2011年2月1日火曜日
記憶力が未来を創る!
こんにちは
今週は会計検査のため播磨に出張しています。
我社のように国税で運営している法人は、予算を適切に無駄なく執行しているか会計検査院の検査を受検することが義務付けられているのです。
ぼくの仕事は新たな研究施設を建設することです。
建設するためには何億円、何十億円、時に何百億円ものお金を使いますから、しばしば検査対象になるんです。
検査と言っても恐いものではありません。
普段から嘘偽りなく誠実にやっていれば、問題になるようなことはありません。
とは言え、受検する上での重要ポイントがあります。
それは、
自分のやった仕事をきちんと記憶しておくこと
です。
なぜそうしたのか、どうやってそれをしたのか、仕事の内容と意味を把握しておくのです。
もちろんすべてを丸暗記にはできませんが、資料のどこにそれが記録されているかくらいは頭に入れておく。
きちんと記憶しておけば、検査員からの質問にスッと答えられます。
あるいは、スッと目的の資料を提示できる。
こうなれば検査員もイライラせず、安心することができます。
仕事の要諦は、相手を安心させることですからね。
そうすると、ポイントとなる部分だけ突っ込んでチェックすれば、他の部分も同様にきちんとやっているはずだと思ってもらえます。
検査もスッと終えることができ、お互いハッピー。
池谷裕二/木村俊介『ゆらぐ脳』文藝春秋¥1238-にこうありました。
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海馬は記憶を担当する脳の部位ですが、最近、海馬は未来予測のために必要な部位でもあると判明しました。
海馬が破壊されたら記憶ができなくなることは周知の認識でしたけど「記憶がなくなれば、未来の予測ができなくなる」という研究成果が提出されたことは大きかったのです。(231p)
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これはとても興味深い研究成果です。
病気や怪我、脳手術の後遺症などで、記憶ができなくなる人がいます。
あるいは認知症などで記憶力が衰える。
そういう患者さんは、新しいことを覚えたり過去の記憶が思い出せなくなるだけでなく、未来のことを予測することができなくなってしまうんですね。
自分はどうなりたいのか、どうしていきたいのか、記憶ができないとそういう事もできなくなってしまうんです。
未来予測はもともとは危険回避のために必要だった能力でしょう。
危ない目にあったこと、身の危険に遭遇した経験を記憶しておく。
そうすると次からはそういうリスクを回避した行動がとれるようになる。
よって生き延びるチャンスが増える。
記憶を司る脳部位、海馬が破壊された人はそのような危険回避ができなくなってしまうのです。
かなり危ないですよね。
それは健康な人にも当てはまるのではないでしょうか。
いろいろなことを記憶しておける人のほうが、リスクに対する対策ができる。
自分自身の経験だけでなく、誰かが危ない目にあったところを見聞きしたことでも自分の記憶に納められる。
本を読んだことでさえ、自分の生き方に反映していける。
すべて記憶があるからです。
脳はメモリーベイスドアーキテクチャであることが、脳研究で分かってきています。
メモリー=記憶、ベイスド=基づいた、アーキテクチャ=構造です。
記憶がなければ考えることもできないのです。
未来は危険、悪いことばかりじゃありません。
未来には「夢」だってあります。
自分にとって良いこと、楽しいことを実現したいという思いは、誰だって持っているはずです。
けれども海馬が破壊された人は、夢を見ることも傷害されてしまうのだそうです。
それは記憶が傷害されるからなんです。
いい仕事をする人はすべからく記憶力が抜群です。これは間違いない。
ビルゲイツの記憶力のすごさは有名です。
ぼくも仕事でたまに高級官僚の人と打 ち合わせる機会がありますが、その記憶力は尊敬に値します。
彼らはその記憶力を活用してバリバリ仕事を進めているわけです。
リスクを回避し、楽しい未来を夢見て、それを実現するためには記憶が充実していないといけないんです。
そこに「勉強する意義」があるんだと、ぼくは思います。
たくさん本を読むこと、いろいろなところへ行くこと、多くの人と出会うこと、みんなみんな記憶のためであり、よい未来を実現するためなんです。
だから子供の頃はもちろん、大人になっても、何歳になっても学び続けなくちゃいけないんです。
最近の学校教 育の風潮では、記憶力は軽視されているように思います。
暗記して何になる、暗記しても役に立たない、暗記より想像力だ、なーんてね。
確かに学校で習うことを暗記しただけじゃ、役に立ちま せん。
暗記したものを応用することができないと意味がない。
でも、応用は学校で教育しづらい、不可能なものです。
それはやっぱり社会に出て、現実に仕事を したり社会で揉まれてみないと磨かれない能力です。
学校にそこまで期待してはいけませんよ。
学校ではその前段となる部分、すなわち記憶力を鍛えているのだ、と考えるといい。
入試でも暗記問題が出題されます。
青色LEDの発明者中村修二さんは「入試はちょーウルトラクイズだ」なんて言っています。
でも中村さんにしても、あの膨大な著作を次々と出版しているのを読めば、ものすごい記憶力の持ち主だと分かります。
日 亜であったことを事細かに記憶しているから、ねちねちとあれだけのものが書き続けられる。
もちろん、青色LEDを発明するのだって中村さんの全くの独創で はなく、過去のいろいろな研究者たちの研究結果の上に成し遂げられたものでしょう。
また、毎日の実験で失敗したこと、成功したことを反省して、次の実験を デザインする。
つまり、ちゃんと必要なものは記憶して、その上に自分の研究を積み上げることができたから、青色LEDを発明することができたんだと思いま す。
それはきっと、大学入試のための「クイズ」でも鍛えられたんだと思うのです。
中村さんだって難関徳島大学にちゃんと入学したわけですしね。
入試で記憶力が試されるのはなぜか。
記憶力に長けた 学生を入学させたい、記憶する回路を脳に持った学生を入学させたい、という趣旨で暗記問題が出題されるのだと思うのです。
記憶力は学問を積み上げていくの に必要な能力と認めていたのだと思います。
それが、暗記学習の<立法事実>だったのだと、ぼくは思うのです。
学生諸君、暗記をバカにせず、記憶力を鍛えておきなさい!
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