2011年4月25日月曜日

楽しいから勉強してしまう


こんにちは

昨日は大阪科学技術館でサイエンスカフェ。
連日の講演となりましたが、好きなことをやってるのでまるで疲れません。
昨日もたくさんの人が集まってくれました。
ぼくのサイエンスカフェでは、冒頭に「今日ぼくは何をしに来たんでしょうか?」と問いかけることにしています。
で、「未来の科学者を探しに来た!」って言うんです。
もともとサイエンスカフェに来るような子は理科マニア。
眼がキラキラ輝きますよ。
ついでに、「ご一緒のお父さん、お母さん、ごめんなさい。ちょっと手遅れです」と言ったりして、笑いを取ります。
つかみはおっけーってことで。
XFELの話をしながら、最後は「好きなことをとことんやろう!」という結論に導きます。
そう言っているぼくが好きなことをとことんやっていなければ、迫力も出ませんよね。
子どもたちにそう言う事によって、ぼく自身も好きなことを優先的にこれからもとことんやっていこう、という気持ちを新たにするわけです。

先日、JAXAの川口淳一郎さんの講演を聞く機会がありました。
小惑星イトカワから世界初のサンプルリターンを成功させた、はやぶさチームのリーダーですね。
川口さんはJAXAの中の宇宙科学研究所(ISAS)の所属。
ISASはもともとは東大宇宙航空研究所でした。
宇宙航空研究所は日本のロケット技術の父、糸川英夫博士が始めた研究所なんです。
糸川博士は戦時中は戦闘機の開発者だった。
糸川博士が設計した戦闘機が、ゼロ戦とともに旧日本軍の主力戦闘機であった「隼(はやぶさ)」なんです。
そして小惑星イトカワは、もちろん糸川博士にちなんで名付けられたもの。
ですから、はやぶさプロジェクトは糸川博士へのオマージュでもあるんですね。

川口さんのお話で面白かったのは、

 はやぶさに使った技術の重要なところは論文にしない

ということです。
だって、真似されちゃいますから、だそうです。
アメリカのNASAは日本の宇宙開発の10倍もの予算を持ち、10倍もの研究者や技術者を擁しています。
論文にしてしまったら、即真似されてしまいます。
それでは日本が勝てるわけがありませんからね。

論文にしない、すなわち川口さんたちのチームは科学者ではない、ということです。
自分たちの技術、ノウハウを守り、独自性を保つ。
それは「技術者」に他なりません。
はやぶさチームはエンジニア集団なんですよ。
糸川博士も戦闘機の設計者ですから、もちろんエンジニアだったわけです。
その伝統が今も連綿と続いているんです。
川口さんも工学博士ですしね。

だから本音を言えば、ぼくの推測ですが、はやぶさチームの目的は「リターン」の方なんでしょう。
小惑星からサンプルを持ってきて、宇宙や地球の起源を調べる、という方は重要ではない。
予算を取るためのひとつの方便だったかもしれませんね。
ロケットを宇宙に飛ばし、ある星に到達させ、そこに着陸させ、サンプルを採取し、再び地球へと戻ってくる。
それがやりたかったんだと思います。
やりたいことに熱中する。
はやぶさチームのそんな情熱が、川口さんの講演から伝わってきました。

糸川博士がパリ工科大学で講義したときの内容がネットで見つかりました。
http://www.romresu.net/itokawa.html
糸川博士が若い時、どんな勉強法をしていたかが分かりました。

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自分は勉強をしているという意識などなくて、どちらかというと偏執狂で、興
味にかられて文字通りしらみつぶしに問題を解いていただけなのだけれど、結果として大変な量の勉強をしていたようだ。
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偏執狂=マニアです。
マニアは勉強しているという意識がないんです。
面白いからどんどんやってしまう。
やらないと気が済まない。
問題が解けたり理解が進むと楽しくなります。
さらに勉強したくなる。
それで結果としてたくさん勉強してしまうんです。

勉強ができるようになる一番のコツは、大量にたくさん勉強するってことです。
勉強できない子はアタマが悪いのではありません。
そもそも勉強してないんです。
ぼくの教師経験でもそれは間違いないと思います。

糸川博士は東大教授としてロケットの研究をしていました。
が、志半ばで定年前に退官してしまいます。
その一つの原因は朝日新聞での猛烈なバッシングだったそうです。
糸川博士の中学校から大学までの同級生が、当時朝日新聞の科学部長をしていました。
この人が糸川憎しの急先鋒だったそうなんです。
糸川博士は、こう言います。

 彼だって一中、一高、東大出の秀才なんだ。
 だけどたまたま私と同級生だったばかりに
 どうしても一番になれなかったのだ。
 彼は気の毒だけども、勉強だと思ってやるから、
 私の勉強量に追いつくのは大変だったのだ、
 ということを後年こうして気がつかされたのだ。

要するに、嫉妬、妬みだったんでしょうね。
バッシングは受けたけれど、糸川博士は東大退官後も大活躍します。
糸川博士のお弟子さんたちもその精神を連綿と受け継いて、それがはやぶさプロジェクトの成功へとつながっています。
やっぱりマニアのほうがハッピーになれるんだって、ぼくは思うんですよ。
マニアバンザイ、変人バンザイ!

2011年4月24日日曜日

専門バカになろう!


こんにちは

昨日は科学技術館でサイエンスカフェをやりました。
あいにくの雨模様の天気でしたがたくさんの方に来ていただきました。
ちょっとお子さんが少なかったので、いつもより盛り上がりに欠けちゃいましたがー。
ま、それも雨のせいにしておこうっと。
あはははは。

参加者の中に和光脳センター新棟の電気工事を担当してくれた技術者の方がいました。
お子さんを連れて。
嬉しいですねー。
たいがいのサイエンスカフェは研究者の方が講師になることが多い。
だから研究内容の話が多いわけです。
でもぼくは技術者ですから、エンジニアとしての話をするようにしています。
研究者に負けず劣らず技術者も楽しい仕事だってことも、子どもたちに伝えたいわけです。
昨日の話の中でも、「あ、ここにも技術者の方がいらっしゃいました。お父さんが和光脳センターの建物を造ってくれたんですよ。センター長でノーベル賞を受賞した利根川先生にも、MITよりよくできているって褒められたんですよ」なんて紹介しました。
お子さん、ちょっとお父さんを見直したでしょうかねー。

