2013年1月10日木曜日

スペシャリストとバックオフィス その1

スペシャリストの反対語(対義語)は何でしょうか。
日本ならゼネラリストですよね。
でもアメリカでは違うんだそう。
アメリカにはゼネラリストはいないんですよ。
もしかするとゼネラリストなんていう職種があるのは日本だけかも。

アメリカの社会は、2割のスペシャリスト(専門家)と8割のバックオフィス(事務員)で構成されています。
スペシャリストとは自らの専門性を活かし、他の人ではできない仕事を自主的に行う人。
だからスペシャリストには経営者はもちろん、マネジャー職も含まれます。
経営者は経営のスペシャリスト、マネジャーはマネジメントのスペシャリストなんです。

アメリカ社会では、スペシャリストは最初からスペシャリストとして雇用されます。
あらかじめ、これこれという専門技術を持つ人、という形で募集され、それに応募する。
その能力があると判断されれば雇用されます。
もちろん、その専門性に見合った年俸もあらかじめ示されます。
その意味で、雇用のミスマッチは起こりえないのです。
欲しい人=やりたい仕事、年俸=求める報酬なんですから。

雇用されたスペシャリストは、その仕事を自主的に進めます。
会社はゴール、すなわち目標と期日を決めるだけ。
スペシャリストは会社が求めるゴールに向かって、手段、方法、段取りを自分で決め、必要なスタッフを集め、邁進します。
その意味で、手段、方法、段取りを自分で決められることこそ専門性のあるなし、専門家であるかどうかの判断基準と言っていいわけです。

スペシャリストに与えられるのは、ただただゴールだけ。
ゴールを達成できたかどうかで、その能力が測られます。
ただその1点で、厳しい評価を受けるのです。
成果主義ってやつですね。
ゴールを達成できなかったら、当然解雇。
あるいは降格されて、もっと低いゴールと年俸のポジションに移ります。
解雇も降格も、ゴールを達成できなかった事実があるので、そのスペシャリストとしても納得ずくです。
解雇に絡むトラブルもあり得ません。

スペシャリストは仕事を自主的に決めるわけですから、誰かから命令されて仕事をすることはありません。

競争にさらされ、厳しい評価で査定されるのは2割のスペシャリストのみなんです。

もちろん高給を取る。

ダメなら解雇も当然。
だから実力主義賃金でよいのです。

ここで注意したいのは、たとえゴールできなかったとしても、あらかじめ契約した年俸は支払われるということ。
だからスペシャリストは安心して働けるのです。
仕事はばくちじゃありませんからね。
でも、ゴールを達成できなかったんですから、次の仕事での契約では年俸ダウン必至でしょう。

スペシャリストは常に勉強、努力もしています。
ゴールを達成する中で、スペシャリストはよりよい手段、方法、技術を開発します。
だからといって年俸が上がるわけではありません。
年俸はあくまで最初に契約した額のまま。

でも、より高い技術を身につけたスペシャリストは、「次の契約」でもっと高い年俸で契約することを目指すのです。
おれは前職で期待以上のゴールを達成した。
それはこれこれの技術を開発したからだ。
だから今度はこれだけの年俸で雇うべきだってね。
スペシャリストは高まった自分の能力に見合った仕事を求めるわけ。
だから転職もあたりまえなんです。

それに対して8割のバックオフィスの人たちは、会社全体の業績不振以外で解雇されることもないし、自ら転職もしません。
ほぼ生涯同じ会社に勤務しているのです。
その意味で日本の会社員と似ています。

でもバックオフィスの人たちの賃金は、ほどほどです。
同一労働、同一賃金であり、年齢、性別による差別もない平等な給料。
競争もないし、厳しい評価にさらされることもないのです。
世の中には、あまり高くない能力でもいいので、一定の仕事を淡々とこなしてくれるたくさんの人が必要なんです。
すべての人がスペシャリストじゃなくてもいいし、すべての人がスペシャリストではうまく社会は回っていかないのです。

誰もがリーダーになれるわけではないし、なりたいわけでもない。
アメリカの労働者はスペシャリストを目指すのか、バックオフィスとして生きるのか、自分で選択すればいいのです。
もちろん、その間の行き来も自らの努力で変更可能です。
でもスペシャリストへの行き来もできるが、求められる知識、技能は厳しく査定されるのは言うまでもありません。
とんでもない努力が求められるのです。

さて、日本の会社員はどうでしょうか。
日本の会社員はスペシャリストとバックオフィスに分かれてはいません。
ほぼ同一年齢同一賃金生涯雇用の雇用体系です。
それでもやっぱり会社の中には、スペシャリストもいればバックオフィスの人もいるんです。
それらを区別することなく雇用されているのです。
でもこれってハッピーなことでしょうか。

(つづく)

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