2010年8月14日土曜日

アカデミック・ハイ


こんにちは

先週姫路で行った夏休み子ども向けサイエンスカフェ。
サイエンスカフェはりまのメンバーであり、理研での同僚でもあるづかちゃんから感想をもらいました。

 土曜は本当にありがとうございました~!
 遠路はるばる、時間を削って、、、恐れ入ります。
 子どもたちが楽しそうに実験していたのがうれしかったです。

 あと、子どもから出た質問で「電気はいつからあるのですか?」の問いには
 感心してしまいました。
 電気ってものはずっと存在していたのに、人がそれに気付いて利用できるまでには
 ずいぶん時間がかかったんだなー、今も我々が気付いてないだけで、
 今後利用できるものというものはいっぱいあるかもしれなんだなー、科学って
 スゴイなぁと改めて気付きました。
 こちらもいつも勉強になります。またよろしくお願いしますね!!
 ありがとうございました。

嬉しいですねー。
それにしても「電気はいつからあるか」というのは素晴らしい質問ですね。
子どもにしかできない質問だと思います。
その時ぼくはこう答えました。

 電気の素の電子自体は、宇宙が始まってすぐからあった。
 宇宙は137億年前にビッグバンから始まったと言われている。
 137億年前からたったの3分後にはすでにあったんだ。
 でも電子を人間が見つけて、利用するようになったのは
 たかだか100年前くらいからだ。

家に帰って再度調べてみたら、電子は宇宙開闢後たったの10^-36秒後にはできていたんですね。
電気の実用的な利用はファラデー以降でしょうから、19世紀半ばですか。
電子そのものの発見は、1897年にJ.J.トムソンですから、まあ100年前ですね。
電子自体の制御は真空管の発明を待たなければなりませんから、二極管フレミング(1904年)、三極管リー・ド・フォレスト(1906年)ですから、やっぱり100年くらいですね。
なんと熱電子の発見者はエジソンなんですね。
エジソンは熱電子を「エジソン効果」として特許を取りましたが、それを使った実用品を発明することはできなかったようです。
特許ではなく論文にしたのなら、エジソンも博士号を授与され、もしかしたらノーベル賞ももらえたかもしれませんね。

子どもから子どもらしい根源的な質問されると、こうして復習する機会ももらえるんで嬉しいですね。
大人もより深く勉強できるし、ハッとするような発見があります。
こういうのを内田樹さんは「アカデミック・ハイ」と呼んでいます。

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知的高揚感と言ってもいいですかれど。何かのきっかけで脳が「ぐいいん」と加速を始めて、それまでばらばらだったジグソーパズルのピースがぴたぴたと決まるときのように、脳がかっと熱くなる感じって、ありますでしょう。(略)ぼくはそれを「アカデミック・ハイ」と呼んだりしていますけれど、それをちょっとだけでも、若い人に自分の身体を通じて実感してほしいんです。
(内田樹/石川康『若者よ、マルクスを読もう』かもがわ出版\1500-、37p)
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科学に限らないけど、分かりたいと思うことがある。
分かろうと思って、努力をする。
その結果、分かるようになったときの気分の良さは、何ものにも代えられないものです。
高みに登ったような晴れ晴れとした気分、霧が晴れ渡ってぱーっと見晴らしがよくなる気分。

サイエンスカフェの後の懇親会で、ぼくはこんなことも言いました。
ぼくはアルバイトや教育実習も含めれば幼稚園から予備校生まで教えていきました。
その時の経験から言うと、できない子ほどすぐ分かりたがる。
すぐ分からないと先へ進めない。進もうとしないんです。
学問、勉強って、そんなインスタントなものじゃないんです。
分からないというちょっと不快感を抱えつつ、前に進むってのが肝心。
その努力ができるかどうかですね。
それができるから、アカデミック・ハイも体験できるわけです。
すぐ分かるようなものにたいした価値はないんです。

ぼくの授業の特徴は、完全には分からせない、なんです。
分かった気にさせない。
そんなに簡単に分かってたまるか!なんです。
面白かったけど、なんだかちょっともやもやする。
そうやって子どもの中に、分かりたいという気持ちを植え付ける。
自分でももっと勉強してみたい、と思わせる。
多くの子にアカデミック・ハイを味わってもらいたいですねー。


サイエンスカフェの会場は姫路城のそばでした。
「ついで主義」のぼくは、炎天下の中しばらく散策。
楽しい、楽しい。

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