その脳センター新棟を設計してくれた若い(そろそろ嫁もらえ)エンジニア君からこんなメールをもらいましたよ。

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脳科学総合研究センター実験動物飼育解析研究棟(脳神経回路棟)の設計・現場で大変お世話になりました。
今日無事に竣工を迎える事ができ大変うれしく思っており、これも関口さんの指導があってのものだと思っています。
設計も含め丸2年間大変勉強になりました。入社以来かかわった物件の中で、間違いなく一番思い出深く、電気設備設計技術者として一番勉強になった現場となりました。
特に設計・現場の考え方で電気設備の根本(一つ一つ)に今回ほど追及した話を教えていただいたことは初めてでした。

印象に残っている話では下記のようなものがありますが
・直流電源の整流器の容量
・太陽光のパワコンとインバータの違い
・マニュアルの大切さ
思い出せば他にも色々ありますが本当に厳しく楽しい現場でした。

今後はこの経験を生かして、他の設計・現場にいかして生きたいと思っています。
自分の価値を高めるものとして、資格についても関口さんの話を聞いて少しずつ勉強していきたいと思っています。

関口さんのメールも返信等はしていなかったですが、毎回本当に楽しく読まして頂いております。
今後ともお願いします。
本当に大変お世話になりました。今後とも仕事で一緒になる事もあることを祈っています。
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嬉しいですねー。
「厳しく楽しい現場」っていうのがいいね。
ぼくの理想です。
ぼくはマニュアル主義ですから、マニュアル通りに造るのが好き。
マニュアルは過去の失敗から得られたノウハウの集積です。
それを活用しないのはもったいない。
でもマニュアルに書いてあるとおりに造るだけでは面白くないし、腕も上がらないのです。
マニュアルの裏にあること、原理原則まで理解する。
マニュアルの意味、意義が分かると面白いし、間違いも少なくなるんです。
だからことあるごとにスタッフたちにマニュアルの裏にある原理、法則について語ったり、なぜこんなマニュアルになったのか立法事実を話したりしていたんです。

仕事ってたいがいOJT(オンジョブトレーニング)で覚えていくものです。
そしてほぼ誰でも、そうやって仕事ができるようになっていく。
いつも通り、平常時はそれで十分こなせます。
あるいは、自分が平社員、下働きの時はそれでも十分仕事になります。
でもそれだけじゃダメなんですよ。
いつもと違う状況で、かつ自分の判断で進めなくちゃならなくなったとき、OJTで得た技能だけでは立ちゆかないのです。
原理、原則が身に付いているかどうかなんです。
エンジニアはいつも同じ状況で同じ成果を上げる人だと思っている人が多いでしょうが、違うんです。
いつもと違う状況でも同じ成果を上げられる人が、一流のエンジニアなんです。

サイエンスカフェでは子どもたちに「好きなことはとことんやりなさい」って伝えます。
嫌いなことはテキトーでもいいよって。
そういうと多くの子はニコニコしますよ。
お父さん、お母さんも笑ったりね。苦笑い??
嫌いなことを無理してやるのはとても効率が悪い。
好きなことなら多少の困難でもへっちゃらになります。

細野秀雄『好きなことに、バカになる』サンマーク出版¥1400-から引用します。

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就職活動にかんして、私が学生たちによくいうのは「最良の就職活動は自分の研究に本気で打ち込むことだ」ということです。
つまり、自分はこれが好きだ、このことを徹底的にやってみたいという意欲や目標を明確化して、その好きなこと、やりたいことをとことん追求すること。
それが社会に対する最大のアピールポイントになるし、自分の大きな強みともなるのです。
だから若いうちは、ひとつのことを深く掘り下げることに力を傾けるべきです。
若いときは「専門バカ」でいいのです。
「専門もバカ」がいちばん困ります。(194p)
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確かに、確かに。
専門バカは揶揄されることも多いわけですが、そんなことはない。
専門バカほど役に立つ人はいないんです。
課題に合わせてそれぞれの専門を生かし、力を合わせる。
専門バカ集団は困難を解決できるポテンシャルがあるんです。
専門性の何もない人は、いくら何人集まっても何もできないのです。

2011年 理研ニュース > 3月号有馬朗人 元理事長に聞く「日本人よ、もっと自信を持て!」にもこうありました。

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──最後に、次代を担う人たちにメッセージをお願いします。
有馬:「若者よ、一芸に徹せよ。余計なことはやるな。研究なら研究に専念せよ」。これを、わが人生の失敗を省みて、教訓として申し上げます。
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好きなことをとことんやるとは、自分を専門家に育てる、ってことです。
それが自分にとってもいいことだし、社会にとってもいいことなんです。
専門性を持った人間は社会に貢献できます。
貢献できる人は皆から必要とされます。
誰かから必要とされ、認められ、喜ばれる。
そうなれば自分もハッピーになれるんです。

2011年4月23日土曜日

頭はシャンプーで洗うな

こんにちは

「そんなことやって、頭が股間の臭いになるわよ!」
妻からそんなことを言われました。
が、ぼくはやり続けます!

って、何をやる続けるかって、単身赴任を機会に頭を石けんで洗うのを止めてみたんです。
ぼくは子どもの頃からのアトピー性皮膚炎で、大人になってからは乾燥肌がひどい。
もちろんかゆみもあるわけです。
頭がかゆくてひっかくと、大量のふけが頭から落下します。
これを何とかしたかった。

頭だけじゃなく、全身が乾燥肌。
特に背中の肩胛骨のあたりがひどくて、ひっかくと皮膚がボロボロ落ちました。
乾燥肌を治そうと、尿素入り保湿クリームを塗りたくっていたんです。
ところがなかなかよくならなかった。
保湿クリームを塗った瞬間はかゆみも消えるんですが、しばらくすると猛烈にかゆい。
それでまた保湿クリームを塗りたくる。
これを繰り返していました。

昨年、夏井睦「傷はぜったい消毒するな』という本を読んだんです。
アトピー性皮膚炎の治療についてもちょこっと書いてあった。
それを読むと、クリームというのはそもそも界面活性剤なので、皮膚本来の皮脂を溶かしてしまい、よけいに乾燥肌にしてしまう、と書いてありました。
乾燥を防ぐには、ワセリンを塗るのがよいとも書いてあった。
さっそく実践してきました。
そのおかげで、肩胛骨のガサガサとかゆみはほとんど解消してしまいました。
嬉しい!

