2010年6月14日月曜日

プロは燃え尽きない


こんにちは

世界のスーパーコンピュータの性能をランキングした「top500」の新しいリストが発表されました。
http://www.top500.org/list/2010/06/100
世界一は前回と変わらずアメリカのジャガー、1.75ペタフロップスの性能です。
10位までのランキングで見ると、中国の躍進が目覚ましいですね。
2位と7位に入っています。
日本のマシンはというと、原研に去年入ったばかりの富士通マシンが22位で、190テラフロップスす。
依然として世界一のマシンと10倍近い性能差があります。
10倍の性能差は大きくて、同じ計算なら10倍の時間がかかる。
あるいは同じ時間に相手は10種類の計算にトライできるのに、こっちはひとつだけ。
やっぱり世界トップクラスのマシンが日本にも必要なんです。

神戸スパコン棟が完成しました。
世界最速のスーパーコンピューターを下部から(Infra)支える(Structure)建物に仕上がったと自負しています。
ある人からこう言われました。
「関口さん、これだけ大きい仕事をして燃え尽きてないの」って。
ぜーんぜん、です。
だってこれで終わったわけじゃないですから。
マシンが入って世界最速を達成し、ここからいい研究成果が次々と生み出されるところまで見届けなくちゃ。
それにXFEL他いろんな仕事にも関わっていますから、とても燃え尽きてなんかいられませんよー。

ぼくは、プロが情熱をもって仕事をするといい仕事になる、と思っています。
いい仕事をするためには、やはり燃えないとダメだと思うんです。
でも燃えすぎないのもプロの条件ですね。
プロは1割、2割燃えるといい仕事をします。
逆に言うと、プロは1割、2割しか燃えないように自分をコントロールしているんです。
だって、燃え尽きちゃったら困りますから。

ぼくは教師時代に、悲惨な戦争が行われるようになったのは国民国家になったからだ、という仮説を提唱したことがあります。
世界史の教科書を読むと、昔の戦争は「30年戦争」とか「100年戦争」とか、とても長期間戦争していたことがあるって書いてあります。
何でそんなに長い期間戦争し続けられたのか。
それはその頃の兵士はみんなプロの兵士だったからに違いありません。

プロの条件は「継続性」です。
もちろん戦いに勝つのが目的ですが、自分の仕事が継続することも目標なんです。
何年も戦争が続き、国王から報酬が支払われ続け、自国に残る家族を養い続ける。
そのためには死んでしまってはいけませんよね。
死なない程度に戦果を上げ、完全に勝利しないよう、細々と戦う。
これがプロの兵士の戦い方なんです。
これなら30年だろうが100年だろうが戦争は続けられます。

ところが近代になって国民国家になる。
徴兵制になって素人たちが兵士として戦うのです。
素人の兵士たちはどういうメンタリティーで戦うか。
早く決着を付けて、一刻でも早く戦争を終わらせたい、と思うはずです。
これが無謀な戦術を生み出すのです。
短期間で雌雄を決しようとして、むちゃくちゃな戦いをする。
戦死者が多くなるのも必然です。
特攻隊など、自分の人生を燃え尽きさせてしまうわけですから。

要するに、プロは燃え尽きないんです。
無謀なことはしないんです。
それが継続性をつくる。
現在に生きるビジネスマンという戦士も同じなんじゃないかなって、ぼくは思っています。

最相葉月『ビヨンド・エジソン』ポプラ社¥1500-にこうありました。

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寺田寅彦が大学を卒業して遠方の学校に赴任する教え子たちによくいった、「線香の火を消さないように」という言葉が紹介されている。
研究費も設備もない場所に行っても、その気さえあれば研究はできる。
「一番いけないのは、研究を中絶することなんだ。なんでもいいからとにかく手を着けて、研究を続けることが大切です」。
寺田のこの言葉があればこそ、中谷は実験器具も何もない北大で雪の研究に着手することができたのだと知った。(114p)
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プロだっていつも調子がいいわけじゃないでしょう。
戦果の挙がらないときだってある。
その時も、たとえ細々とでも闘い続けなくちゃならない。
へこたれて戦列離脱してはいけないんですよ、プロは。
逆の意味でも燃え尽きてはいけないんです。
寺田の言うとおり「線香の火は消してはいけない」んです。

さーて、今週もほどほどにがんばりますかー。



写真はXFELの実験盤。
自分が作った実験盤にケーブルがつながると、なんだか嬉しいんです!



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