2013年7月30日火曜日

真似をしろ、楽をしろ、だから好きなことができる!

オーム社のPR誌に寄稿しました! 
http://www.ohmsha.co.jp/bulletin/
2013年 VOL.49 夏号 
 
この稿料で、我がスタッフたちにメヒカリ唐揚げをふるまう。
めでたし、めでたし!

2013年7月28日日曜日

読み書き計算はどんどんやれ

読み書き計算はとても重要な技術。
これなしに、勉強は進みません。
その意味で読み書き計算は「道具」なんだと思います。
よい道具を持つからよい仕事ができるのです。

読み書き計算がしっかりしていれば、楽に楽しく勉強をすることができます。
だから、読み書き計算は学校の進度より少し早く習得させちゃうのがいい。
読み書き計算を先行して習得しておけば、学校で教科書をスラスラ読めるはずです。
国語、算数、理科、社会、どんな教科でもスラスラ読める。
計算もスラスラできる。

そういう状態になっているから、学校の授業の内容に没頭できるのです。
問題解決学習や話し合い学習に、集中して参加できる。
難しい問題に取り組もうという気が起きるわけです。
だって、教科書をスラスラ読めないのに、もっと難しい問題を考えるだけの余裕を持てるわけがないじゃないですか。
算数のつるかめ算や旅人算など難しい問題も、問題文をスラスラ読め,意味が分かり、さらに計算がスラスラできるから考える気も起きる。
そして、考えることの面白さも体験できるんです。

読み書き計算の勉強は、学校じゃなくてもできます。
家で、一人でもできる勉強です。
わざわざ学校で大勢の子どもたちが集まってやるようなことじゃないんですよ、そもそも。
もちろん小学校低学年のうちは、一人ではできないでしょう。
でも低学年の読み書き計算なら、親がつきあってやることができます。
分からなければ,教えてやることだってできる。
低学年であれば、学年×10分ないし20分間程度の時間なら,親もつきあってやれるのではないでしょうか。
小1で10分か20分、小2で20分か40分。
ダイニングで家事などやりながらでいいから、つきあってやる。
そうやって、家での学習習慣を定着させるのがいい。

家での勉強が習慣になっていると、小4くらいになれば、漢字練習はドリルなどを使って自分一人で進めることができるようになります。
小5にもなれば、参考書を自分で読んで、計算のやり方を身につけていくことだって大丈夫。
親の手からも離れていきます。
高学年になったら、学年×20分間なんて、親もとてもつきあっちゃいられませんしね。
基礎的な勉強、一人でもやれる勉強は家でやる。
それも、自分のペースで無理なく先へ先へと進めていく。
そうすると、学校の授業で解放されるようになるんです。

学校の授業は大勢の子どもが集まってやるものです。
だから、大勢の子どもがいることを活かした勉強をする方がいいですよね。
大勢でやる勉強、それは「議論」です。ディベートです。
一つの問題をみんなであれこれ議論しながらワイワイとやる。
これはめっぽう面白いですし、アタマも鍛えられます。
その前提が,読み書き計算の十分な訓練なんです。

夏休みも読み書き計算!

夏休みでも、はっちゃんとんたんは毎日、学年×20分程度の勉強をしています。
朝と夕方に分散してやっています。
今週は海水浴へ家族旅行に行きましたが、ホテルでも当然やりました。

毎日のメニューはだいたいこんな感じです。
 
朝 
はっちゃん 30分間くらい
・4年生の漢字ワーク 毎日2文字(下村式ワークを使用)
・3年生のかけ算ドリル 毎日4ページ(くもんの苦手克服シリーズを使用)
・4年生の割り算ドリル 毎日4ページ(くもんの苦手克服シリーズを使用)
 
とんたん 10分間くらい
・1年生の漢字ワーク 毎日1文字(下村式ワークを使用)
・平かなカタカナドリル 毎日2ページ(くもんの苦手克服シリーズを使用)
・足し算、引き算ドリル 毎日2ページ(くもんの苦手克服シリーズを使用)
 
はっちゃん 30分間くらい
・日記 毎日200文字
・音読 毎日5~10分間の分量(今は野口芳宏『言葉と作法』を主に)
・辞書調べ 毎日1ページ6文字
 
とんたん 10分間くらい
・絵日記 毎日1行か2行
・音読 毎日2~3分間の分量(今は野口芳宏『言葉と作法』を主に)
 
少しずつでも毎日続ける。
やることも「読み書き計算」だけ。
だって、小学生は「読み書き計算」を習得するべき年代ですから。
繰り返し、コンスタントにやらなくちゃ。
 
カーネギーメロン大学教授でロボット工学の世界的権威である金出武雄さんはこう言っています。
 
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私は、子どもの教育の基本は「読み・書き・ソロバン(計算)」だと思っている。
読み・書き・計算は、すべての学科、さらに言えば思考、記憶力の基本の基礎である。
基本は繰り返しやることで身につくものであり、近道はない。
脳の中にチャンク(塊)ができて初めて基本として身につき、応用することができる。
そのためには、ニューロンの発火を何回も何回も繰り返す必要があるのだ。
『独創はひらめかない』日本経済新聞出版社128p
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金出さん自身、子どもの頃から徹底的に暗記していたそうです。
教科書を丸暗記。
何度も何度も繰り返して練習。
それが知的体力を向上させる王道だって言います。
 
インターネットの時代になって、知識はネットで調べればいい、と言われています。
何もあれこれ暗記する必要はない。
記憶は人間よりコンピュータの方が得意だってね。
 
それは確かなんですが、条件が付きます。
枝葉末節の細々した知識はネットで調べれば十分、ということです。
根になる知識、幹になる知識は,ネットでは調べられないのです。
ネット時代になって、読み書き計算を基本とする基礎知識が、より重要でより価値を持つようになったのです。
 
なぜなら、ネットで検索すると、表示されるのは文字情報です。
表示された文章を素早く読み,理解する必要があります。
正確に理解するために、要約を自分で書いてみる必要もある。
そこには数式も出てくるかもしれません。
自分でその数式を追って計算する。
読み書き計算の力なしに、ネットで調べることなんかできないのです。
 
だから、読み書き計算の技能を、それが習得しやすい小学生のうちに徹底する。
ただし、闇雲に勉強させても実になりません。
子どもが覚えやすい方法でやる。
飽きずに繰り返す方法を選ぶ。
 
さらに、新しいことを身につけるには時間がかかります。
短時間に詰め込むことはできない。
分散して,毎日、コツコツとやる。
継続してやる。
 
金出さんはこうも言います。
 
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詰め込み教育はいけないと言うが、頭の中に何もなければ、考える材料を引き出すことはできない。
詰め込むことが悪いのではない。
詰め込み方が問題なのである。129p
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主たる知識、根幹となる理論は,自分の頭の中にないと思考できないのです。
思考する中で不足する知識があれば、ネットで検索したり、本を読んだりすればいいのです。
逆に言えば、主たる知識、根幹となる理論を身につけていない人は、考えることも十分にできず、だからネット検索だってあまりやらないし、やっても面白くない。
本も読まなくなる。
読み書き計算の基礎なしに、決して知識人にはなれないのです。