あとは頭のふけです。
これを何とかしたかった。
でも頭には髪の毛が生えていますから、ワセリンを塗ることは事実上不可能です。
どうすればよいか。

本を読んで以来、夏井先生のホームページをちょこちょこ読むようになりました。
http://www.wound-treatment.jp/
そこである記事を見つけたんです。
「頭をシャンプーで洗うな。お湯だけで流せ」って。

これまでぼくは頭がかゆくなると、すぐお風呂に入って石けんで洗っていました。
さすがにシャンプーは体に悪そうだから使っていませんでしたが、天然石けんならいいだろうと思っていたんです。
かゆみだけじゃなく、ぼくは乾燥肌なのに髪がべとべとする。
やっぱりさらさらヘアーにしたいじゃないですか、おじさんといえども。
なので、毎日お風呂に入ると石けんで髪を洗っていたわけなんです。
でも髪はべとべと、ふけはポロポロだったんですよ。

石けんで髪を洗った直後はかゆみもなくなり、しっとりとした感じになります。
でも髪が乾くと同時にかゆみも復活。
頭をひっかけば、皮膚が際限なく落ちてくるんです。
そしてまた頭を洗う。
よくないですよねー。
ホント困っていました。

で、夏井先生のホームページにはこう書いてあったんです。

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最近ずっと取り上げている「頭皮のトラブルとシャンプー」問題ですが,ある皮膚科の先生から「その通りです。頭皮の痒みを訴える患者さんにシャンプーを止めるように指導すると,大体改善します」というメールをいただいています。

そこで気になったのですが,皮膚科の先生たちの間では,このシャンプー問題はどのように扱われているのでしょうか。もしも多数の先生方が「頭皮のトラブルの原因はシャンプーだ」と考えているのであれば,皮膚科学会を挙げてこの問題を追及すべきだと思うのですが,どうでしょうか。
 それとも,皮膚科の先生方の大半は,シャンプーは頭皮のトラブルの原因ではない,と考えられているのでしょうか。

もしも,頭皮のトラブルの多くはシャンプーを止めるとなくなる,という現象を多くの皮膚科の先生が経験なさっているのであれば,患者を救うために皮膚科学会が正面から取り上げるべきものだと思います。
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よし、やってみよう!と思いました。
シャンプーだけじゃなく石けんも悪いかもしれない、と思ったんです。
もちろん頭をまったく洗わないわけじゃなく、お湯でよく流すんです。
幸い単身赴任。
石けんで頭を洗わなくて、多少臭ったって平気です。
職場の人は家族ほど至近距離まで近寄ってこないですから、影響ないでしょう。

実践し始めて半月が建ちました。
かなりいい感じです。
ふけがほとんど落ちなくなりました。
かゆみも軽減されてきています。
思ったほど髪のべとべと感はありません。
臭いは。。。自分ではよくわかりません。
なので、家に帰ったついでに妻に確認してもらおうと思ったんです。
ところが妻は嗅いでくれません。
石けんで洗わない=不潔、という固定観念があるからです。
そこで我が子たちに嗅いでもらいました。
「ぜーんぜん臭くないよー」
やったぜ!!

夏井先生のホームページによると、シャンプーを止めお湯で洗うだけにすると、かゆみやふけだけじゃなく、はげも改善するとのこと。
http://www.wound-treatment.jp/next/wound377.htm
中年後半にさしかかり、頭頂部の冷却効果が上がってきたぼくにとって、かなりの福音です。
頭を石けんで洗わず、お湯だけで洗うことを続けてみようかと思います。
夏井先生、ありがとー。

ハッピーが笑顔を創る


こんにちは

溌貴君が泣いて帰ってきました。
近所の公園に遊びに行ってたんです。
溌貴君も1年生になったので、ひとりで、あるいはとしきくんを連れて公園に行くことを解禁しました。
いつまでも親と一緒じゃね。
それに親だってそれなりに忙しいんだし。
もちろん行くときには、「貫井公園に行ってきます」と行き先を親に告げることは、しっかり躾けていますよ。

我が町貫井にも、比較的上品な地域と、ガラの悪い地域がありまして。
今回はガラの悪い地域の公園に行ったんですね。
そうしたら、そこで遊んでいた小学生のお兄さんたちに、としきくんが乗っていったキックボードを奪われ、乗りまくられた。
最初は貸してあげているだけと思っていたんですが、なかなか返してくれない。
家にも帰りたくなった。
そこで溌貴君が「返して!」と言ったんですね。
そうしたらその小学生のお兄さんたちに、「なんだおまえ、きもちわりー」って言われたそうなんです。
それで溌貴君は泣いてしまったってわけです。

森博嗣『自分探しと楽しさについて』集英社新書¥700-から引用します。

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もし、他人の笑顔で腹が立つという人間がいるとしたら、その人はそもそも自分自身に不満を抱えている。
自分が自分に楽しめないから、人が楽しんでいるのを見るとますます不満が高じる。
実は自分に腹を立てているのに、自分以外のところに原因や責任を求めてしまうのは、自分の中では原因や責任を処理できないからだ。
これはすなわち、自分の「楽しさ」を持っていない状態ともいえる。(3p)
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バカという方がバカ、と同じで、悪口を言う方が悪いんですよ。
悪口を言ってしまう、それは余裕のなさなんです。
いつも自分に不満を抱えている。
だからってその不満を解消しようと努力はしないんです。
だからずっと不満のまま。
その不満が、あるきっかけで他人への攻撃となってしまうんです。
まあ子どもだと努力しようがない場合も多いんですがね。

溌貴君にも少しずつ、よのなかにはそういう人もいるんだってことを理解してもらいましょう。
悪口を言うような人は、実は幸せじゃないんだって。
だから悪口を言われても、気にしすぎなくていい。
気にしすぎて自分まで不幸になって、自分が誰かの悪口を言うような人にはならないようにする。
何か自分に不満に思うことがあったら、少しずつでも努力をしてそれを解消する。
あるいは自分にできる他の何かでカバーする。

自分に自信が持てれば、笑顔でいられます。
笑顔でいれば、楽しいこと、楽しい仲間も集まってきます。
楽しい仲間と楽しいことをやると、努力は苦にならなくなり、ますます自分が高まっていく。
それがハッピーに生きる技術なんだと思います。

2011年4月22日金曜日

快適な省エネ

こんにちは

空調冷凍学会に参加しています。
いろんな人の話を聞けるのが嬉しいですね。
自分の仕事に転用できそうな技術もザクザクあります。
学会参加はオトクですよ。

空調冷凍学会ですから、省エネ、脱炭素社会に関する研究が多いです。
昨日聞いた話で面白かったのは、省エネのため冬季18℃に空調温度を設定することが多いが、これは必ずしも省エネにならない、ということ。
18℃というのは、経済省などお役所が省エネのために推奨する冬の空調温度です。
外気が冷たい季節に過度に空調温度を上げるのはエネルギーの無駄。
それは確かなんですが、どんなときでもそうかというと、そうじゃないんです。

