2011年6月9日木曜日

プロジェクト志向のススメ


こんにちは

やりました!
ついにレーザー発振です!
何ってXFEL=SACLAのことですよー。
http://harima.riken.jp/
こんなにど派手なホームページ作っちゃって、播磨のみなさんの喜びもビシビシ伝わってきますね。
情熱を持ってこのプロジェクトに関わってきたぼくも、とても誇らしい気持ちでいっぱいです。

ぼくの造ってきたインフラ設備もまずまずの機能を発揮していますね。
とはいえ、100点満点の仕事ができた、とも思っていないんですよ。
竣工してからいくつかの不具合があって、その度に直してきました。
ここはああしておけばよかった、こうすればもっと良く出来たのに、と思うところもたくさんあります。
だから100点じゃない。
でもちゃんとレーザー発振まで漕ぎ着けたということは、合格点は取れている。
60点はきっちり取れているという自信と自負はあるんです。

川口淳一郎『高い塔から水平線を見渡せ!』NHK「仕事学のすすめ'11.06」¥550-にこうありました。

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間違えていけないのは、プロジェクトと研究は違う、ということです。
プロジェクトというのは、期限内に終わらなければならない。
いくら時間がかかってもいいから究極の答えを求める研究とは違うのです。
出た答えが必ずしもベストではないと分かっていても、それが妥当なものであれば採用して次に進まなければならない。
プロジェクトというのは、その繰り返しです。
とにかく期限は絶対ですから、たとえセカンドベストであっても、60点であっても、いかにそれを確実にタイムリーに決めていくかが大切です。
そして、その過程の議論は最大限尊重していかなければいけないのです。
これこそが、私が「はやぶさ」のプロジェクトを推進する上で学んだ、組織運営の基本です。(25p)
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ホントに川口さんは研究者ではなくエンジニアだと思います。
100点は狙わない、だけど確実に60点、合格点はGetする。
プロのエンジニアですねー。
ってぼくが言うんじゃちとおこがましいですけどね。

そう、プロの仕事は100点満点が必須じゃないんですよ。
合格点を100%の確率でたたき出すこと。
だって、プロジェクトというのは、個々の仕事の集積だからです。
それもそれぞれの仕事は「AND」で結ばれているんです。
SACLAのインフラ設備で言えば、

 床が揺れない
  AND 電源が安定している
   AND 空調がうまく制御されている
    AND マシン冷却水の温度が一定である

なんです。
そして、ANDマシンが正確に稼働する、とつながるわけです。
これら個々の部分が一つでもコケたら、プロジェクトは成功しません。
いくらマシンが100点であっても、床が揺れてしまっては、つまり建家の出来具合が不合格点ではダメなんです。
技術に完璧はありませんが、許容できる範囲に収める、すなわち合格点を確実に取ることが大切なんです。
それがプロのやり方です。

逆に言えば、ばらつきが大きいのはアマの仕事。
ある部分が100点でも、他の部分が40点だったりする。
それではせっかくの100点は生きないんです。
すべての仕事はANDで結ばれているため、40点の部分で全体がコケてしまうからね。
バランスが悪いんですよ。

面白いことに、アマの人ほど100点狙いするんですよ。
アマの人ほど100点を要求する。
100点を狙うには時間と労力と資源を使います。お金もね。
一定の時間、一定の予算、一定の人員の中で100点を狙うためには、ある狭い部分にだけ注力しないとなりません。
そうすると、それ以外のところに目がいかなくなる。
全体がそれでコケてしまうのです。

その意味で、XFEL=SACLAでの建家建設はまずまずプロの仕事ができたって自負しています。
なんとかかんとか合格点を摘み上げることができた。
それがレーザー発振で証明された。
だからとても嬉しいのです。

人生というのはプロジェクトだと思います。
期限、タイミングも大切ですし、お金だって限られています。
自分という資源も有限です。
これらの制限のあるなかで、いい人生を創っていかなくちゃならない。
その時に、100点は狙わない、でも合格点は確実にたたき出す、という考え方は有用です。

レーザー発振成功のプレス発表があった後、すぐに一緒に設計、施工をしてきたスタッフのみんなにも知らせました。
プロの仕事をありがとう、って伝えるために。
そしてぼくも含めてこの仕事に関わってきた人たちが、もっといい人生を創っていけるように。
ハッピーですねー。

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