2013年7月23日火曜日

男の子は中学が大事

男の子は中学が大事。
中学で本気出さないとね。
厳しいことを言うようですが、中学生になったら甘えさせてはいけません。
中学校に入学したら、子どもの時代は終わりなんです。
青年に育てなくてはならない時期です。
今からそんなことも考えているんです。

中学生になっているので、きちんと社会の仕組みを教えるべきです。
中卒で働こうが、高校,大学と進学しようが、学力のない者は社会に出て非常に厳しい生活を強いられます。

中卒で社会に出るつもりなら、進学するよりハードに勉強しなくてはいけません。
もちろん、才能もないとね。
昨年亡くなってしまいましたが、将棋の米長邦雄さんは、子どもの頃から頭もよく、もちろん学校の成績も一番。
でも中卒です。
米長さんはこう言っていました。
「おれは頭がいいから中卒で将棋の世界に入った。アニキは頭が悪いから東大に行った」。
たいした才能もない人は、やはり進学してきっちりと学力を付けた方が有利なんですよ。

でも才能のあるなしは、子ども自身が決めることです。
親がつべこべ言ったり、無理にあきらめさせるのはよろしくない。
中学生くらいになれば、自分でうすうすでも才能のあるなしが分かるはずなんです。
分からないという子は,たぶん「逃避」しているだけなんですよね。

我が子たちが中学に入学したら、まず高校に行く気があるのかどうかを確認したいと思います。
「義務教育」の意味も教えたい。
義務教育の義務とは親の義務のことだ。
中学まで卒業させるのは親の義務だが、高校以上はちがう。
自分がどうしたいか、だってね。

中卒でいいと言うなら、中学ではクラスで1番になれるくらい勉強しなければいけない。
勉強と平行して、自分のやりたいことにも熱中する。
覚悟を持って3年間を過ごしなさい。
自分の才能に自信があり、高校へ行く気がないなら、中卒で独立する(家から出る)。
家を出るときに、無一文ではアパートも借りられないだろうから、100万円は援助しよう。
そのお金でアパートを借り、仕事の収入があるまでのつなぎにしなさい。
それ以上の援助はしないからね。

もし、高校に行くなら家にいてよい。
学費も出してやるし、飯も食わせてやる。
ただし、高校へ行って意義ある勉強ができるように、中学でもほどほどに勉強しなくてはいけないよ。
何,それほどたくさんやる必要はない。
中1なら毎日2時間やれば十分だ。
普段は英語と数学だけやり、中間テスト、期末テストの前1週間は他の教科もやる。
テスト前は3時間くらいはやれ。

2013年7月17日水曜日

プロエンジニアの心得三ヶ条 その4

ぼくはずっと、プロフェッショナルでありたい、と思って仕事をしてきました。きっと皆さんも同じでしょう。
では、プロって何でしょうか。
皆さんはどう思いますか。
ちょっとノートに、プロとは何かを、ズバリひと言で書いてみていただきたい。1分間でどうぞ。

はい、1分たちました。
では聞いてみますよ。
あなたはどう思いましたか。

「自分の仕事にプライドを持って取り組む」

なるほど。
この方の意見に賛成の方。
おお、いらっしゃいますねー。

あなたはどうですか。

「責任感を持って仕事する」

素晴らしいですねー。
賛同する方?
たくさんいらっしゃいますね-。
素晴らしい。

ありがとうございました。
ちょっと抽象的だったので、少し具体的に○×問題にしてみましょうか。

 プロは完璧を目指す
  ○ or ×

さてどうでしょうか。
ノートに自分の考えを、○か×、書いてみてください。

○と思う方、手を上げてください。
ほぼ2/3くらいですね。

×と思う方?
数人いらっしゃいますねー。

手を上げない人もいますね。いけませんねえ(笑)。

ぼくの考えはこうです。

 ×

NK設計さんってご存じですよね。
日本で一番優れた設計会社です。
20年前、ぼくが理研に入って最初に造った大規模研究棟の設計はNK設計さんにお願いしました。
その当時、ぼくも純真でしたから、NK設計のエンジニアはきっと完璧な仕事をしてくれるんだろうと思っていました。

ところがまったく違ったんです(会場、爆笑)。
ちっとも完璧じゃない。
えー、なんでもっとちゃんとやってくれないの?と思いました。

ちっとも完璧じゃない、でもダメでもないんです。
仕様通り、基準通り、図面通り、押さえるところは押さえている。
ギリギリ合格点は取っているんです。
だから発注者として文句は言えない。
何となくモヤモヤするんですが、もっとやってよとは言えない、言わせない。
ああ、これがプロってものか、とわかりました。

東工大工学部教授だった今野浩先生は、こう言っています。

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工学部における有能さの条件は、“拙速”である。
100%完璧を期すと100時間かかるが、95%で良ければ50時間で済むような場合、100%ではなく95%を目指し、残りの5%は問題が指摘されたときに追加・修正する。
これが拙速の意味するところである。
今野浩『工学部ヒラノ教授と七人の天才』より
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学生だった頃を思い出してください。
テストで、小学生なら100点を狙って100点を取ることができたでしょうが、中学生以上になるとなかなか100点は取れません。
100点を取ろうとすると、細々とした枝葉末節まで勉強しなくちゃなりません。
するとものすごく長い時間勉強しなくちゃならなくなる。
80点、90点でよいなら、さほど勉強時間は必要ないのです。

仕事も同じだと思うんですよ。
時間は無限にはありません。
完璧にやろうとするから、細々としたどうでもいいことまで、長い時間かけてやらなくちゃいけなくなる。
80点、90点、合格点を取ればいいんですよ。

ぼくらエンジニアは、右手で理想を、左手で金を握っています。
金というのは資源ということです。
お金、時間、人。
それらは有限なのです。現実ですね。
理想を持つことは大切ですが、現実も大事。
両者のバランスが重要。

先進国の労働者の、労働時間あたりのGDPのグラフを見てください。
労働生産性ですね。
日本はアメリカの2/3しかありません。
あのちゃらんぽらんなイタリアーノより低いんですよ(会場、笑)

これは日本の労働者が完璧主義だからだとぼくは思います。
必要以上に完璧を求め、長時間労働をする。
必要以上の完璧を目指すと、枝葉末節にかける時間が長くなります。
枝葉末節はお金になりにくいんですね。
それで労働生産性が落ちているんだと思うんです。

アメリカなどは、割り切りがいいんでしょう。
合格点は確実にきちんと取る。
でも完璧は求めないんです。
合格点を取るためには、大筋、根幹部分はきっちり押さえておかなければいけませんよね。
大筋、根幹はお金になります。
顧客は、大筋、根幹がしっかり出来ていればちゃんと支払いをします。

社員が完璧を目指して長時間労働をする。
残業もたくさんする。
経営者側からすると、金にならない仕事をしている、と見えるわけです。
それでも残業代は支払わなくちゃいけない。
ブラック企業じゃないからね(笑)。