この発表によるとこうでした。
最近のオフィスは、建物の断熱がよくてOA機器が多く室内発熱の高い部屋が一般的です。
こういう部屋ではわざわざ空調機から暖かい空気を送り込まなくても、OA機器などからの発熱で温められているんです。
空調しなくても20℃~22℃くらいになるんですよ。
こういう部屋で18℃設定にすると、冬なのに空調機は冷房運転を始めてしまいます。自動的にね。
冷房して18℃に制御してしまうのです。

冷房するためは空調機はエネルギーを使います。
そして室内には冷風が吹いてきます。
室温を18℃に下げるために、空調機の吹き出し温度は14℃とか16℃とかかなり冷たい空気になっています。
部屋の中で仕事をしている人にその冷気が吹き付けられます。
寒くて不快です。
不快だと仕事の能率も下がります。
エネルギーを使って不快なオフィスを作ってしまうのです。
これって省エネじゃないですよね。

よのなかには「省エネ原理主義者」がいて、冬は18℃、夏は28℃以外は認めん!という職場もあったりします。
何が何でも冬は18℃じゃなきゃいけないって。
でも上に見たとおり、場合によって違うんですよ。
断熱がよい建物でOA機器など発熱のある部屋では、20℃とか22℃設定の方が省エネになるんです。
その上、冬はやっぱり18℃だとちょっと寒いよね。
ウォームビズなど暖かい服装をしても、がまんが必要。
20℃や22℃の方がやっぱり快適だし、仕事の能率も上がるんです。

OA機器などからの発熱で部屋が十分暖められているなら、空調機を停止できます。
動かさなければエネルギー消費はゼロです。
快適な温度でエネルギー消費がゼロ、これぞ本物の省エネですよ。
もちろん、必要な換気はしないとダメですがね。

ぼくの勤務する研究棟の研究室なんかまさにそうですよね。
計算科学、計算機科学の研究者ですから、高性能のパソコンを部屋に置いています。
パソコンの発熱はけっこうありますよ。
もちろん建物は新築したばかりで断熱性能もバッチリです。
研究室がどんな風に使われているのか、自分でもその部屋に行って最適な設定値を決める。
研究員の人たちと話し合って、快適性も損なわず、エネルギーも使わないポイントを探っていきたいと思います。

そもそもエアコンは快適な室温を作り出すための機械なんです。
オフィスのエアコンは快適な室温で効率的に仕事をしてもらうためのもの。
そこを外して、省エネ原理者になって室温設定だけ厳しく言うのは間違っていると思います。
エネルギーを使って冷房したのに、仕事の効率を下げてしまうのは、もったいないとしか言えません。
国土交通省が「仕事がはかどるオフィスビル」というテーマで業界横断的なコンソーシアムを開催していたことがあります。
日本のホワイトカラー、事務職の労働生産性が低いことは有名です。
生産性を高めるには、オフィス環境も重要だって事なんです。
空調も重要な一要素です。

「仕事がはかどるオフィスビル」の報告書の中に、<夏季に27℃から26℃に1度室温を下げると 能率が11.7%向上する>って書いてありました。
ナルホドーって思います。
省エネのために空調設定温度を高くすると、暑くてイライラします。
暑くてうちわやセンスで首周りを扇ぐ。
そんな時間だって、積み上げればバカにならないでしょう。

それなら、多少空調を効かせ気味にして、効率を上げて仕事をする。
その代わり、早く退勤すればいいのです。
たとえば、毎日2時間残業して10時間働いている職場なら、11.7%効率upするなら1時間は確実に早く退勤できる計算です。
1時間早く退勤して、空調を停め、照明も消せるなら、エアコンの設定温度を1℃下げて削減できるエネルギーを大きく上回る省エネ効果があります。
もちろん、残業代も減り、労働者の疲労も少なくなります。
きちんと睡眠時間を確保し、家族との時間や自分の自由な時間も増えます。
翌日に疲れを持ち越すことがなくなるんです。
翌日もバリバリ働けるようになるんです。
いいことずくめだと思います。
家に帰るより職場の方が快適だし、残業代ももらえるし、という困ったちゃんもいるかもしれませんがね。

省エネは、そもそも無駄に使われているエネルギーを「省く」ことです。
省エネのためだと言って、暑いオフィスで無理してダラダラと仕事をするのは、返って無駄なことだと思います。
もちろん、冷房しすぎのオフィスでふるえながら仕事をするのも無駄。
そこで働く多くの人が気持ちよく、効率的に仕事ができるような環境をつくる。

確かに光熱費はコストです。
コストを削減するのは正しい行為です。
でも「部分」だけ見ていると間違えます。
オフィスのコストをそこで働く人の人件費まで含めて考えてみましょう。
そうすると全体コストの中で光熱費の占める割合はわずかに5%くらいなのです。
その5%のうちの1/3、つまり1.7%が空調にかかるコスト。
たとえば空調コストを1%減らすことは、全体から見たら0.017%の削減にしかなっていないのです。
オフィスの快適性を損なってまで省エネするばかばかしさがわかるかと思います。

オフィスの快適性は損なわず、意味のない残業を減らしていく。
それが全体として最も省エネになるんだと思います。
省エネは「我慢」じゃないんです。
効率、生産性を落とさずに、無駄を省いていくことなんです。

2011年4月21日木曜日

ゴキゲンをキープする


こんにちは

昨日は、空調学会、冷凍学会、機械学会合同講演会で発表しました。
スパコンの冷却設備についてです。
top500、Green500、PUEをキーワードにして、楽しくて元気なプレゼンをしました。
ところが昨日はちょっとスベリましたよー。
実は空調や機械関係の学会で発表するのは初めて。
電気関係では慣れてましたが、やっぱり雰囲気が違うんです。
参加者は真面目な方が多く、他の皆さんの発表も真面目一直線。
ぼくは完全に浮いてしまいましたー。
あはははは。
ま、面白いことをやってる変な人がいるんだな、と皆さんに思ってもらえたなら大成功ですよ。
ぼくの発表後、名刺交換に来て下さった方もいましたしね。

来年はスパコン棟空調設備について、空調学会学会賞に応募しようと思っています。
学会発表を利用して、論文を書くことによってネタ集めをしていく。
それとともに学会内での認知度を高めていく。
そういう戦略なんです。

さて、ぼくはこの4月に「調査役(課長待遇)」ってものにしてもらいました。
嬉しいですねー。
何が嬉しいってお給料が上がること。
なんたってぼくはプラグマティスト(=実利主義者)ですからねー。

ここで注意が必要ですよ。
たいていの人は課長級に昇格すると、やる気がなくなるんです。
なぜなら管理職扱いになるので、超勤手当が付かなくなるからね。
管理職手当が増えても、超勤手当がなくなってしまう。
平社員の時に残業をたくさんやっていた人は、課長級に昇格すると実質的に減収になってしまうんです。
ごくごく普通の人は、収入が下がればモチベーションも下がってしまうのが当たり前なんです。

