2011年5月11日水曜日

約束を守らないことも嘘の一種である


こんにちは

「嘘つきは泥棒の始まり」
子供の頃よく親や先生から言われた言葉です。
ぼくもわが子たちにしばしば言っています。
だって嘘つきは損ですからね。

嘘をつき通すには相当な知力が必要です。
常に自分が言った嘘を頭に常駐しておかないと、言動に齟齬がでてしまい、バレ
てしまいます。
ついた嘘に齟齬が出ないようにするためには、嘘の上塗りをしなくてはならなく
なります。
つまり嘘をまたつかねばならない。
嘘を一つつくたびに、頭に常駐させねばならない事項が増えていく。
やがて頭の中はついた嘘で満杯になってしまいます。
普通の頭脳を持つたいていの人はそんなに嘘を記憶し続けられません。
だから遅かれ早かれ嘘はバレる運命なのです。

さらに、ついた嘘を頭に常駐させるためには、常に意識にそのことを上げておく
必要があります。
人間の脳の意識は、前頭前野のワーキングメモリという部位にあることが、脳科
学で分かってきています。
ワーキングメモリを使って、ものごとを意識化し、人は思考をしている。
このワーキングメモリは非常に少ないことも、脳科学の研究でわかっています。
普通の人で7つ程度なのです。
幼児などもっと少なくて、3つくらいしかありません。
子どもの考えは浅く、嘘がすぐバレるのもワーキングメモリが少ないからなんです。

人はワーキングメモリを使って思考しています。
7つしかないワーキングメモリにものごとを記憶させ、操作して、考えている。
このとき、ワーキングメモリについた嘘が常駐していたらどうでしょうか。
思考のために使えるメモリ領域が少なくなっているわけですから、十分な深い思
考ができないのです。
つまり、嘘が多くそれがワーキングメモリを占領している人ほど、複雑な思考は
できなくなってしまうわけです。

嘘つきな人は軽率な言動をしがちです。
嘘をついてわざわざその嘘がバレるような言動をしたりする。
それはワーキングメモリの空き容量が足らないからです。
嘘つきは信頼されないのは当然ですね。

逆に、嘘をつかない人は重厚に見えたりしますよね。
思慮深く見える。
言動にも重みがあります。
それはつまらない嘘で脳のワーキングメモリをムダに消費していないからなんです。
複雑で深い思考ができれば、自ずと言動も重厚になっていく。
そういう原理なんですね。

だから嘘つきは損。
嘘を付き続けていると、軽率になる。
人から信頼を得られなくなる。
信頼のない人にたいした仕事は与えられないのは当然です。
次第に社会から押しやられ、弾き飛ばされて、泥棒くらいしか生きる術がなく
なってしまう、というわけなんです。
「嘘つきは泥棒の始まり」とは、昔の人はよく言ったものですね。

さて、誰もが「嘘つきは泥棒の始まり」ということは知っています。
ところが、約束を守らないということも嘘の一種だと認識している人は、すごく
少ないように思います。
約束には、内容と期日が決められます。
期日とは締切りですね。
締切りを守らない、守れない人って結構います。
なんでかなー。
損なだけなのにね。

約束を守らないのも嘘の一種です。
約束通り、期日通り仕事をやれば、完了した時点で脳のワーキングメモリが開放
されます。
スッキリ爽やかな脳に戻して、次の仕事にとりかかれます。
ところが約束を守らないと、そのことがワーキングメモリに常駐してしまうのです。

仕事は次々とやってきます。
締切りを守らないと、次の仕事の締切も同時に抱えてしまう。
終わらせられなかった仕事と次の仕事のことが、脳にアップロードされてしまう
のです。
ワーキングメモリを圧迫します。
その分だけ思考力は落ちますから、作業効率も下がり時間がかかるようになりま
すし、仕事の品質も落ちてしまいます。
時間をかけて、使えない仕事をしてしまう恐れが高くなる。
使えない仕事であれば当然やり直しになります。
さらに同時に抱えてしまう仕事が増えてしまうのです。

約束を守らない、約束をしばしば破る人って、軽率に見えますよね。
こういう人に限って、安請け合いをしてしまうのです。
自分の能力とその仕事に費やせる時間を勘案して、仕事を引き受けるかどうか判
断しない。
いつもダメダメ仕事だから、断れないのかもしれません。
断って余計に評価を落としたくない、という心理なんでしょう。
でもそれも損な行動ですよね。
ああ、そうか。
軽率って、自分にとって不利な言動をしてしまう、ってことなんですね。

締切りを守らない、それが繰り返されると、やがてはワーキングメモリは満杯に
なり、何をどうしたらいいのかまったく考えられなくなってしまうのです。
パニックです。
残業が多くて、その割にアウトプットが少ない人の脳は、こういう状態になって
いると思って間違いありません。

佐々木常夫『働く君に贈る25の言葉』WAVE出版¥1400-から引用します。

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仕事をする上では、締切りを意識することが重要です。
締切りとは、いわば「制約」のことです。不自由を強いられますから、人は誰し
もこれを嫌います。
しかし、私たちは制約があるからこそ、知恵を絞ろうとするのです。
いや、知恵を絞らざるを得ないというべきかもしれません。
「時間が足りなければ、残業すればいい」「締切りギリギリでも間に合えばい
い」。このような考え方では、決していい仕事はできませんし、君を鍛えてくれ
ません。
その結果、長時間労働の罠に落ちてしまうのです。(81p)
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約束を守らない人は、だんだんと会社の中でも、周辺へと押しやられていきます。
信頼を失い、重要な仕事は任せられなくなるからです。
締切りなんかどうでもいい、くだらない仕事しか与えられなくなる。
締切りのないくだらない仕事には終わりというものもない。
終わりのない仕事は辛いですよ。
賽の河原の石積みのようなものです。

約束をまもらない、すなわち嘘をつく人は、管理コストが高くなるから、価値を
割り引かれてしまいます。
価値を割り引かれる=安い人です。
期待されない人になってしまうのです。
誰からも期待されない人生って、寂しいですよねー。
だから、約束を守らないのも嘘の一種だってことを、強く認識しておく。
ぼくもそうありたいし、実践を通してわが子たち、部下、同僚たちにも伝えてい
きたいと思っています。



写真は播磨研一般公開の様子。
こういう楽しい仕事ができるのも、きちんと約束を守って脳をクリアにしておく
から。

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