長時間労働は、皆さん自身も疲弊させます。
健康を害することもあるかもしれません。
病気にでもなったら、ご自身も、ご家族も、会社も、社会も困ります。
損失です。

だからぼくは「拙速主義」です。
完璧主義は、怠惰の隠れ蓑だと思っています。
そして定刻主義。
期日までにきっちりと合格ラインは押さえる。
それがプロフェッショナルの仕事の仕方だと思っています。

ただね、合格点ぎりぎりじゃあ面白くありません。
それは「よい仕事」とは言えない。
ぼくは発注者監督員の立場ですから、やはりエンジニアのみなさんによい仕事をしてもらいたいわけです。
だから、プロにあと+10%の力を出してもらう、ことを狙います。
完璧は求めませんが、あと1歩か2歩、10%の力を出してもらいたいわけです。
そのための条件を整えるのが、発注者監督員の最大の仕事だと思っています。

仕事の楽しみは以下です。

・お金がたくさんもらえる
・腕が上がる
・仲間が増える

このどれかが満たされれば、プロのエンジニアは力を出してくれます。
ぼくの立場では、お金をだくさん出すのは難しいですが、少なくとも相手に損をさせないようにコントロールはします。
仕事のムダは、ほぼ二度仕事、二度手間によって生まれます。
スタッフが二度仕事をしないよう、配慮してきました。

プロのエンジニアの皆さんだって、合格ギリギリの仕事ばっかりやっていたら面白くないはずです。
時には全力を出したいと思っているはずです。
腕を上げたいと思っているはずです。
良い仲間と仕事をしたいと思っているはずです。
ぼくは発注者監督員として、ここに配慮してきたつもりです。
プロの人たちにあと10%いい仕事をしてもらうために。

2013年7月15日月曜日

変人に育て!

先日、鳥取環境大学で講演しました。
参加は理科教師を目指す学生さんたちです。
講演後の質問で,こんなことを聞かれました。
関口さんはお子さんをどんな風に育てていますか そうですねー、「変人」に育ててますよー。 変人とはいい意味ですよ。 人と違うことを考える、正しいことだと思ったら人と違うことでもやりとげる。 そういう勇気を持った人間です。 で、ぼくは変人になるにも「実力が必要だ」と思っているんです。 みなさんも中学や高校の頃のことを思い出してみてください。 同じことをやっても、それが許される人と、許されない人がいたでしょ。 人と違うことをやるためには,ある意味「資格」が必要なんですよ。 周りの人からの信用度とか期待感とかですね。 信用や期待のない人は、ちょっと違うことをやろうとすると、周りの人は何か災いが起こりそうな気がする。 だから、止めろ!と言う。 ところが信用や期待がある人が、ちょっと違うことをやろうとする。 周りに人にはそのことがよく理解できないかもしれないけど、信用や期待があれば,少なくとも邪魔することはしないんだよね。 あー、あいつなら仕方ないやって思う。 昔だったら、旧制高校の学生がお酒を飲んで騒いだり、ちょっとくらいやんちゃをやっても、周りの人はそれを許したでしょ。 むしろ好ましいとさえ思ったわけです。 これは社会人になっても同じだよ。 活躍している人ほど、制限が少ない。 人と違うことをやっている。 でもたいていはうまくいくから、信頼されている。 あー、あの人なら大丈夫だろう、ってね。 変人が変人でいられるには実力が要る。 実力のないダメな人は周りが,社会が変人にさせてくれないんだ。 きまりきった窮屈な生き方しかさせてもらえない。 だから我が子たちも、必要なことはしっかりと鍛えています。 今はまだ幼いから、読み書き計算かな。 宿題はもちろん、先取り勉強もやらせています。 家のお手伝いも毎日やらせている。 だからといって、勉強ばかりさせてはいませんよ。 勉強時間は、学年×20分程度。 小3の長男は1時間、小1の次男は20分くらいですね。 この時間きっちりやったら、あとは自由時間。 好きなことをとことんやる時間に充てる。 好きなことをとことんやるときは、集中してやることが大事。 集中するためには、宿題とか気がかりなものを残しちゃいけない。 やるべきことは手早く終わらせている。 だから好きなことに没頭できるんですよ。 好きなことにのめり込むことなしに、変人への道は拓けません。 好きなことにのめり込むには、本を読んだり、誰かに話を聞きに行ったり、どこかへ出かけたり、手紙を書いたり、いろんなコミュニケーション技術が必要です。 その基礎が、読み書き計算。 技術もなしに、好きなことにのめり込むことなんかできないんですよ。 ぼく自身も変人でありたいと思うわけです。 親が実践していないのに、子どもはそう育てられないじゃないですか。 だから日々勉強です。 勉強して腕を上げ、おれのやることを邪魔する奴らをぶった切る! あははははは。

2013年7月11日木曜日

プロエンジニアの心得三ヶ条 その3

引き続いて「京」コンピュータの特徴や、諸外国のマシンとの違いについて説明。

アメリカはずっと世界トップマシンを造り続けている。
それはアメリカのスパコンは国防技術だからだ。
一番の利用は核開発。
アメリカは爆発させるまでの核実験はやらないが、臨界前実験という爆発寸前までの実験は続けている。
臨界前実験でデータを収集し、そのデータをスパコンで計算するのだ。

現在世界1の中国の天河2号も、人民解放軍国防科学技術大学なんて物々しい場所に設置されている。
中国のスパコンは国家の威信のために作っている。
今のところ実用性は二の次のようだ。

それに比べると日本の「京」は平和利用。
純粋に科学技術のために使われる。
産業利用も積極的に受け入れており、日本の企業の新製品開発のためにも使ってもらっている。
多様な研究ニーズに応えるため、あらゆる科学技術計算において高性能が発揮できるように設計されている。
単純なスピード計算では4位になってしまったが、今も実用性という意味では世界一と言って良いだろう(多少、負け惜しみだけどね。笑)。

ところで皆さんは、平成21年11月13日のことを覚えているだろうか。
この日は金曜日だった。13日の金曜日。
なんか嫌な日でしょ。

答えは「事業仕分け」が行われた日。
13日の金曜日なんてうまい日を選んだもんだ(笑い)。
おかげでぼくは忘れられない日になった。
皆さんも「2番じゃダメなんですか」っていうの、覚えているでしょう。
流行語大賞をその年、取ったんでしたっけ?