こんな先輩がいましたよ。
平社員の時は毎月数十時間残業していました。
当時我が社は完璧な年功序列でしたので、その先輩もある年齢が来たんで課長級に昇格したんです。
やっている仕事は平の時と変わらない。
なのに昇格したとたん、残業しないで定時に帰るようになった。
なんじゃそれー。
たぶんその先輩は、残業代もらえないなら残業なんかするか、という超合理的な考えだったんでしょうね。
それはとてもかっこ悪いことと思ったので、ぼくは真似しないぞーと思ったものです。

昇格する嬉しさを減収することが打ち消し、モチベーションを下げてしまう。
それはとても損なことだと思うのです。
モチベーションが下がってやる気がなくなれば、その時に得られるべき知識や技能を得るチャンスを失ってしまいます。
人はゴキゲンなときに一番パフォーマンスがよくなるんです。
よいパフォーマンスを出していれば、自然と知識も増え腕も上がるのです。
不機嫌だと才能は開花しないのです。

どんな会社でも課長止まりの人ってたくさんいるでしょ。
そういう人はたぶん、課長になったときに不機嫌になった人なんですよ。
不機嫌だからモチベーションも上がらず、業績も上がらない。
だからそれ以上のポジションを得ることもできなくなる。

ぼくもその先輩が昇格した年齢に近づいたとき、残業は極力しない、という方針にしました。
すこしばかりの残業代と引き替えに、不機嫌になるのは割に合わないことだからね。
それに、残業をしないようにして、限られた時間内に仕事を片づける方が腕が上がることも分かったから。
20代や30代はたくさん残業して、たくさん仕事をした方が能力が上がります。
でも40代は違う。
残業しない方が腕が上がるんです。
その方が長い目で見たら断然オトクなんですよ。

武田双雲『上機嫌のすすめ』平凡社新書¥700-から引用します。

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才能があるのかないのか、本人はもちろん、まわりの誰もわからない。才能なんて、じつに怪しげなものだと思います。
才能ということに関しても、僕は自分でひとつの結論を出しています。最終目的をどこに置いたのかで決まってくるだけの話だと考えているのです。
ビジョンといってもいいと思います。
このビジョンの大きさが才能だと僕は考えています。
ビジョンがある人はどんなことがあってもモチベーションを下げずに、大きな目的に向かって歩み続けられると思います。
そんなふうに、モチベーションを下げないことこそが才能にちがいありません。
そして、モチベーションが下がらない最大のコツが、上機嫌なのです。(32p)
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そうなんです。
上機嫌こそモチベーションを維持し、才能を開花させるもの。
では上機嫌でいるためにはどうしたらいいか。
成り行きにまかせてはダメですよ。
自分でコントロールしなくちゃ。

たとえば、課長級になる数年前から残業をしない。
残業代をもらわないようにしておく。
すると昇格したときに確実に収入は増えます。
ぼくだってごく普通の労働者ですから、給料が増えれば嬉しい。
家族にだって自慢できます。
だって昇格しても給料が下がっちゃったら、女房に「ふーん、偉くなったの。でもお給料は下がるの。ちっとも嬉しくないわねー。平でいればよかったのに」なんて言われちゃいますよ。
オトコよりオンナの方が実利主義だからねー。
女房からそんなことを言われたら、ますますやる気なくなりますよね。

なので40代半ば頃から、断固残業しないようにがんばってきたんです。
でもなかなか昇格しなかったんですがー。
あははははは。


写真は神戸研CDBに造った幹細胞研究棟。
ゴキゲンに出来上がりました。
引越をしている若い研究員たちがとても嬉しそうにしていました。
ゴキゲンな建物でゴキゲンな仕事をしてほしいですねー。

2011年4月20日水曜日

行動経済学入門


こんにちは

昨年度末、人事部からこんなお知らせがまわってきました。

> 昨日の部長会でも人事部よりご報告いたしましたが、
> 定年制事務職員の自己啓発意欲を喚起し、理研の経営効率の増進を目的とした
> 特別昇給の申請受付を行います。
> 今回は、平成19年~平成22年度に昇給事由に当てはまる件があった場合、
> 申請の対象となります。

労働基準法(第14条第1号及び第2号)では、「高度の専門的知識等を有する労働者」というのを定めてあって、こういう人は普通より長期の労働契約を結べることになっています。
専門的知識、技能を持つ労働者は代替えが効かないので、会社としても長期間確保したいわけです。
どんな人が専門的知識等を有する労働者か、具体的にはこんな具合です。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/02/h0213-3.html
我が社としても高度な専門的知識、技能を有する社員を優遇し、あるいは社員が高度な専門的知識、技能を自ら獲得すべく努力することを期待して、特別昇給させようということなんですな。

ぼくは我が社にこんな制度があるなんてちっとも知りませんでしたよ。
で、こういうお知らせがまわってくるということは、年度末になっても誰も申請する人がおらず、人事も困っているんだと思いました。
困っている人を放っておけないのがぼくの性分。
幸い20年度にぼくは第一種放射線主任者試験という大形資格に合格していました。
この資格は厚労省で定める高度の専門的知識には含まれていませんが、ここに書かれている資格と遜色ないレベルですし、我が社のような研究所には必須の資格です。
実際、放射線主任者試験で勉強したことを活かしてXFEL棟の設計や施工監督にあたりましたからね。
放射線の知識が身に付いたおかげで、かなり見通しよく仕事ができたんです。
厚労省で定めた資格に準じるものとして、堂々と申請できると判断しました。

4/1にぼくはちょこっと昇格し、辞令をいただきました。
そこには「俸給○等級△号俸を給する」と書いてありました。
さっそく我が社の給料表を調べました。
我が社の場合、昇格しても給料はドカンとは上がりません。
等級が上がって、今もらっている給料の直近上位にランクされることに決まっています。
給料表を見てみたら、もらった辞令では直近上位よりちょびっと上のランクになっている。
「やったー、特別昇給したんだー」と思いました。
さっそく人事の担当者にお礼のメールを打ちました。

ところがところが、そうじゃなかったんです。
お礼のメールを打ったすぐ後、廊下で人事課長に会いました。
それによると、昇格すると直近上位より上の号俸にするよう最近規程が変わったのだそうです。
だからぼくの場合も昇格に伴う昇級だけだったんです。
つまり特別昇給はなしだった、ってこと。
人事課長は「関口さんは昇格もして、加えて特別昇給もさせてしまったら上げすぎになってしまいます。合格した資格は素晴らしいと思いますし、我が社にとっても必要なものだと思います。でも人事部長や担当理事とも協議した結果、今回は申し訳ありませんが特別昇給はなしでお願いします」と丁寧に説明してくれました。
がっくり、ぬか喜びでした。。。

