2011年5月17日火曜日

快適な節電

こんにちは

東電福島第1原発事故、電力供給不足、ドミノ停電防止のため、我が職場も節電対策をし始めました。
先週金曜日、和光でぼくが兼務している部署で仕事。
いや、3月まで本務だった部署ですがね。
最初、事務室に入ったとき「ずいぶん暗いなー」と思いました。
天井照明を見てみると、蛍光灯1台に3本取り付けられていた蛍光管が2本間引きされています。
つまり今までの1/3の照度になっている、ということです。
最初は暗いと思っていたんですが、仕事を始めてみたらすぐその明るさに慣れてしまいました。
人間の順応性はスバラシイものです。

この部屋の照明器具を更新した工事は、10年以上前ぼくが設計したものです。
ぼくのいた部署は設計、製図を行うことが多々あったので、1000ルクスを設計照度としました。
細かな作業は明るい場所じゃないとできないからね。
この1000ルクスは、外が暗い夜間での照度、すなわち照明器具からしか光が来ない場合での設計です。
この部屋には北向きですが大きな窓もあり、昼間は自然光がけっこう入ります。
とはいえ、その自然光だけでは300ルクス~500ルクス程度しかとれないので、天井照明も点灯する必要がありました。
昼間は窓に近い照明器具は消灯できるよう、回路構成を考えてつくりました。

でもねー、窓際ってエライ人、すなわち高齢の人が座っているじゃありませんか。
高齢の人は、目の機能が落ちてきている。
薄暗いとよく見えなくなってくるんですよ。
なので、昼間でも照明を点灯しちゃうんですね、結局。
たしかにぼくも薄暗いところで本を読むのがつらくなってきました。
後期中年だからね。

建物の照明設計をするとき、照度基準はJIS Z9110-1979に従って設計します。
http://www.jisc.go.jp/
この基準に従って、照明器具を選び、台数を決めます。
けれどもこの基準は、番号に1979とあるように、30年以上前に作られた基準です。
だからこの基準は、当時の労働者の多数を占めていた20代の人の視力を対象にして制定されたものです。
30年前は日本もまだ若く、労働者の平均年齢も若かったのでしょう。
団塊の世代がすでに60歳を迎えていますが、30年前彼らは20代から30代前半だったわけです。
労働人口の大半を担っていた彼らをターゲットとして作られた基準だったわけですから、目がまだ衰えていない人の基準なのです。

年を取れば誰だって目は衰えます。
なんたって人間は、歯、目、マラの順で衰えるんですから。
暗いところでは、若い人よりもよく見えないのは当然です。
彼らが20代、30代の頃ははっきり見えていたものでも、今じゃ暗くてよく見えなくなっているはずです。
JIS基準通りだと、高齢の人はちょっと暗くてよく見えない、というのも事実なんです。

労働者の平均年齢が高くなる、すなわち目の機能が衰えてきているからか、最近建設されるオフィスの照度はべらぼうに高いです。
こんなに明るくする必要あるのかな、と思うくらいです。
オフィスだけじゃなく、デパートなど商業施設も明るすぎますよね。
それもお客さんの年齢層があがってきて、高齢のお客さんにも商品がよく見えるようにしてるんじゃないでしょうか。
まあそれより、薄暗いと貧乏くさいってことが主な理由でしょうがね。

ところでエライ人たちを窓際に座らせるのはなぜか。
その理由のひとつは、窓際は明るいから、なんですね。
照明器具が今ほど燦然と輝いていなかった昔、と言っても数十年前でしょうが、目の衰えた高齢労働者にとって優しい座席配置、それが窓際だったのです。

この4月からぼくも窓際に座らせられています。
素晴らしく机の上が明るく見えます。
天気がよほど悪くなければ、日の長い今の時期なら通常の勤務時間中なら照明なしでも仕事に支障はありません。
ましてぼくはすでに図面描きなど細かな作業をすることはめったになくなっています。
文書の読み書きだってパソコンです。
パソコンのディスプレイは自ら光っていますから、周りから照らしてやる必要もそれほどないんです。

そして窓際に座るようになった人は、細かな作業より判断業務が主な仕事になっているはず。
作業には時間がかかりますが、判断はしっかりとした準備が整っていれば短時間でできるものです。
その準備など細かな作業は、まだ目のいい、労働単価の安い若者にやらせればいいんです。
だから、窓際に座っている人はだらだら遅くまで会社に残っていてはいけないんです。
太陽の光があるうちに、目がよく見えるうちに、ザクザクと仕事を片付け、暗くなる前に終わらせる。
すると照明の点灯時間も短くてすみ、節電にも貢献するというわけです。
自分は早く帰宅し、目のいい若者たちに薄暗いところで長時間残業をしてもらう。
ああ、快適、快適。

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