事業仕分けでは「スパコンをアメリカから買えばいい」なんてことも言われた。
確かにアメリカのスパコンはすごい。
自前で開発するより買った方がコストは安く上がるだろう。
でもアメリカのスパコンは国防技術。
国家の安全保障上、トップクラスのスパコンを売ってくれるだろうか。
たぶん、そうはならないだろう。
売ってくれるとしたら、二番煎じのものになってしまうのではないか。

スパコンを開発することは、単にコンピュータ技術を向上させるだけではない。
その周辺技術、半導体技術、通信技術、電源技術、冷却技術、そしてぼくの担当した建築やインフラ技術。
これらの周辺技術もトップレベルじゃないとスパコンは開発できないのだ。
トップのスパコンを開発することは、これらの周辺技術をも引き上げていくことになるのだ。

スパコンは総合技術の集積なのである。
今やスパコンを一から造れる国は日本とアメリカだけである。
つまり総合技術を持つ国は日本とアメリカだけ。

これに中国はまだ追いついていない。
中国の天河2号のCPUはインテル製、つまりアメリカ製だ。
ヨーロッパ諸国もこれまではスパコンは買えばいいというスタンスだったが、このことに気づき自前での開発にシフトチェンジしつつある。

日本がこれからも技術立国として存続していくために、スパコン開発は継続させる必要がある。
トップマシンを開発するということは、すごく意義のあることなのである。

  技術とは、
   お金では買えない時間と、
    これまたお金では絶対に買えない経験とが
     積み重なって初めて結実するもの by KEK多田将

ぼくも「京」のインフラの仕事で、電気設備学会賞、コジェネ大賞、空調衛生工学会賞をいただくことができた。
建築インフラ技術分野の向上のためにわずかでも貢献できたんじゃないかと思う。

プロエンジニアの心得三ヶ条 その2

夜中に、カサコソという音がして目が覚めた。
照明を付けると、ゴキちゃんが遊んでた。
あー、今年もホイホイの季節になったか-。買ってこなくちゃ。
おかげですっかり目が覚めちゃったぞ。
目が覚めちゃったんで、先週やった講演のことでも書いておこうか。

最初は理研の紹介をちょこっと。
理化学研究所以外に「りけん」の名を聞いたことがある人もいるだろう。
リケンのワカメスープとかね。
理化学研究所は大正6年に設立された、日本で最初の自然科学の総合研究所で、もうすぐ設立100年になる。

戦前(太平洋戦争前)は、研究によって生み出された成果、発明を企業化していた。
理研が発明したものは、ビタミンAとかアルマイトとか現在でも使われているものが多い。
そしてその収益によって、また研究をしていたのだ。
その頃の企業が今もリケンの名を残している。
ワカメスープは理研ビタミンという会社。ビタミンA製剤を作っていた会社だ。新潟で地震があったとき、リケンというピストンリングを製造している会社が被災したため、世界中のエンジンメーカーがエンジンを作れなくなってしまった。その会社も戦前の理研で発明されてピストンリングを製造していた理研ピストンリングという会社だ。
コピー機のリコーも、元々は理研感光紙という会社で、設計図によく使われていた青焼きの紙を製造していた会社。
皆さんもお世話になったかと思うけど、オカモトリケンというコンドームのメーカーもそう。
で、笑いを取って、つかみはおっけー。

続けて、現理事長である野依先生について。
野依先生がどんな業績によってノーベル賞をもらったか、ご存じか。
有機化合物の不斉合成の発明である。
有機化合物には同じ分子式だけど、光学的な異性体が存在する。L型とd型。高校の化学で習ったと思う。
人間や生物体の中で使われる有機分子は、L型だけ。d型は受け付けない。
たとえば、ミントはL型は爽やかな味と香りだけど、d型は苦くて食えたもんじゃない。
普通に化学合成すると、L型とd型が等量ずつできてしまう。
これでは使えない。
分子式が同じなので、分離も難しい。

野依先生が発明したものを、ぼくらは毎日のように口にしている。
たとえば歯磨き粉に入っているミント。ハッカの味だね。
ミントは今やほとんど全部が合成されたものになっている。
昔はハッカを、北海道北見とかで栽培して、そこから抽出していた。
製造に手間暇かかったので、高価なものだった。
野依先生はL型だけを合成する触媒を発明したんだ。
ミントも触媒によってL型だけを工業的に合成できるようになった。
合成香料と言うが、野依先生のおかげで日本は合成香料の分野で世界シェアトップなのだ。

皆さんは缶コーヒーをよく飲むだろうか。
ふたを開けたときのコーヒーの香りがナイスだ。
だがこの香りも合成香料。本物のコーヒー豆は、一缶あたり数粒しか使用していないそうだ。
L型を合成する技術は、医薬品にも応用されている。

このように野依先生の発明は、非常に役に立っている。
野依先生はもともと工学部工業化学の出身だ。
その意味でぼくは野依先生をエンジニアだとも思っている。

理研は研究だけをしているのではない。
世界トップの実験施設を、日本の研究者に提供している。
研究インフラを提供することも、理研の重要な役割なのだ。

科学の知識を用いて仕事をしている人が科学者である。
科学者は、大きく研究者と技術者に分けられる。
研究者の仕事は、夢を見つけること。
技術者の仕事は夢を実現すること。

ぼくは技術者である。
ぼくがこれまで理研で造ってきた施設。
和光RIBF加速器。
横浜NMR施設。
播磨XFEL「SACLA」。
そして神戸スパコン「京」。
これらの施設は、世界トップクラスの研究インフラを日本の大学や研究機関の研究者、企業の研究者に提供するものである。

その意味で、「技術が科学を発展させる」という自負を持って仕事をしてきた。技術がなければ科学の発展もないのである。
ガリレオが地動説を確立できたのは、望遠鏡の発明によってである。
望遠鏡という技術がなければ、ガリレオは科学的発見をなすことができなかったであろう。
ガリレオがすごいのは、その望遠鏡を天に向けたこと。
望遠鏡は地上にある遠くのものを見るために発明されたのだろうが、それを使って月や惑星を見ようと思ったのはガリレオ以外いなかった。
技術を思いもしなかったことに使う。
それが大発見の原動力なのだ。

2013年7月10日水曜日

プロエンジニアの心得三ヶ条 その1 

先週末は大手ゼネコンさんに呼ばれて、「プロエンジニアの心得三カ条」というタイトルで講演してきた。
主に設計部門の160名が対象。
構造設計、意匠設計、機械設備設計、電気設備設計、施工監理のエンジニアたち。
新入社員から役員クラスまで。
すべての人に楽しんでもらえて、少しでも役に立つ話をしたいと思った。

建築エンジニアの人たちに、何をポイントに置いて話したら役に立つかなあと考えた。
建設業は古くからある業態なので、働き方もちょい古いところがある。
遅くまで残業したり、根性で仕事をしたりね。
そこいらへんを、みんな何とかしたいと思ったいるはず。
でも言葉に出来ない。
言葉に出来ないから行動に移せない。

こういう業界では成果よりも、苦労だとかがんばりの方が評価されている。
もちろん成果も大事にはされているんだろう。
でも、同じ成果ならより苦労した方が評価されてしまう。
それって間違っていないか。
同じ成果なら、同じ評価だろう。
あるいは、同じ成果を得るのにより短時間に省コストで実行できた方が評価されるのが本当ではないだろうか。

また、少しでもよいものを造りたいということで、過剰な仕事をしていないだろうか。
よいものを造るのは当然なんだけど、必要以上に良くする必要があるのかどうか。
顧客が、世の中がそれを求めているのかどうか。
もしかすると自己満足のためだけに、余分な仕事をしているのではないだろうか。

ダメ上司ほど完璧を求めるんだよね。
部下の作った仕様書や図面をチェックし、不足するところ、ミスしているところ、改善するところを指摘する。
それ自体は正しいことだが、必要以上にチェックを入れ、やり直しを命じていないだろうか。
上司は経験が長いのだから、部下の気づかないことも気づいて当然だ。
でもそれはやり直しが必要なほどのミスだろうか。
もしかしたら自分の権力をふるうためだけに、部下の細かなミスを見つけ、やり直しを命じていないだろうか。