我が社の人事も担当理事も行動経済学の研究成果をご存じないな。
行動経済学には「プロスペクト理論」というものがあります。
人の感情は、収入の増加に対して比例しないんです。
収入が増えれば嬉しいんだけど、その嬉しさはどんどん収入が増えていってもあまり嬉しさは増えていかない。
収入が減れば悔しいんだけど、その悔しさはどんどん収入が減っても悔しさはあまり増加しない。
一番嬉しさを感じるのは、ちょっぴり収入が増えたとき。
逆に一番悔しいのは、ちょっぴり収入が減ったときなんです。

人は嬉しいときにやる気が出ます。
嬉しいとどんどん仕事をするようになります。
だから社員に仕事をもっとさせようと思ったら、ちょっぴり昇給してやるのがオトク。
逆に、人は悔しいときにはやる気が出ない。
悔しくてむしゃくしゃしていれば、仕事なんかする気になれないものです。
だから、ちょっぴり減給するのが最も損なやり方なんです。
昇給するならちょびっと、減給するならドカンとやった方が、経済合理的なんです。
ぼくもちょびっとでも特別昇給させてくれたら、もっとやる気が出て我が社のために貢献したのにねー。
あははははは。

ところで最近、人件費抑制のために人事評価制度を導入している会社も多いと思います。
総人件費が同じなら、仕事を良くやる人に多めに分配し、仕事をしない人には少なく分配する。
そうやって社員のやる気を喚起しようという魂胆ですな。
でもプロスペクト理論を適用するなら、やり方に注意が必要です。
よくあるやり方は、仕事をしない人からちょこっと減らした分を、仕事を良くする人にそのまま付け替える、というもの。
たとえば社員のうち10%のダメ社員の給料を減らして、10%の有能な社員にその分を付け替えるみたいな。
これは給与設計上大変よろしくない。

もちろん給料を増やした社員はやる気になりますよ。
ところが給料を減らされた社員はものすごくやる気を削がれます。
ちょこっと減らされるときほど、感情は悪化するというのが、プロスペクト理論の教えるところ。
減給された社員はすごくやる気を削がれ、本来持つパフォーマンスさえ発揮しなくなります。
どうせおいらの給料は安いんだから安い仕事してやれ、ってなもんです。

それに加えて、自分が減らされた分を優秀な社員が受け取っているんです。
その社員に対して恨みを持つようになります。
あいつのせいで俺の給料は減ったんだ、あいつが俺の給料を横取りしやがったんだと、優秀な社員の邪魔をしたり足を引っぱったりもするようになってしまうんです。
こうして、会社全体のパフォーマンスは悪化してしまうのです。
へたな実力主義給料は、平等横並び給料だったときよりも、悪い結果をもたらすのです。

ではどういう給与設計にしたらいいでしょうか。
プロスペクト理論をご覧なさい。
収入がちょこっと増えると、すごく嬉しくなる。
収入がドカンと減っても、悔しさはそれほど増えない。
人は嬉しければゴキゲンになってパフォーマンスが上がるんです。
そういう社員がたくさんいた方がいいでしょ。

それに対してやる気のない不機嫌な社員は少ないほどいい。
やる気のないダメ社員もそんなにたくさんいるわけじゃありません。
それなのに一律10%とか決めると、そこにやる気はあるけどまだ未熟で成果が上がらないだけの社員もダメ社員の烙印を押され、やる気を削いでしまうのです。
金の卵を孵化する前に腐らせてしまうようなものです。
それはもったいないですよね。

実は、トップ10%位の優秀な社員は給料が少しぐらい上がってもちっとも嬉しくないんですよ。
こういう人は仕事そのものが面白いし、やりたいことがやれるってことの方に価値を置いています。
給料以外に、同僚からの信頼や、お客さんからの賞賛など、たくさんの報酬を得ている。
こういう人にちょっとくらい給料を増やしても、それが劇的な効果を現すことはまったくありません。
それよりもごく普通の社員、会社に60%~80%といる人たちにがんばってもらう方が、会社全体のパフォーマンスは上がるんです。

もうお分かりかな。
だから本当に誰が見てもあいつはやる気もなく、人の足を引っぱるばかりで、邪魔なだけの社員。
こういう少数だけど組織の効率を極端に下げている社員の給料はドカンと下げるんです。
そしてそれを小分けにして、ごく普通の社員たちの給料をちょびっと上げる。
もちろん「よくがんばってるね」と一言も加えて。
そうすればごく普通の、たくさんいる社員たちは気分がよくなり、よりがんばるようになりますよ。
給料をドカンと減らされたダメ社員の方も、自分の給料を横取りした相手がたくさんいるので、足を引っぱることもできなくなります。
ダメ社員がごく少数なら、腐っているだけであまり仕事をしなくても、全体に対する影響は少ないでしょう。
会社全体のパフォーマンスは確実に向上するはずです。

いかがでしょう、こんな給与設計は?

2011年4月19日火曜日

好きなこととことん


こんにちは

電気技術者協会関東支部の事務局長さんからこんなメールをいただきました。

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お世話になっています。
日頃は、当協会の事業運営について、ご高配をいただき誠に有難うございます。
厚くお礼申し上げます。
過日、会長表彰の候補者調査票を送っていただき、本部へ上げました。
本部から「電気技術者歴」が20年未満は受付できないむねの連絡が入りました。
いろいろと交渉してまいりましたが、受付していただけない結果になってしまいました。
私の力不足で誠に申し訳ありません。
なんとお詫びしてよいか、ただ謝るのみしか言葉が出てきません。
簡単にお許しをいただけるとは思っていませんが、今回はご勘弁していただければ幸いに存じます。
今後、このようなことが無いように業務を進めてまいる所存です。
誠に申し訳わけありませんでした。
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おお、なるほど、なるほど。
昨年末、事務局長さんから「ぜひ、会長賞に推薦したい」という連絡がありました。
ぼくはまだ若輩者だからいいですよー、といったんは辞退しました。
でも事務局長さんに「関口さんは50歳になったんだし、支部長賞も受賞したし、十分資格ありです」と言われ、経歴書を書いてお預けしたんです。

電気技術者協会は、電気主任技術者という法定資格者の研修団体です。
社団法人、公益法人で、会員数は1万人。
そこで会長賞をいただけるということは、保安電気技術者としては最高の栄誉なんです。

たしかにぼくは50歳になっちまいましたが、まだまだ技術者としてはヒヨッコに過ぎないと思っています。
電気主任技術者試験に合格したのは平成7年でした。
だからまだ16年しか経験がないんです。
学校を卒業してすぐ技術者になった人と、同じ50歳でも半分くらいの経験しかない。
技術者へシフトチェンジしたのは33歳にもなった時ですからね。
ヒヨッコですよ、完全に。
本来保安電気技術者として長年の功績のある人に贈られる会長賞には、ぼくはまだ値しないと思います。

それでもその16年は仕事にも恵まれ、一生懸命仕事をしてきたという自負はあります。
電気主任技術者としても、横浜研立ち上げ、和光RIBF建設時にがんばりました。
XFEL棟もスパコン棟も、細々したミスもたまにありましたが、大枠では保安上支障なく造り上げられたと、自分では思っています。
意図的に経験を積み重ね、人より1割か2割よけいに仕事をし、楽しくバリバリとやってきたのは確かだと思います。
事務局長さんがそんなぼくを評価してくれたんだと思うと、ありがたいことだと思います。

電気技術者協会の会報に寄稿したり、我が職場を見学していただいたり、会の運営にできる範囲で貢献してきたのも事実。
でもそれはぼくがこれまで技術者協会の見学会や勉強会で学ばせてもらってきたことへの恩返しでもあったんです。
少しでも会員の皆さんに役立つことができないかという思いからです。
会長賞を狙っていたわけでもない。

ともかく、今回は会長賞を受賞できなくてよかったです。
いや負け惜しみじゃなくて。
だって今もらっちゃうと、先の楽しみが減るじゃないですか。
これからも努力して電気技術者としての腕を磨きなさい、これからもより技術者協会の事業に協力して会員、後進の技術者たちの役に立ちなさい、ということなんだと思います。
保安技術者として20年の経験を得るまで、あと4年です。
あと4年電気技術者としてがんばって、4年後には堂々と会長賞受賞といきたいですねー。
 
子どもさん向けのサイエンスカフェの講師をやることが多くなってきました。
サイエンスカフェで子どもたちに伝えたいことは、<すきなこと、とことん>です。
人間は好きなことをやっているときが一番楽しいし、パフォーマンスも上がる。
好きなことを見つけ、それに熱中しよう、というメッセージです。

当然ぼくだって同じ。
言う方のぼくが好きでもないことをダラダラやっていたんじゃ、迫力出ませんからね。
おかげさまで4月から神戸計算科学研究機構へ異動となりました。
希望通りです。
会社で50歳にもなれば、現場のフロントからは遠ざかり、管理職になってしまうことも多い。
あるいは、閑職に追いやられ、好きでもなく得意でもない仕事をあてがわれる人もいます。
そんななかでぼくはまだ技術者としてフロントマンでいられる。
自分のキャリアを守ることができたんです。
これはなかなかにハッピーですよ。

ここでぼくはスパコン立ち上げ時の施設運用を総括します。
スパコンは電力を消費し、その発熱を除去しないと動きません。
安定した電力、空調のために「仕組み」を造っていく仕事です。
ぼくの仕事が世界一に繋がると思うとワクワクしますねー。
そして電気技術者協会会長賞も楽しみのひとつに加えることができた。
とことん、やりますぞーーー!


昨年末に和光研に完成した脳神経回路遺伝学研究棟。
桜の中の研究棟というコンセプト通り、とってもビューティフル!

先生は見つけるものである

こんにちは

 先生に合わせてもらおう
  お金払ってるんだから

電車の車内広告にこんなことが書いてありました。
英会話学校の広告です。

「こんな気じゃあ、上達しないよなー」とぼくは心の中で思いました。
教育というものは<先生に合わせる>ことでしか成立しないものだからです。
先生を尊敬し、先生のようになりたいと思う。
これまでの自分のあり方を否定し、自分を変えていく。
学習とは自分を変えていく作業に他ならないからです。

だから、先生に合わせてもらおう、という態度ではいけないのです。
それでは自分は変わらないからです。
たぶんこの広告では、自分のスケジュールに合わせて、自分のリクエストに従って教えてくれる、ということを言いたいのでしょう。
でもね、スケジュールだって先生の都合に合わせてまで学びたい。
その内容だって先生が決めたものの方が自分で決めるよりずっとよいはずだという確信。
それが大切なんですよ。
その方が学習効率はあがるんです。

「あ、この先生に着いていけば間違いないな」
「この先生はぼくをかしこくしてくれる」
「先生の言うとおりにすると、なんだかできる」
「先生といると楽しい!」

我が子たちにもそんな先生を見つけて欲しいものです。

2011年4月10日日曜日

日本の技術力を伝えたい!


こんにちは

サイエンスカフェでの話の中で、必ず「日本の技術力のすごさ」や「日本人の独創性」についても話します。
http://kobeuscienceshop.blog.so-net.ne.jp/2011-03-27
XFELもアンジュレータにネオジム磁石を使えるから、レーザー発振が可能になったのです。
http://www-xfel.spring8.or.jp/undulator.htm
ネオジム磁石は世界一強力な永久磁石。
カフェでもネオジム磁石を持っていき、参加者のみなさんにどれだけ強力な永久磁石なのか触ってもらいます。
子どもなんか顔を真っ赤にして引っぱっても、二つの磁石を引き離すことができません。
手のひらをはさんで、二つの磁石がくっつくところなんかも見せたりします。
で、このネオジム磁石は日本の発明品だ、ってお話しします。

ネオジム磁石は、住友特殊金属の佐川眞人博士が1984年に発明したものなんです。
この磁石のおかげで、携帯電話のコンパクト化と普及、電気自動車の実現、iPodで長時間いい音で音楽を楽しめるのです。
携帯電話のマナーモードで、着信時にブルブルと強烈に振動させているのは、内部に仕組まれた超小型モータ。
このモータもネオジム磁石を使っています。
磁力が強いのでごくわずかな電流でも、強いトルクで回転することができるのです。
だからあんなに強烈にブルブル震えるのです。

電気自動車のモータにもネオジム磁石が使われています。
これも磁力が強力なので、少ない電流でも車を動かすほどのパワーが出るのです。
車に乗せられる程度のバッテリーで、長時間、長距離運転が可能になったのです。

iPodのイヤホンにもネオジム磁石が使われている。
磁力が強力なので、微弱な電流でもイヤホンを振動させることができます。
使う電流が少ないので、バッテリーが小さくても長時間音楽を楽しむことができる。
いい音のためにはダイナミックレンジの大きさが重要です。
ダイナミックレンジとは、小さい音から大きな音まできちんと再現できること。
ネオジム磁石の磁力が強いため、大きい音を出すためにもそれほど大電流が必要ありません。
電流が大きくなければ、電線の電気抵抗によってロスも大きくなり、それがダイナミックレンジを悪化させる原因になります。
でも、大電流を必要とせずに大きな音を出すことができるのですから、ロスもなくなり、音の再現性もよくなるのです。

