2011年10月25日火曜日

努力と運


こんにちは

最近、こんな研究発表がありました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/100824_1.htm
大学受験時に数学や理科を選択した人、つまり理系の人のほうが各年代において平均年収が多い、とのこと。
例えばぼくの今の年齢50歳で見ると、文系の平均年収は700万円、理系の平均年収は830万円と、100万円以上差がついています。

この研究を行った西村和雄教授は「分数のできない大学生」で有名な方ですね。
若者たちに、理系のほうが得だからもっと勉強しよう、とアピールする狙いがある。
年収=能力とすれば、理系のほうが文系より能力が高いって言いたいわけですね。

年収が高いということは、それだけ需要が高いとも言えます。
すなわち、会社、社会から求められている人材。
だから高い賃金が支払われるわけです。

が、一般的に言って、能力が高いから求められる人材になるということもありますが、もう一つの理由もありそうです。
それは「希少価値」。
理系の教育を受けた人間の数が少なければ、能力とは無関係に希少価値が生まれます。
少なくて足りないものなら値段も高くなるのは、経済学の教えるところです。

西村教授の研究では、国公立大学出身者で統計を取ったわけです。
国公立大学だけでみれば、理系学部の人数も文系学部の人数もそう大差ないかもしれません。
が、社会全体の労働者においては私立大学出身者の方が多いでしょう。
そして、私立大学卒業生は圧倒的に文系学部出身者の方が多いはずです。
国公立大学出身者もそれらの人とミックスされて社会に出ていきます。
そうなれば、理系学部出身者との人数比は拡大され、理系学部出身者の希少価値が上がるのではないかと思います。

もうひとつ、理系の人材の価値を上げるファクターがあります。
それは「努力度」。
これはきちんと統計を取った研究を見たことがありませんが、ぼくの観察では理系の人のほうが文系の人よりも努力する傾向が高いように思います。
数学や物理などを習得するためには、地道な積み上げが欠かせません。
大学でも理系大学では実験や演習が多く、計画的な勉強の訓練がなされます。
そういう教育を受けた人間は、社会に出ても同じように行動するでしょう。
地道にコツコツと計画的に努力する習慣。

最近の子どもたちは「理科離れ」をしている、とよく言われます。
それを防ぐために学校では、楽しい実験をやらせたり、科学館に連れて行ったり、いろいろな工夫をしています。
ところがあまり効果がないらしい。
「あー、楽しかったー」で終わってしまうからです。

ぼくは「理科離れ」ではなく、今の子どもは「努力離れ」をしているんだと思っています。
努力ができないから、コツコツと地道に積み上げなければ習得できない数学など理系の科目ができるようにならない。
できなければ嫌いになり、離れていくのは当然です。

話を戻して、理系の年収です。
理系だろうと文系だろうと、仕事をしていく上でやっぱり努力は必要でしょう。
努力する人の年収が高くなるのは当然です。
理系学部出身者はこの努力する習慣を身につけている人が多いのでしょう。
能力とか、数学的思考力とか以前に、努力するから年収も高いわけです。

ところで、一般的な認知としては「文系のほうが収入が多そうだ」と思っている人が多いと思いますが、どうでしょうか。
理系の人のほうが貧乏に思える。
ヒルズ族なんて人たちを見ても、文系出身者のほうが多数なようです。
これはなぜか。

神永正博さんの本を読んだら、こんなことが書いてありました。

 年収2000万円以下の人たちはガウス分布をする
  ところがそれ以上の人たちはパレート分布する

ガウス分布とは別名「正規分布」。
釣鐘状の分布ですね。
パレート分布とは確率分布のひとつで、「べき」で分布するものです。

神永さんによると、年収2000万円までが正規分布するのはほぼそれが努力度によるものだから、だそうです。
年収2000万円の範囲では、努力すれば年収も上がるのです。
あたりまえだけどね。
だから努力する習慣を持つ理系出身者の「平均」年収は高くなるのです。

ところが、2000万円を超えると確率分布をする。
少人数の極端に高収入な人がいる。
この分布は確率的にしか得られない、つまり「運」なんです。
自分の人生を運に任すことができる人だけが、超高収入を得られる。
その代わり、超低収入になるリスクも同時に抱えてしまう。

するとどうでしょうか。
地道でコツコツと努力をする理系人間は、こういう人生を選択しないのだと思います。
つまり、超高収入のハイリスクハイリターン人生を選ぶのは文系出身者の方が多数を占める。
そうなれば、ヒルズ族など大金持ちは文系ばかりになるわけです。

さて、みなさんはどちらの人生が好きですか?

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