くだらない上司の下では、くだらない部下が育つ。
細かな枝葉末節ばかり指摘されていると、本筋より枝葉の方が重要に思ってしまう。
真面目な人ほど上司の意向に沿いたいと思うだろうから、重箱の隅のために長い時間と自分の労力を使い果たす。
こうして本筋と枝葉の区別、軽重のわからないエンジニアが育つ。
そしてこの人が上司になり、また部下の仕事にくだらないいちゃもんを付ける。
一番くだらないのは、テニヲハばっかり、テニヲハしか指摘しない上司だね。

有能な上司であれば、部下がその仕事に着手する前に、重要ポイントとゴールとすべき品質について、あらかじめ説明するなり、以前の同様の仕事をサンプルとして提示するなりするはずだ。
そして部下の仕事が重要な点がしっかり抑えられており、十分合格ラインに達していたならそれでよし、とする度量が上司には必要だ。
合格とした上で、上司の気づいた細かな点も指摘してやれば良い。
これは次の仕事から気をつければよい。
わざわざやり直させる必要はないのだ。

もちろん部下も有能なら、合格をもらったからといってそれでよしとしないに違いない。
上司に指摘されたところも自分でちょこっとやってみるはずだ。

やたらに完璧を求めることが、長時間労働を必要とし、残業代をたくさん支払わねばならず、生産性を落とし、会社の利益率を下げてはいないだろうか。
それが顧客にも高コストの負担を強いている。
誰もハッピーになっていなじゃないか。

常態化している長時間労働は、長期的に見ても会社の利益を損じる。
なぜなら社員が育たないから。
時間的余裕を奪われた社員は、仕事を楽しむことができない。
つまらない仕事に対して人が求めるのは、お金しかなくなる。
残業代を稼ぐ以外楽しみのない社員は、だらだらと低い生産性で働く。
そんな働き方をしていたら、何年仕事をしていてもスキルは上がらない。
会社は無能社員を育てているに等しいのだ。

集中して、熱中して働くから腕も上がる。
腕が上がれば、仕事は面白くなり、短時間にこなせるようになる。
時間に余裕が出来れば、心にも余裕が出来る。
心に余裕があれば、新たなことにもチャレンジしていく意欲が湧く。
それがまた腕を上げ、仕事を楽しくしてくれる。

よし決まった。
公演のコンセプトはこれだ。
少々過激だが、エンジニアの心に突き刺さるはずだ。
過激なものを過激なまま提示しても伝わらない。
話を聞いてもらうだけではなく、やりとりも交えながら、面白おかしく話すことにしよう。

2013年7月7日日曜日

七夕のひみつ

今日は7月7日、七夕です。
すでに梅雨が明けちゃったようですが、今晩は曇りで星空を見ることはできません。
平年は7月7日はまだまだ梅雨の真っ最中。

7月7日に星空を眺めることなんか滅多にできません。
なのになぜこの時期に七夕なんでしょうか。

現在は新暦(太陽暦)を採用しています。

実は七夕は本来、旧暦(太陰暦)の7月7日の行事なんですね。
今日は旧暦では5月29日
空を眺めるには適しない時期なんですよ、まだ。

今年は8月13日が本当の七夕の日なんです。

太陽暦で8月13日が、太陰暦の7月7日なのです。
太陰暦なので、月の形と関係があります。

太陰暦は月が新月から新月になる期間、だいたい29ないし30日を1ヶ月としていました。

月初めは新月、15日目が満月、そしてまた月末が新月。
これを繰り返しています。
なので、太陰暦での7日は半月、それも上弦の月なんです。

夏は天の川がよく見える季節です。
旧暦の7月7日には上弦の月が天の川あたりに見えます。

七夕の伝説に、彦星と織り姫星のお話があります。

彦星と織り姫は恋人同士なのですが、天の川の両岸に離ればなれに住まわされています。
普段は会いたくても会えないのです。
でも、年に一度7月7日だけは会うことが許されています。

7月7日、月は半月、上弦の月ですから船のように見えます。

その船が天の川に浮かんでいて、ゆっくりと天の川を渡っていくように見えるのです。
その船に乗って二人は会うことができるわけです。
おや?月の船に乗るのは織り姫?彦星?

味方を増やす方法

こんにちは

はっちゃんの先生が、日記にこんなコメントを書いてくださいました。

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はつき君へ
きのう島田先生がとってもよろこんで私のところに来ました。
「今まで落とし物をたくさん拾ったけれど”ありがとう”って言いに来てくれたのは溌貴君だけだ。だから嬉しかった。これからもたくさん応援します」って。
いいことをしたね!見つかったらそれでお終いの人が多いのに”ありがとう”って言えるって素晴らしいこと。その気持ちを忘れないこと。そしてあなたに応援する人がまた一人増えたこと。それでまたばんばれるね。
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嬉しいですねー。
良い人生を送るためには、応援してくれる人を増やすこと。
そのためには感謝の気持ちを忘れないこと。
気持ちだけじゃダメで、ちゃんと口にすること。
ぼくもそうありたいと思いました。
Thank you、はっちゃん&先生!

2013年7月6日土曜日

夏休みの自由研究ネタにも最適!

宮内さんら理科教師仲間でつくった本が出版されました。
下巻は、理科教材、実験、ものづくりが具体的に取り上げられています。
学校の先生だけじゃなく、子どもの夏休みの自由研究ネタに困っているお父さんにも最適です!
http://www.amazon.co.jp/dp/4892945188/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1373100016&sr=8-2&keywords=%E7%90%86%E7%A7%91%E3%81%AE%E3%81%97%E3%81%94%E3%81%A8%E3%81%B0

2013年7月4日木曜日

書くことが頭を鍛える

出前授業に行ったとき、各クラスの授業もちょっと見せてもらった。
若い先生のクラス、きちんと整理された板書。
しっかりと準備して授業してるんだなーと思った。

ところが、子どもは机上に教科書が置いてあるだけ。
ノートを出していない。
1時間の授業中、一度もノートに書くという活動がなされていないのだ。
せっかくきれいな板書をしたんだから、そのすべてとは言わないが、ポイントとなる部分を写させるなどした方がいいんじゃないか。

毎時の授業の中に必ず「書く」活動を入れるべきだと思う。
そうじゃないと子どもたちに学力が付かないよ。
先生ばっかりが書いていたんじゃ、先生の学力は付くかもしれないけどねー。
だからこの若い先生も、努力の方向が違う。
授業は子どもの学力をつけるために存在するんだから。

先日の大学での講演のときも感じた。
学生さんたちの書く力が弱い。
学問とは読むことではない。
経験、体験することでもない。
書くことだ。
書かねばならん、しかも大量に。
書くためには広く読まねばならん。
書くためには深く考えねばならん。
書くためには意識をクリアにして経験、体験を積まねばならん。
書かぬ者に学問は身につかないのだ。

大学の先生に、不躾にもこんなメールを送った。

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印象なのですが,学生さんたちにもっと強制的に「書く訓練」を課してもらいたいなーと思いました.
学生さんの感想を読んで,ちょっとそれが不足しているように思いました.
学問とは書くことだと思います.
書くことで思考が鍛えられます.
それに書くことは,社会に出て教師になったり,会社や役所でリーダーとなるために必須の技能です.
10分くらいの時間で,400字程度なら楽々書き飛ばせる.
ぜひそういう鍛錬をしてあげてください.

