こんにちは
近代になって戦争が大規模かつ激しくなったのは、素人を兵士として狩り出すようになったからです。
世界史を勉強すると、近代以前の戦争は「30年戦争」やら「100年戦争」やら、やたら長期間続く戦争があったと、教科書に書いてあります。
長期間の戦争は意外とのんびりしたものだったのです。
のんびりやっているから長く続けられる、と言っていいでしょう。
なぜならこの頃の兵士は、ほとんどが「傭兵」だったからです。
つまり玄人ですね。
お金をもらって戦争をしている人たち。
こういう玄人兵士のモチベーションは、なるべく長く戦争が続き、かつ自分が死なないこと。
その方が自分の雇用が守られ、家族を養い続けられるからね。
だから、だらだらゆるゆると戦う。
勝たないように、負けないように、お互い死なないように。
だから、30年も100年も戦争が続けられたのです。
ところが近代になると、普通の国民が兵士になるようになりました。
つまりは「徴兵制」です。
素人の戦い方は無謀になりがちです。
なぜなら、早く戦争を終わらせたいからです。
普通の人、素人の兵士のモチベーションは、できれば勝って、すぐにでも家族の元へ帰りたい。
だから戦術もへったくれもなくなって、がむしゃらに戦ってしまうのです。
そういう戦い方だと、お互い戦死者も多くなってしまうのは必然です。
実は、徴兵制は民主主義国家、国民主権国家になってから始まりました。
世界最初の徴兵制は、フランスです。
フランス革命後、共和制国家になった後、徴兵制が始まりました。
革命によって国は「国民のもの」になりました。
ならば国を守るのも国民自身がしなければならない、と言う論理なのです。
民主主義と徴兵制は強く結びついているものなのです。
フランスと言えばナポレオン。
ナポレオンが大活躍できたのも、失脚したのも徴兵制が原因と言ってよいのです。
フランス革命後、共和制政府は衆愚政治に陥り、にっちもさっちもいかなくなってしまいます。
そこに顕れたのがカリスマ・ナポレオン。
ナポレオンは熱狂的にフランス国民に支持され「皇帝」となります。
皇帝と言っても古代の皇帝とは違います。
国民から支持され、選ばれた皇帝です。
その意味でナポレオンは、現代で言うところの「大統領」に近いものだと言えます。
なので、フランスはナポレオンにより帝制国家となったのですが、実体的には国民国家、国民主権の国でした。
だから徴兵制はナポレオンの時代になってもそのまま引き継がれたのです。
ナポレオンはじゃんじゃかとフランス国民から兵士を徴兵していきます。
そうやってナポレオンは、大規模な軍隊を持つことに成功したのです。
徴兵制の利点は、兵士に給料を払わなくてよいことです。
傭兵だと、強い兵士ほど高級を要求します。
それと比べると、徴兵制はお金がかからずに、大規模な軍隊を持てる仕組みだったのです。
その頃、フランスの周りの諸国は未だ王制国家でした。
なので軍隊は傭兵で構成されていました。
お金がかかるから大人数の軍隊は持てずにいました。
その上、プロの兵士たちは必死には戦いません。
のんびりゆるゆると戦うのが習性だからね。 そうすると、がむしゃらに戦う大人数の素人軍団が易々と少人数の玄人軍団に勝つのは当然です。
ナポレオン率いるフランス軍は、連戦連勝を続けていきます。
ところが、こんな戦争を続けていくうちにフランス軍には困った問題が顕在化してしまいました。
それは、「戦死者が多い」ということです。
技術も無しにがむしゃらに戦う兵士たちは、やはり戦死してしまう確率も高くなってしまうのです。
なんと、ナポレオン軍の戦死率は50%にも及んだそうです。
徴兵された兵士の半分は死んでしまう。
こうなると、国民は徴兵されるのを嫌がります。
それにも増して、そもそも兵士としてふさわしい若くて健康な男子が国民から消えてしまったのです。
するともう、徴兵制によって大規模な軍隊を維持できなくなってしまったのです。
もうフランス軍は戦争に勝てなくなってしまった。
それがナポレオンの失脚につながったのです。
今月号の『たのしい授業』8月号に徴兵制についての授業書が載っていました。
ちょうど池上英洋『血みどろの西洋史』KAWADE夢新書も読んだところだったので、こんな雑文を書いてみちゃいました。
歴史って面白いですよねー。
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