2011年2月8日火曜日

WhyよりHow


こんにちは

会計検査の検査対象が会計検査院から指定されるのは、検査1週間前。
急いで資料の準備をします。
と言っても既に完了した工事についての検査ですから、ほとんどの資料は揃っている。
それらをとりまとめて検査会場へ持ち込めばいいんです。
とは言っても人間のやる仕事、完璧はあり得ません。
念のため必要な書類に目を通します。

するとやっぱり不足している資料が見つかりました。
工事に必要な部材の単価を示すカタログのコピーがありませんでした。
この資料を作成した部下を呼んで、「この部材とこの部材のカタログのコピーが綴じ込まれていなかったから、来週月曜日までに用意してね」と指示。
まあね、なけりゃないでもかまわない程度の資料ですが、あれば安心感が違います。
少しでも不安要素はなくしておきたい。
何か不安に思うことが残っていると、堂々とした態度で検査に臨めませんから。
こっちが不安げにしていたら、検査員だってしなくてもいい探りを入れなくちゃならない気になる。
無駄ですからね。

ぼくから指示を受けた部下は。青ざめました。
さっそく施工者に電話して、「あの資料ないんだけど、何でかなー」なんて言っている。
おかしくて思わず吹き出しちゃいましたよ。あ、失敬。
電話が終わってからぼくはこう言いました。

 何でないのか、なんて今となったらどうでもいいことだよ。
 ないものは仕方がない。
 なけりゃ期日までに揃えればいいんだよ。
 まだ1週間残っているんだから、間に合うはず。
 ぼくら技術者は「Why」じゃなくて「How」なんだ。
 なぜ、と問うより、どうやって、なんだ。
 ピンチになったとき、それをどうやって切り抜けるかが大切。
 結果よければすべてよし、なんだからね。

Whyにこだわると、必要な期日までに必要なコトが終わらなくなります。
トラブルがあったとき、Whyにばかりこだわっている人は、犯人捜しにやっきになりがちなんですよ。
誰が悪かったからこうなってしまったのか、ってね。
でも犯人捜しをする人がたいてい悪い。
そいつは、自分は悪くないということを第一に言いたいがために犯人捜しをし、Why、なぜ!にこだわってしまうのです。
自己保身第一なんですな。

そんなことよりHowですよ。
どうやって今のピンチを切り抜けるか。
どうやっていい結果につなげるか。
それを第一に考えるのがエンジニアの心得のひとつだって、ぼくは思うのです。
結果がよければそれでオッケーなんです。
犯人捜しをするとしても、コトが貫徹してからやればいいんです。
もっとも、いい結果に終われば、誰が犯人かなんかあまり気にならなくなるものです。
無駄なことはしなくてもすみます。

「WhyよりHow」ってことは、『致知』’03年8月号、大谷由里子「第一線で活躍する女性」に書いてあったことを覚えていたから。
大谷さんは元吉本興業の芸人さんのマネジャー。
あの横山やすしのマネジャーでもあった人。
こんなエピソードが書かれていたんです。

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吉本興業では「やすし・きよし」の横山やすしさんや、当時売り出し中の「宮川大助・花子」などを担当しました。
横山さんにはわがままなイメージがあるようで、人には「大変だったでしょう」と言われます。
確かに、大阪で生放送に出演するはずなのにまだ地方の競艇場にいたり、「浮気がばれた。嫁が怒っているから姿を消す。オレに仕事をしてほしかったらおまえが嫁の機嫌をとってこい」って電話がかかってきたり、むちゃくちゃでしたよ(笑)。

でも、どんな仕事でも取引先や上司から無理難題を言われるでしょう。
それを無理難題と思うかどうかの違いです。
コーチングの基本に

 “発想を「Why」から「How」に変えよう”

という理論があるんですよ。
無理難題を言われて、「なんでそんなこと言われなあかんねん」と思ったら、もうそこで終わり。
あの頃、横山さんに何を言われても「どうする?」「どうやって解決する?」といつも考えていました。
それがいまとても役立っています。
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人間生きていればいろんなトラブルに遭遇します。
何でこうなのよ?!、どうしてオレがこんな目に遭わなきゃならないんだ?!、なぜオレがやらなくちゃならないんだ?!ってことばかり。
でも切り抜けなきゃならないんです。
やるしかない。
いつまでもWhyに拘わっていたんじゃ前に進めません。
だから頭の使い方をHowに切り替えるんです。
どうやったら上手く行くか、どうやって切り抜けるか、どうすれば何とかなるか、ってね。

これはエンジニアの処世術として使えると、ぼくは思いましたね。
だから覚えておくことにした。
覚えるだけじゃなくて、以来、実践してきました。
結果オーライにするためにはどうすればいいか、Howを中心に考え、行動するようにしてきました。

Whyには「行動」が伴わない。
行動しなけりゃ事態は好転しないんです。
悩んでいるうちに時間は過ぎ、何もしないから事態は悪い方へと転がりだし、よくない結果に終わります。
すると自分を守るために誰かを悪者にするしかなくなる。
犯人捜しが始まるメカニズムはこういうわけなんです。
そして誰かを恨み、自分の人生を台無しにしてしまうのです。

Howで考えれば、残された期間でしゃにむに行動することができます。
行動すれば事態は少しずつでも好転していきます。
完全に間に合わないこともあるでしょうが、ちょびっとでもよい方向へと向かうんです。
最悪の事態だけは避けられるんです。

「WhyよりHow」はエンジニアだけじゃなく、すべての人に役立つ考え方だと思います。
というか、すべての人は有限の資源(=リソース;人、金、モノ、時間)の中でよりよい人生を創っている存在ですから、すべての人はエンジニアでもあるんです。
ピンチに遭遇したとき、つい「なんで~?!」と思ってしまいがち。
その時、「どうやって」と考え方をチェンジしてみる。
そういう思考の習慣を持つといいですよ。

さて、スタッフの努力で足りない資料は検査前までに揃いました。
結局その資料は検査員にお見せする機会はありませんでした。
無駄な仕事だったかというと、そうじゃありません。
すべての資料がきちんと揃っていたおかげで、ぼくも堂々と検査を受検することができました。
検査もスムーズに進み、予定時刻より早く終了。
だから意味のある仕事だったと思いますよ。



写真は筑波研究所に建設中の細胞研究リソース棟。
いよいよ本日受電です。
今日も楽しくがんばってきますよー。

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