今の若者たちは,スマホなどでけっこうたくさん文章を書いています.
でもスマホだとショートメールになりがちで,ある程度まとまった文章を書く機会があまりないようです.
ある程度まとまった長い文章を書かないと,学力は深まらないのです.
ショートメール、短文では文と文とのつながりがありません。
文と文とのつがなり、すなわち論理です。

論文など1パラグラフは400文字~600文字です.
このくらいの文章量でようやく一つのことを説明できる.
先生のクラスのカードは,感想を書く欄が小さすぎるって思いました.
400文字くらい書ける欄を設けるといいと思いました.
枠を決めることによって育つこともあるからね.

体験,経験も大事ですが,それを文字として書き留めるからこそ,経験を知識化でき,学力として定着させることができるんだと思います.
経験だけではだめなんです.
積み上がっていかない.
後々役に立たせるには,知識化する作業が欠かせません.
そのためには,書くこと,大量に書くことです.
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小学校でも学力の高いクラスをつくっている先生は、とにかく子どもたちにやたら書かせる。
45分授業のうち、少なくとも1/3、15分間は書く作業をさせているのだ。
4年生以上だったら、ノート見開き2ページくらい、毎時書かせている。
文字数にして400文字から800文字程度。
授業の中にこまめにノートに書く活動を取り入れ、結果的にノート2ページくらいを書かせてしまう。
これで力が付く。

我が子小3の長男は、毎日日記の宿題が出る。
土日祝日も必ず書かせている。
お出かけなどして書けなかった日は、翌日に二日分書く。
書くことがあろうがなかろうが、とにかくコンスタントに書く。

しかも短時間に書く。
今は日記帳1ページ200文字を毎日書いている。
これを「5分でやっつけなさい」と言って書かせているのだ。
文章もだらだらと時間をかけて書いてはいけない。
だらだらした活動は脳を育てない。
とにかく短時間に速く書く。

実は、書く作業は実際に書いている5分間ではない。
その準備段階も必要だ。
毎日書く、と決めちゃうと、書くネタを探しておかないといけない。
書くネタを探すということは、普段から意識的、意図的に生活することになる。
5分で書くとなれば、あらかじめ頭の中で構成を考えておく必要が出る。
これがアタマを鍛えるのだ。

教師力を高める の感想文

先日のぼくの鳥取環境大での講演の感想が、学生さんたちから届く。
嬉しいなー。
届けてくださった先生方にも感謝。
って「教師力を高める」ってタイトルだったのか!
知らなかったー。

特別講義 『教師力を高める』関口芳弘先生 感想  プロ研①③(川口担当)

・コンピューターなどに興味のない自分でも楽しく話が聞けた。それに技術があるのだと思って楽しみにしていたが嘘だったので、少ししょんぼり(笑)。自分も将来、勉強に興味のない生徒たちに話を聞いてもらえるような教師になりたいと改めて思った。

・関口さんの立ち振る舞いを見て、見習うべき点が多かったと思う。私の中では、特に、姿に一番のポイントがあると考えている。スーツ等の堅い姿で堅い授業を長々とされるよりも、笑いがあり、誰にでも親しみの持てるような姿で、楽しく一体(生徒、学生と先生が)になってする授業は印象的にも記憶的にも強く残るし、飽きのこないものだと思った。正しい知識を身につけ、堂々と母校の教壇に立てるように頑張りたいと思った。人間味のある方でした

・技術者の目線からの教育のやり方にとても興味を持ちました。授業を技術として見て、教授の授業の進め方の良い点や悪い点などを探ってみると、少しでも授業が楽しくなりました。普段見ていた形が強くなるためや飛ぶためなどのしっかりとした目的を持って、その形を成していると知って、とても興味を持ちました。

・私は今、若葉台のくもんで指導員のバイトをしています。そのバイトのおかげで、バイトを始める前よりも子どもに対しての接し方が分かるようになりました。ほめることの大切さや指示するのではなく、子どもたち本人に「どうすればいいと思う?」などと問うことが大切であると知りました。今日この講義を受けて、くもんの教育法以外の教育法を知ることができました。くもんのバイトでは、多人数の子どもたちの前で話をするとか授業をするなどはないけれど、前に出て話をする時、どのように話せば注目し、生徒が考え、分かりやすく知ってもらえるかなど、知れてよかったです。ありがとうございます。

・科学者の仕事のイメージは、堅苦しくて頭が良いイメージでした。科学者にも技術者と研究者の2種類があって、夢を見つけたり、実現したりできる素敵な仕事だと思いました。関口さんの話は、興味や関心を引くような授業で、魅力的だったと思います。目の前で実験をして、分かりやすい解説と例を挙げて、教師になるための参考になりました。

・今回の講義を通して、教育技術がどのようなものなのか、どんな役割があるのか、ということが分かりました。また、教育とはどのようにあるべきなのかということも分かりました。現在の学校教育がどうあるべきなのかを考えさせられたお話でした。教育する側もされる側も楽しく学んでいくことができる教育が必要だと思いました。

・教育の話にどうつなげていくのか、疑問に思いましたが、最後に質問を投げかけられてとても考えさせられました。

・最初の話を聞いていると、教育には関係がないのではないだろうかと思っていました。しかし、最後になると、理化学研究所についての説明が教育にかかわっていることだと気づかされました。確かに、先生の話を聞く限りでは、子どもに教育をしていると感じることができました。例えば、設問に対して、すぐに答えを提示しなく、我々に聞いて、答えを導く方式を取っていたところや我々に興味を持たせるために実験をしたりするところが教育だと思いました。またこれらが教育の発問技術であることが知ることができました。さらに、教師は子どもに夢を与えるものであると言っていて、最も印象に残りました。

・今日の講義は、とても興味を持つことができ、おもしろかった。前半では、科学や技術についての話を聞き、スパコンのすごさ、またそれを開発する研究者と技術者のすごさが分かった。後半では、“教育技術”の話を聞くことができた。私は最近、ふと、自分が教員になった時、生徒にしっかり教えることができるのかと考えたことがありました。しかし、今日の話を聞き、大学でやるべきことをしっかりやって、基礎知識、教養を身につけていきたいと思った。また、専門の学問を見つけ、それにしっかり取り組み、自信を持って生徒に教えることができるようになりたい。

・講義が始まった最初から、教室内の雰囲気がとても良いと感じた。そして、話が始まってからもっと楽しい雰囲気になった。たぶん、人柄とかも関係してくるのかもしれないが、興味を持たせるような話し方や目の前でやる実験、生徒に考えさせるなど、あっという間に時間が過ぎてしまった。これは教育技術というものが使われているということを知った。正直、大学の講義でここまで話に引き込まれていったのは初めてだったので、これも技術の1つなのかと思った。そして、何か1つでも専門的なことを学んだり、勉強していきたいと思った。あと、ユーモアのある人になりたいと思いました

