2015年1月17日土曜日

大人だって褒められたい

こんにちは

昨年末に菊池省三先生の講演を聴いてきました。
菊池先生は「褒め言葉のシャワー」を実践している先生です。
シャワーのようにジャバジャバと褒め言葉を子どもに浴びせる。
そうすると子どもは自尊心を取り戻し、まっすぐ育っていく。

講演の中で菊池先生はおっしゃっていました。

 子どもはなぜ学校に来るのでしょう?
  それは褒められるために来るのです。

まったくその通りだと思います。
プラグマティストのぼくも同感です。
だって、褒めた方が効率がいいからです。
だからぼくも言います。

 大人はなぜ仕事をするのでしょう?
  それは褒められるために仕事をするのです。

怒るより褒める方が、労働効率は上がり、生産性も上がる。
ミスも減るのです。
やる気だって出ます。
大人だって褒めた方がよく働くのです。

ちょっと実験してみれば分かります。
怒ったあとと、褒めたあと、同じ作業をさせてみます。
たとえば伝票の集計のような簡単な計算問題でいいでしょう。
大きな差に驚くはずです。

安全面でも怒ることの害は大きい。
筑波大付属小の先生だった有田和正先生は、生徒たちが下校するときに必ず褒め
る、笑わせてから帰すようにしていたそうです。
特に叱ったあとは、そのことに注意していたそうです。
なぜなら、叱られた状態のまま子どもを下校させると、交通事故に遭う頻度が高
くなる経験をたくさんしていたから。

このことは脳科学的にも理解できます。
脳の前頭前野にあるワーキングメモリは、通常の人で7つ、子どもだと3つとか
5つとかしかありません。
人はワーキングメモリを使って思考したり判断したりしています。
ワーキングメモリに気になることが常駐すると、自由に使えるメモリ数が減って
しまいます。
すると思考や判断が鈍くなるのです。
強く叱られると叱られたことだけでワーキングメモリを使い果たしてしまうのです。
叱られたまま道を歩いている子は、ワーキングメモリが減っている状態です。
思考判断が的確にできず、交通事故に遭ってしまうわけです。

同様なことは労働心理学の研究でも明らかになっています。
怒られてばかり、注意されてばかりの労働者の方が、労働災害に至る確率が高く
なるのです。
要するに、脳に余裕がなくなるんですね。
怒られたこと、注意されたこと「だけ」がアタマを占有し、その他のことに注意
か向かなくなるのです。

もちろん大人だって叱らねばならないことはあります。
会社や社会のルールとか、一線を越えるようなことをした場合は叱るべきです。
でも必ずそれはフォローしなければいけない。
叱ると褒めるは「対」のものだからです。
叱ったらなるべく早く褒める状況に持っていく必要があります。
そこまで鍛えてやるのは、先輩だったり上司の義務なのです。

普段褒めているから、たまに叱ってもそれが部下、後輩に入っていくのです。
そして、叱ったからにはできるようになるまで面倒を見る。
きちんとできるようになったら褒める。
叱るだけでは、絶対に部下、後輩はよくならない。
これは明らかな事実です。

でもねー、自分の鬱憤晴らしのために部下、後輩を怒ってている人が意外と多い
のです。
ご本人は部下、後輩をよくしようと思って怒っているつもりらしいのですが、違
うのです。
部下、後輩をよくしてやろう、を言い訳にして実は自分が鬱憤晴らししているだ
けなのです。
部下、後輩の些細なミスを怒っている場合、それは単にそういつが嫌いなだけな
のです。
好きな部下なら気にならないようなことが、嫌いだから目に付いてしまうのです。
 
もちろん、箸にも棒にもかからない奴もいますよ。
いくら熱心に教えても、叱っても、怒鳴りつけても、全然仕事を覚えられない奴。
基礎力が不足しているから、どうやってもダメなんです。
だからそういう奴を怒ったって仕方ない。
怒るだけ無駄です。
静かに引導を渡してやるくらいしかできません。
 
最終的に褒めにつなげるなら叱ってもよいが、叱るだけならやめておくべき。
だって、効率を下げるから。
ヘタすると事故につながるから。
叱るだけ、注意するだけでは、ご自身が責任者である自分の組織の効率を、自分
で下げている。
自分で自分のクビを絞めているのです。
効率を考えない人は指導者失格です。

だからね、伸びて欲しい、確実に伸びる見込みのある部下、後輩しか叱っちゃい
けないのです。
ダメなやつを叱り続けると、ますますダメになってしまいます。
普段褒められ続けている人だけが、たまに叱られてもそれに耐え、自分を鍛えて
いくことができるのです。

やれば必ず褒められるようなことをやらせ、手助けし、見守る。
やれたら必ず褒める。
そのくり返しが教育なんだろうと思います。
それは学校でも家庭でも職場でも同じです。

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