携帯電話、電気自動車、iPodの中には、同じく優れたバッテリーも使われています。
リチウムイオン電池です。
これも日本の発明品で、旭化成の吉野彰博士が開発したものです。
リチウムイオン電池のおかげで、コンパクトで大容量、しかも何回も充電可能な電池が使えるようになったのです。

このようにぼくらが日常的に便利に使っている機器には、日本の発明品、日本人が開発したものがたくさん使われているのです。
それを意外と知らないんですよ。
日本人は独創性がない、日本は他国の真似で儲けている、なんて悪口ばかり聞かされています。
そしてそれを信じている人が多い。
まったくそんなことはないんです!

もうちょっと言うと、アップルのiPhone。
誰もがアメリカ製だと思っているでしょう。
iPhoneを持っている人は、ご自分のものをよく見てみてください。
「made in china」って書いてあるはず。
だからって、全部中国製ってわけじゃないんです。

なんと、iPhoneの販売価格の約1/3は日本製部品代なんだそうです。
ウォールストリートジャーナル2010.12.15に、実際にあるロットのiPhoneを分解してみて、各部品を調査した結果が掲載されていました。
たしかに完成品を出荷しているのは中国なんですが、部品はいろいろな国から集められている。
完成品の出荷価格178.96ドルのうち、34%が日本製部品の価格にあたり、ついでドイツ製部品が17%、韓国製部品が13%だったのだそうです。
中国はそれらの部品を組み立てて、最終的な製品として輸出している。
その中国が受け取る組み立て費は、出荷価格のわずか3.6%にすぎないのだとか。
貿易統計上「made in china」とあっても、実体は上記のようになっているのだそうです。

で、iPhoneに使われている日本製部品は何か。
先ずはフラッシュメモリ。
これも東芝の増岡富士雄博士が開発したものです。
だから東芝製フラッシュメモリの品質とシェアはダントツです。
電子機器は一般的にCPUが重要だと思われていますが、メモリも重要なんですよ。
演算器だけでは継続した計算はできないのです。
演算結果をメモリに貯めることができてはじめて、継続した計算を続けることができる。
量子コンピュータというものが研究されていますが、演算器はもうすぐできそうなんですが、メモリがまだまるでめどが立っていない。
メモリがなければ役に立つコンピュータはできないんです。

話を戻して、iPhoneに限らず携帯電話には必ず表面弾性波フィルタが使われています。
超高性能のバンドパスフィルタで、送受信時に不要な周波数のシグナルをカットする役目をしています。
これが村田製作所製。
村田製作所は電子部品のトップメーカーで、特に超小型積層セラミックコンデンサでは世界一のシェアを誇っています。

さらにGPS機能のための三軸電子コンパスは旭化成エレクトロニクス製。
液晶タッチパネルもシャープ製でした。
そもそも液晶ディスプレイ、タッチパネルが実現できたのは、ノーベル化学賞を受賞した白川英樹博士が導電性プラスチックを開発してくれたからです。
液晶ディスプレイを光らせるLEDバックライトだって、日亜化学の中村修二博士が開発してものですしね。

どうです?意外と知らないことばかりでしょう。
日本の技術の素晴らしさが分かってきましたか。
こんな風に日本の技術はすごいんだ、日本人の技術力はスバラシイ、と言ったことを子どもたちに伝えていきたいんです。

震災の影響で、直接的に被災しなかった工場も、輪番停電の影響で十分稼働できていないようです。
そのため世界中で日本からの部品が途絶えてしまって困っているんです。

(iPhoneに使われている部品については、新潮社PR誌『波』'11.04阿部和重「幼少の帝国」を参照しました)。


XFELプロジェクトは3月末にファーストビーム成功しました!
http://www.riken.jp/r-world/info/info/2011/110329/index.html
XFEL棟空調設備について、設計した日建設計さん、施工した三機工業さんとともに、空調衛生工学会の技術賞に応募したところ、みごと受賞決定!
電気設備学会にも、日建設計さん、きんでんさんと応募し、こちらも受賞確定!
ぼくも子どもたちに誇れる技術者でありたいと思っています!

2011年4月3日日曜日

人生の法則


こんにちは

先週3/27~29にかけて、春休みを利用して、溌貴君を神戸と播磨へ連れて行きました。
ホントは家族で旅行するつもりでしたが、直前に峻貴君が水疱瘡(天然)になり、晶ちゃんと共にお留守番になってしまったんです。
ぼくと溌貴君とで男二人旅となったわけです。

ぼくが播磨でのXFEL計画に参加した6年前、溌貴君は生まれました。
試験加速器SCSSのための変電所工事を一所懸命しているとき、額から流れ出た汗をいつもの首タオルで拭きました。
そのタオルも溌貴君の肌着などと一緒に洗濯していたものですから、顔をぬぐうとき赤ちゃんだった溌貴君のあま~い匂いがタオルからしました。
そんなことを覚えています。

1年後、実用機である8GeV-XFELプロジェクトが始まり、引き続きぼくは建屋建設のメインを仰せつかりました。
プロジェクト期間は5年間。
プロジェクト完成の時、溌貴君はちょうど1年生になる年。
ぼくは、「よし、この仕事を一所懸命やって、完成するときにはっちゃんに見てもらうぞ」と決心したんです。
その夢が実現しましたよ。

XFELプロジェクト開始の1年後には次世代スパコンプロジェクトも始まり、そちらにもぼくは誘われました。
スパコン建屋建設も同時並行で情熱を傾けて造ってきました。
それも家族に見てもらいたかったんですよ。

ちょうど溌貴君をXFELへ連れて行った日、3/29にXFELファーストビームが出たことのプレス発表も行われました。
http://www.riken.go.jp/r-world/info/info/2011/110329/index.html
非常にラッキーでしたねー。
タイミングもバッチリです!

皆さんお仕事中にも拘わらず、行く先々で溌貴君は歓迎してもらい、かわいがってもらいました。
感謝です。
それもぼくがこれらの仕事を一所懸命やり、それなりに貢献してきたからだと、自負しています。
がんばって結果を出せたから、みなさんから歓迎される。
誰かの役に立ち、喜んでもらうから、みんなからもよくしてもらえる。
それが人生の法則なんです。
そんなことも溌貴君に伝わればいいなーと思ったんです。