・今日のお話を聞いて、考えたり確かめたりすることはとても重要なことであると分かりました。科学者あるいは研究者の人たちは、常にこういった行動を起こして、日々活動しておられるのだと思いました。普段、何げなく見ている建物の構造には、形を変えることで様々な可能性を持った部品や技術が駆使されていて驚きました。スーパーコンピューターの「京」は、あまりにもすご過ぎていまいち理解できませんでしたが、そのような素晴らしい技術を持っている日本のすごさを改めて実感しました。

・今までのプロ研で学んできたものとは異なる観点から、新たに教育が何なのかを学ぶことができた。大学で受けている講義とは少し違った様子の授業は高校時代を思い出し、懐かしくもあった。さまざまな観点から、教育について学んできた私たちだが、この授業を受けてまた別の新しい観点を開拓できたのは、大きかったと思う。教育に対する考え方や姿勢だけでなく、それを具現化させる技術も大切なんだと感じた。

・今日の講話を聴いて、発問させるのに2種類のパターンが使われていることが分かりました。たくさん挙げてもらった方が話を豊かにでき、収縮的であれば逆に焦点を絞り込むことができるので、それをどう効率的に使うかが、教育技術の1つになるのではないかと思いました。前段が長かったのは、「技術」とはどのようなもので、どのように使っているのかを示すためだなと思いました。


・今日の講義でより教師という職業に就こうという思いが強くなった。「教師は子どもに夢を与える」という言葉が印象に残った。今日の講義で学んだことをいかして理科に興味をもつ子どもを育てていきたい。

・実験を実際に見せることで生徒(学生)は興味を持つし、質問することで考えたり話し合ったりして色々な発想が出てくる。スーパーコンピュータの技術はすごい技術をもっているのだと思った。大学で学問をしつかりと行い、知識を身につけ、社会に出たときに少しでも役に立つようにしたい。「形が変わると働きが変わる」「形が変わると強さが変わる」形にも多くあり、その中で○や△が強いこともわかった。

・関口さんがやっている仕事の大きさがよくわかった。最初教員をやって塾の講師をして、そして科学者になる。職を人生の途中で変えるのは相当大変で、かなりの意識の強さが必要だと思っている。素晴らしい経験ができた。

・CPUの比較をするなら二世代前のCPUではなく、現行のHaswelbでの比較を知りたかった。消費効果率の差で違いはでるはずと書こうと思いましたが、200年という答えだったので、問題はそんなことではないとわかりました。

・「教育技術」でも「うそ」を言って書かせたりしていたけれども、私としてはこの技術を小・中学校で使ってはいけないと感じた。教師とは、子どもに夢を与える仕事である。そして、夢を実現させるために技術を教える仕事。この言葉に確かにそうだと感じました。私も教師をめざしています。子どもたちに教える以前に自分に技術がなければダメ。これからの大学生活、勉学に励みながら、がんばっていこうと思います。

・理研の方と聞いていたのですが、堅い話を聴くのかと思っていたが、想像していたのと違い、とても楽しい講義になってよかった。拡散的発問や収束的発問など興味深い単語が出てきて、後々調べてみたいと思った。スーパーコンピュータ「京」の話も聴けてよかった。

・純粋におもしろかった。こういう人間力のある人が教師で、出会えると大きく人生観が変わると思う。拡散的発問、収束的発問など、これから大学生活を過ごす上で何をすべきか、かつどのように教師をすべきかといったビジョンが少しはっきりしてきた気がした。

・そもそも展開が意外でおもしろかった。細かい技術のことではなく、拡散的発問、収束的発問という大きなことで、考えがすっきりまとまったと思う。

・今日の授業では前々から興味を持っていた「京」のお話しを聞けてよかったです。自分は教師になるつもりはありませんが、教育技術に関しては、これからの自分のためになりそうなので興味深かった。

・スーパーコンピュータ「京」の存在を初めて知りとても驚愕しました。教育技術の数をわざと多くしてるのも教育技術なのだと思った。これからの講義を受ける時の目が変わると思う。わりと仮説を立てたりするのが好きだったので、とても面白い講演だった。

・今日の講義を受けて、凄い勉強になったと思いました。目の前で実験をするなど専門的なことを教えてくださってよかった。

・関口先生の話の中で、印象深かった言葉は“専門バカでない人はただのバカである”だ。やはり知識があってこその教師なんだと思う講義だった気がする。

・はじめに問題を出し、その後に実験で答えを見せる。それを踏まえまた問題…という流れが、答えを出すために考えがしやすく、また間違えた場合、なぜそうなのかの興味が出て楽しかった。同じ物質でも形の違いで強度が変わるというのはぼんやりとはわかっていたが、実際に見てみることでより理解できた。丸が一番強度が強いことに驚いた。関口さんの“教育技術”というものが興味深かった。今までは、話を聴くだけで曖昧なイメージしかなかったのが、実際に体験し自ら考えることで少し理解できた気がする。

・関口先生からは、自信を持って授業を行い、生徒一人一人に直接聞き、積極的に参加することを再度学んだ気がしました。技術として授業を見る、これから自分もその目線で頑張っていきたいと思いました。



・工夫の大切さを知った。元教員で現在は技術者として活躍されている関口さんの「教育技術」について聴き、将来は先生になりたいという思いが決心へと変わりました。これからは、工夫、考える、発見を大切にしていきたい。

・環境大のどの先生よりも面白くて、考えさせられ、役に立ちました。ありがとうございます。

・実験はためになるし、「京」の話もすごく今後に役立つと思います。たくさんアイデアを出させることの大切さを知りました。

・スパコンが日本とアメリカだけしかできないというのにすごく驚いた。これからも技術を伸ばして、頑張ってほしいと思った。教員とは子どもに夢を与える仕事であるということ、教育技術について考え、今日は本当に為になった。

・今まで科学や物理に触れたことがなかったので、新鮮な講義だった。実験や質問で学生の意欲や関心を引き出そうとしておられた。何より、話が面白く聞き入ってしまった。これから、もっと大学の勉強に一生懸命取り組んでいこうと思った。

・授業がすごく面白かった。面白い授業には様々な工夫と技術があったんだなという驚き、教職への関心など、いろんなことを考えた授業だった。

・1つ1人ではできないことも、創意工夫していくことで少しずつ発展し、できないことも可能になる。教育技術、授業を聴く技術もこれから大切にしていきたい。

・想像し、チャレンジし、失敗しても続けていくということが大切であり、考えることを諦めないことを学んだ。今、学んでいる学問を怠らず、授業をしっかり聞いて、卒業後に生かせられたらいいなと思いました。

・教育技術は先生から教えてもらうことでない、受け身でないことがわかった。そして、自分の知識や技術がまだまだだということもわかった。

・実験や理研について知ることができてよかった。

・紙や道具を使ってわかりやすく説明してくれて、すごくためになり面白かった。一番心に残ったのはタオルをつまんで引っ張ること。なるほど!と思いました。これから、授業で寝ずに頑張ろうと思いました。

・普段なんとなく聞いている講義にもいろいろな教育技術が使われているんだなと感心した。今度からはどのような教育技術が使われているのかという視点で聞いてみようと思います。

・関口先生の話を聞いて、勉強を真面目にしようと思った。知識のない人は教育技術もないという言葉はとても身に染みました。社会人になってオドオドしないためにも、今直面している自己課題をこなしていきたいと思います。
 

2013年7月3日水曜日

三河湾のメヒカリ唐揚げが美味い!

