2012年2月24日金曜日

怒鳴る資格を持て!

こんにちは

先日、我社に寄付をしていただいた方々の見学会がありました。
ぼくも案内役の一人。
ぼくが対応したのはスパコン棟を造ってくださった建設会社の方々でした。
おお、寄付もしてくださったんですね。
ありがとうございます。
良い建物を造ってくれた上に、寄付までしていただいた。これはサービスしなくちゃ。
サービスといってもお土産渡すとかそういうんじゃないよ。
愉快な気分で帰っていただこう、ということです。

ご案内のはじめにこう問いかけました。

「このプロジェクトの最大の勝因は何だと思いますか?」

みなさん、きょとんとしている。
ぼくはこう言いました。

「それは怖い現場代理人さんです!」。

参加者の多くは同じ会社ですから、その現場代理人さんのキャラをご存知です。
どっかんとウケましたよ。
笑いから見学をはじめることができました。
よしよし、目論見通り。

続けてぼくは説明しました。
その時電気室を案内していたんです。

「ここはマシン本体に電源を送っている変電所です。
ほら、ケーブルなど非常にきれいに配線してあるのが分かると思います。
とても丁寧な施工をしてくれた。
きれい、丁寧は施設の安定性につながります。
事故も少なく、ロスも減る。

研究施設にとって要は設備です。
設備がしっかりとしていないとマシンも安定に動かないのです。
こんなふうに丁寧に施工できたのは、余裕のある工程が組めたからです。
設備工事は建築工事が完了しないと始められません。
建築工事の遅れのしわ寄せは、設備工事の負担になってしまうのです。

実力のない現場代理人さんは、段取りが悪いためどうしても工程が遅れてしまう。
その結果、設備工事が昼夜休日問わずの突貫になってしまうのです。
時間に余裕がなくなれば、気持ちにも余裕がなくなります。
徹夜続きで休みもなくなれば、思考力も下がります。

時間もなく、気持ちに余裕もなく、頭がぼーっとした状態では、決して良い工事はできないのです。
でもさすが御社の怖い現場代理人さんは違いましたよ。
on timeに建物を造ってくれた。
予め決めた期日までに、設備工事に着手することができたんです。
これがこのプロジェクトの大きな勝因だったと思います。」

最近でこそぼくはそれほど怒りません。
なぜなら今のスタッフはプロ集団。
誰が何をやるか、責任と権限をはっきりとさせれば、確実にことが成し遂げられます。
だから怒る必要がないんですね。
怒るのにもかなりのエネルギーが必要ですから、楽ちんですよ。

以前はよく怒ってましたねー。
それはまだプロに至らないスタッフたちと一緒だったから。彼らにプロになって欲しかったし、プロらしい仕事をして誇りを持ってもらいたかった。
その思いが伝わった人もいるけど、逆恨みもされました。
それでもぼくは妥協しなかったんです。

最近、「優しい」上司が多くなった気がしませんか。
怒らない、怒れない上司。
それは最近の若者がひ弱になったため、ちょっと怒鳴るとうつになったり、会社に来なくなったり、突然辞めちゃったりする。
あるいは変に自己主張が強くなって、怒鳴られたことを逆恨みしていきなり法的に訴えたりね。

そういうのがめんどうだから怒鳴らなくなってしまった。
でもそれでいいんでしょうか。
まあたまに自分の権力欲を満たすために怒鳴りまくるような変な上司もいますよ。
こういうのは困りますから、やめてほしいです。
でも必要なときに部下を正当に叱ることもしなくなってしまった。
それって、やばくないですか。

部下、若者を会社の中で鍛えていくことができなくなります。
鉄は熱いうちに打て、です。
仕事のスキルも上がらず、仕事への構えも身につかず、30代、40代にしてしまう。彼らが中堅として会社を引っ張らなくてはならない年代になっても実力がまったくない。
その部下もカワイソウですが、これでは会社も存続が危ういですよ。

そしてまた怒鳴らない上司自身も成長しなくなってしまいます。
怒るには怒るだけの「資格」が必要です。
部下を怒って、それに対して部下が納得できるような叱り方。
権力欲だけのおっさんに叱られても、「お前にそれを言われたくないよ。天に唾するみたいだね」なーんて、心の中では舌を出す。

そうならないためには、怒鳴る上司自身も確固たる技術を持ち、常に学び続け、人間的にも成長し、自信を持たなくてはいけないんです。
部下を怒鳴れるだけの自信。
怒鳴ることはそれを身につけるチャンスなんですよ。

だから「優しい上司」は必ずしも「良い上司」ではないのです。
優しいだけの上司は、怒鳴るだけの実力がない。
理不尽な怒鳴り方をする上司も、実力がないのを自覚していて、それをごまかすために怒鳴っているんです。
もちろんおとなしい上司も、実力がないのがわかっているから、怒鳴れないんです。

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