2010年1月31日日曜日

金は天下の回りもの

こんにちは

先週末、国会で補正予算が成立しました。
ぼくの仕事もまた増えそうで楽しみです!
さて、補正予算の国会審議の中で菅財務相が「乗数効果」についてよくご存じなかったと報道されました。
それをちょいと説明してみますね。

「金は天下の回りもの」ということわざがあります。
お金は一人の人に留まるだけじゃなく、いろいろと世の中を渡り歩くもの。
今はすっかんぴんでもそのうち回ってくるだろう、という楽観的な気持ちを持つようにするためのことわざだと思ってました。
ところが、本当にお金は世の中を回っているんです。
お金って、回ることによってより活きていくものなんです。

たとえば、ぼくが100万円給料をもらうとします(願望^0^)。
もらったお金を自分のたんすに入れておくだけなら、いつまでたっても100万円のままです。
貯金したり株に投資したりすれば、多分ちょっとは増えるでしょう。
でもそれは「ぼくの」お金に限った話です。
世の中全体で、100万円はいくらの価値を生むのか。

ぼくの給料100万円のうち10%の10万円だけ残して、90万円で何かを買ったり、サービスを受けたりしたとします。
使った90万円は、誰かのところへ回っていきます。それは結局は誰かの給料の一部となるでしょう。
その90万円も、ほかの誰かのところで10%=9万円残されて、81万円が使われるとします。
その81万円は、また他の誰かのところへと回っていきます。
その81万円も、10%残されて、90%使われるとします。

こういうことを繰り返すと、最初の100万円は世の中を回っていくうちに、100万円以上の働きをします。
全部合計すると、いったい何万円の働きをすることになるのでしょうか。

上の例を計算すると、

 合計額=100万円+100万円×0.9+100万円×0.9^2+100万円×0.9^3+・・・

    =∑100万円×0.9^n (n:0~∞)

高校の数学で等比数列の和というのを習った記憶があるでしょう?
これは等比数列の和の計算になります。

公式にあてはめて計算すると、

 合計額=100万円÷(1-0.9)=1000万円

となり、なんと100万円は世の中を回っていくうちにもともとのお金の10倍、1000万円もの働きをすることになるのです。

上の例は、お金を使う方の話でした。
今度は何かを売って儲ける場合を考えてみます。
たとえば100万円の不動産を、誰かに10%増しの110万円で転売するとします。
この土地を次々に10%増しで転売していくと、

 合計額=∑100万円×1.1^n (n:0~∞)

    =∞!

100万円が無限大のお金を生み出してしまうのです。
これが「土地転がし」などの原理です。
お金というのは、世の中を回っていくと、その回り方によってすごいことにもなっちゃうのです。

税金を使って何か事業を行う場合、その「経済効果」を算定するのが常道です。
ある事業にお金をつぎ込むと、お金を使ったものだけじゃなくて経済的な波及効果を世の中に及ぼすわけです。
それがどの程度になるのか。
それが「乗数効果」なのです。
経済対策として公共事業を行う場合、乗数効果の大きな事業を選択すれば、世の中に多くのお金が回ることになり、経済効果も大きくなるというわけなのです。

総務省では「産業関連表」というリストを作っています。
http://www.stat.go.jp/data/io/index.htm
このリストで波及効果(生産誘発額)を予測できるのだそうです。
あるものにいくら投入すると、それに関連した産業にいくら回っていき、全体としていくらの経済効果を顕すのかが推計することができるのだそうです。

ちなみに道路建設について調べてみたら、生産誘発率は2.0だそうです。
たとえば道路建設に100万円投入すると、世の中全体ではその2倍の200万円の経済効果がある、ということです。
でもいくら経済効果があっても意味のない道路にお金を使うのは、ちょっと考えものですが。

まあお金とは不思議なものですね。

0 件のコメント: