです。
さっきもいった、作れもしないものを設計する人たち。
こう実験したらいいねぐらいまでは考えても、それを実験できるような機械を作れる人っていうのは、ほとんどいないんです。(102p)
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多田さんも博士号を持つ研究者です。
現場が好きで、手と身体を動かすのが好き。
それでJ-PAEC http://j-parc.jp/ の実験装置を作っている人。
引用した文章からも分かるとおり、自分の仕事に自負を持っていますね。

実は、いい研究ができる一流の研究者はその人しかできない「技術」を持っています。
自分でコイルを巻く、半田付けをする、細胞核分離ができる、微細な顕微解剖ができる、などね。
ある実験を思いつくだけじゃだめなんです。
それを実現化する技術がなくちゃ。

二流の人はそこが欠けています。
自分じゃできないので、メーカー任せになります。
メーカーが作った実験装置は他の研究室でも買っています。
つまり他でもできる実験しかできないのです。
それじゃあ画期的な成果は上げられないのは当然です。

メーカーから買った実験装置でも、そこに自分だけの工夫を加えていけるかどうか。
もうちょっとコイルを巻いて、ビームを絞ってみるとかね。
冷却パイプを巻き付けて検出器を冷やす仕組みを付け加えて、ノイズを減らせるとかね。
頭だけじゃなくて、手と身体を動かして思うことを実現していく。
誰かにやらせたり頼るのではなく、自ら汗をかきながらやり遂げていく。
つまり現実を変えていく力、たとえ少しでも世の中を変えていく力。
それが一流の仕事なんだと思っています。

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