本日勤務後、我がチームのスタッフたちにメヒカリ唐揚げをふるまう。
年に数回だけど、スタッフみんなで美味いものを喰う機会を作る。
それもリーダーのつとめだと思っている。

メヒカリは蒲郡に行ったとき、小田先生に教えてもらったお店から取り寄せた。
タコ、エビの唐揚げも買った。
合計2.4kg、あっという間になくなってしまった。
美味かったー!

http://www.yamasui.net/

2013年7月2日火曜日

教師力を高める

先週は足利先生に呼んでもらって、鳥取環境大へ。
目的は、1,2年生のプロジェクト研究という授業でお話しさせてもらうこと。
教職科目、教員志望の学生さんが多いと言うことで、お題は「教育技術」。

技術者は「夢を実現する仕事」。
教師は「子どもに夢を与える仕事」。
夢を見て、それを実現するには技術を持っていなくちゃいけない。
つまり、徒手空拳じゃダメなんだよ。

だから、子どもに技術を身につけさせるのが教師の仕事なんだ。
技術を持てない子どもは、未来に夢を持つことができなくなっちゃう。
だって、それを実現する術がないんだから。
夢を実現する術を持たない子どもは、夢も持たなくなっちゃうんだ。

技術を伝えるのも技術。
だから教師は技術を持たなくちゃいけないんだ。
技術を持たない教師はクズだ。
技術に対して自覚的になれ。
子どもにどうやったら上手く伝わるのか。
どうやったら子どもに身につくのか。
それはすべて技術があるからできることなんだ。

で、こんな構成にした。
まず、前半はスパコン「京」の話。
いつもサイエンスカフェなどでやっているものを40分くらいに縮めたもの。
いつもの調子で面白おかしく先端技術の話を聞いてもらった。
でもちゃんとこれが伏線になっていて、技術の重要性を理解してもらいたいからこの話を聞いてもらったわけだ。

「京」の話が終わって、最初の発問。

 「ぼくがこれまで皆さんにお話してきた中で、
  たくさんの教育技術を使いました。
  どんな教育技術を使っていたか、ノートに書きなさい。
  時間は1分です。」

1分後、何人かに発表してもらいました。
ほとんどの学生はひとつ書けていましたが、どれも底が浅く、似通ったもの。

 「実はぼくは42個の教育技術を使ったんです。
  今度は机の前後に座っている者同士3,4人で一緒に考えてみましょう。
  時間を5分間とりますから、10個以上見つけて、ノートに書いてください。  さあどうぞ!」。

学生さんたち、以外と仲良く熱心に話し合いに入っていた。
この指示自体が教育技術だね。

5分後、全員起立。
10個見つからなかったグループ、座りましょう。コラッ(笑)。
ちょうど10個見つかったグループ、座りましょう。合格です。
残りは10個以上見つかったってことですね。素晴らしい!
11個のグループ座ってください。
まだ残ってますね。すごいです。
12個のグループ座ってください。
で、最後に残ったグループが13個でした。みんなで拍手!おーーー!!

じゃ、そのグループ、見つけた教育技術をホワイトボードに手分けして書いてください。
3分間でお願いします。
他の人は、書かれたものを見て「これはいい」とか「これは変だ」というものを見つけていてくださいね。

3分後、書き終わった各項目を指し、

 「この中で、これは違うんじゃないか、と思うものを見つけてください」。

書かれた中に「ルックス」というのがあって、大笑い。
これって技術?
学生さんの中から「ルックスは真似できないから技術じゃない」なんて意見が。面白いねー。

もうちょっと議論したかったけど、もうすぐ授業終了時刻。
発問にも技術があることを説明した。

最初に「拡散的発問」をするといい。
とにかくたくさん見つけなさいというの。
アタマから無理やり絞り出すようなことをさせる。
発想を広げてやるんだね。
それを個人でやらせたり、グループでやらせたりする。

さっきぼくは、使った教育技術は42個と言ったけど、実は嘘八百(笑)。
でも数を言ってたくさんあるんだと思うと、あれこれ考えるでしょ子どもは。
それも技術だよ。
嘘は絶対に言っちゃいけない、と思っている人もいるかもしれない。
絶対に言っちゃいけない嘘は、自分の利益のため他人を犠牲にするような嘘。
子どもたちをかしこくするためなら、技術として用いていいとぼくは思う。
ただし、最後にバラしてしまう。
それなら生徒も悪い気はしないものだよ。

で、たくさん無理に絞り出すと変なのも混じる。
どれが変で、それはなぜか。
それを問うのが「収束的発問」。
「拡散的発問」と「収束的発問」を組み合わせて授業する。
そうすると生徒は楽しんでアタマを使い、文字を書き、発言をするようになるんだ。
結果的にたくさん勉強する。
すなわちアタマがよくなる。
技術があるから、面白くて身になる授業ができるようになるんだよ。

だから技術は大事。
これからみなさんも、大学での授業でも技術という視点を持って、講義を受けてみてください。
先生は私たちに何を伝えようとして、どんな技術を使っているのか、想像してみる。
大学の先生にも技術が無い人もいるんだけどね。
それもまた観察してみるといいよ。

で、技術を身につけるには、見つけた技術を言語化してみること。
文字として書いてみる。
言語化できることは、真似ができるんだよ。

技術とは、

  正しい知識の確実な行為化、

だって、ぼくの尊敬する小学校教師野口芳宏先生は言っている。
技術は正しい知識がないとだめなんだよ。
知識があって初めて技術も身につく。

もちろん知識だけじゃダメ。
それを行為化、つまり実際に自分でやってみることだ。
やってみて結果を出す。
結果が出るまでやり通す。
それが正しい実践だ。

だからね、大学でしっかり学んで欲しい。
それは真面目に授業に出席しろってことじゃないよ。
この大学にも面白くない講義もあるかもしれない。
そういう講義は聴かなくてもいい。
出席もしなくてもいい。
落第しない程度にだけど。

でも勉強はする。自分でやる。
講義をさぼって遊んだりバイトしている場合じゃないんだ。
一つでいいから、自分の専門はこれ、というものを身につけて卒業する。

よく、専門バカってバカにする人いるけど、専門バカでいいんだよ。
専門の無い人はただのバカなんだから。
専門があれば、それが自信になる。
教壇に立ったとき、あるいは社会に出たとき、オドオドしなくて済むんだ。

みんなが中学、高校のときのことを思い出してみてよ。
嫌な先生って、無教養で怒ってばかりいたでしょ。
それでいてどこかオドオドしている。
そういう人にはなりたくないよね。

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