引き続いて「京」コンピュータの特徴や、諸外国のマシンとの違いについて説明。
アメリカはずっと世界トップマシンを造り続けている。
それはアメリカのスパコンは国防技術だからだ。
一番の利用は核開発。
アメリカは爆発させるまでの核実験はやらないが、臨界前実験という爆発寸前までの実験は続けている。
臨界前実験でデータを収集し、そのデータをスパコンで計算するのだ。
現在世界1の中国の天河2号も、人民解放軍国防科学技術大学なんて物々しい場所に設置されている。
中国のスパコンは国家の威信のために作っている。
今のところ実用性は二の次のようだ。
それに比べると日本の「京」は平和利用。
純粋に科学技術のために使われる。
産業利用も積極的に受け入れており、日本の企業の新製品開発のためにも使ってもらっている。
多様な研究ニーズに応えるため、あらゆる科学技術計算において高性能が発揮できるように設計されている。
単純なスピード計算では4位になってしまったが、今も実用性という意味では世界一と言って良いだろう(多少、負け惜しみだけどね。笑)。
ところで皆さんは、平成21年11月13日のことを覚えているだろうか。
この日は金曜日だった。13日の金曜日。
なんか嫌な日でしょ。
答えは「事業仕分け」が行われた日。
13日の金曜日なんてうまい日を選んだもんだ(笑い)。
おかげでぼくは忘れられない日になった。
皆さんも「2番じゃダメなんですか」っていうの、覚えているでしょう。
流行語大賞をその年、取ったんでしたっけ?
事業仕分けでは「スパコンをアメリカから買えばいい」なんてことも言われた。
確かにアメリカのスパコンはすごい。
自前で開発するより買った方がコストは安く上がるだろう。
でもアメリカのスパコンは国防技術。
国家の安全保障上、トップクラスのスパコンを売ってくれるだろうか。
たぶん、そうはならないだろう。
売ってくれるとしたら、二番煎じのものになってしまうのではないか。
スパコンを開発することは、単にコンピュータ技術を向上させるだけではない。
その周辺技術、半導体技術、通信技術、電源技術、冷却技術、そしてぼくの担当した建築やインフラ技術。
これらの周辺技術もトップレベルじゃないとスパコンは開発できないのだ。
トップのスパコンを開発することは、これらの周辺技術をも引き上げていくことになるのだ。
スパコンは総合技術の集積なのである。
今やスパコンを一から造れる国は日本とアメリカだけである。
つまり総合技術を持つ国は日本とアメリカだけ。
これに中国はまだ追いついていない。
中国の天河2号のCPUはインテル製、つまりアメリカ製だ。
ヨーロッパ諸国もこれまではスパコンは買えばいいというスタンスだったが、このことに気づき自前での開発にシフトチェンジしつつある。
日本がこれからも技術立国として存続していくために、スパコン開発は継続させる必要がある。
トップマシンを開発するということは、すごく意義のあることなのである。
技術とは、
お金では買えない時間と、
これまたお金では絶対に買えない経験とが
積み重なって初めて結実するもの by KEK多田将
ぼくも「京」のインフラの仕事で、電気設備学会賞、コジェネ大賞、空調衛生工学会賞をいただくことができた。
建築インフラ技術分野の向上のためにわずかでも貢献できたんじゃないかと思う。
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