「京」はtop500での世界一のみならず、ゴードン・ベル賞においても最高性能賞を受賞した[。
http://www.riken.jp/r-world/info/info/2011/111118/index.html
次世代半導体の基幹材料として注目されているシリコン・ナノワイヤ材料の電子状態を計算した結果である。
これまでのスパコンでは規模が大きすぎて計算が不可能であった、現実の材料のサイズに近い10万原子規模(直径20ナノメートル、長さ6ナノメートル)のナノワイヤの電子状態について、計算性能を確認するための量子力学的計算を行い、3.08ペタフロップス(実行効率 約43.6%)を達成した。
また、10,000個から40,000個の原子規模からなるシリコン・ナノワイヤについて電子状態を詳細に計算した結果、断面の形状によって電子輸送特性が変化することもわかった。
この計算を実行した時点で、「京」は全筐体の設置が完了していなかった。
よってすべての筐体を使えばさらに性能は上がる。
その成果は次回のゴードン・ベル賞で再度の最高性能賞として結実するだろう。
その他、HPCチャレンジアワードにおいても4部門すべてにおいて1位を受賞することもできた。
http://www.riken.jp/r-world/info/info/2011/111116/index.html
HPCチャレンジアワードは、スパコン性能をLINPACとは違った側面から評価するために設けられた賞である。
たとえば「Global FFT賞」では科学技術計算に頻繁に現れるフーリエ変換を、いかに高速に計算することができるかを競う。
このことから「京」はただ速いだけではなく、実際の科学技術計算においても十分な性能が期待できることが明らかとなった。
しかもこれも「京」すべてを使っての成果ではなく、一部分のマシンのみで得た結果なのである。
いかにモンスターマシンであるかがわかるであろう。
今やスーパーコンピュータは科学技術の発展、産業の創出にとってなくてはならない「ツール」である。
例えば新たな物質を化学合成する際でも、実際に実験を行う前にコンピュータによるシミュレーションを実施するのは当たり前のこととなっている。
自動車産業においても、車体の空力性能の検証に従来は模型を造り風洞実験により行なっていたが、現在はコンピュータが用いられ、それによって開発時間と開発費用を削減している。
スーパーコンピュータはこれまでの科学技術研究の方法であった理論研究、実験研究だけではなく、新たに「シミュレーション」という研究方法を生み出した。
気象現象など複雑で理論でも実験でもアプローチできなかった分野へも、計算によるシミュレーションという手法を用いることによって、仮説の検証や未来予測が可能となる。
高速で大規模計算が可能なスパコン「京」の完成により、その精度は格段に向上する。
またスパコン開発は、コンピュータ技術だけではできない。
世界トップレベルのスパコンを開発することによって、半導体技術、通信技術、ソフトウェア技術、電源技術、冷却技術、建築技術など多くの関連技術も発展させなければならない。
それによって日本の技術力の発展が総合的に培われるのである。
「京」の世界一獲得によって、日本の持つ各分野の技術力は依然として世界トップレベルを維持していることも示すことができたのだ。
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