川又一英『麻布中学と江原素六』新潮新書\680-
---苦学を嘗むるというようなことをいうのは、甚だしく誤っております。
学問をするとか事業をするとかということのために、苦しむというはずはないのであります。己が為さんとするところを為そうと思うなら、すべて喜んで従事すべきはずであって、苦しまないで愉快にやるという習慣を自ら養わなければならないと思います。(176p)
「苦しまないで愉快にやる」のを勧めるのであるが、これはそう容易なことではない。
なぜなら、学問にしても仕事にしても、楽しくやるためには受身ではなく、真に主体的な取り組みが求められるからである。(177p)
(一高校長だった)川田校長自身は「自発的な勉強は身体を壊しません」と口にし、けっして猛勉強をしなさいとはいわなかったという。(149p)
麻布中学の出身者で母校で教鞭をとった岩本堅一はこんな体験を語っている。
岩本が品行の悪い生徒に愛想をつかして、とても見込みがないことを告げると、江原はもう少し面倒を見てやれというのが常だった。
顔を見ただけでも駄目ですというと、「いや、精神が癒されれば顔もよくなる」と、いう。
校長は妙なことを言うと半信半疑だった岩本は、生徒の品行が直ってくると本当に容貌が江原の告げたとおりになったのを見て、深く反省したことを語っている。(136p)
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