こんにちは
家族中で風邪を引いていましたが、ようやく脱してきました。
風邪の治りかけ、痰がよく出ます。
ねっとりした痰なので、咳をしてもなかなか出てきません。
昨日など、痰を出そうと咳をし始めたら、途中で痰がのどの奥でからまって、咳が止まらなくなってしまいました。
これは苦しい。
息ができないんですから。
お正月になるとお餅をのどに詰まらせて亡くなってしまうお年寄りのニュースが毎年のように流れます。お年寄りが餅をのどに詰まらせる原因は「嚥下(えんか)反射」が老人になると上手くできなくなるから、と説明されます。
人間ののどは奥の方で、空気の通り道である気管と、食べ物の通り道である食道とに分かれています。その分かれ道には、食べ物が気管の方に行かないように蓋をする「喉頭蓋(こうとうがい)軟骨」が付いています。嚥下反射とは、食べ物を飲み込むとき気管の方に食べ物が行かないように、反射的に喉頭蓋軟骨を動かして気管に蓋をする反射のことです。
この嚥下反射は、口からのどにかけての筋肉群が微妙に調整しながら行われるので、お年寄りになるとタイミングが上手く合わなくなってきてしまうのです。それでのどに餅が詰まってしまうというわけです。
でも考えてみると不思議です。お年寄りになれば正月だけじゃなく年中嚥下反射が上手くいかなくなっているはず。餅以外の普段の食事でものどに詰まらせることが多いはず。でも、日常的にお年寄りがのどに食べ物を詰まらせて亡くなったというニュースはありません。なせ正月なのか?なぜ餅なのか?
さっそく調べてみました。
お年寄りだけじゃなく子どもでも大人でも、誤って気管に食べ物が入りそうになった場合、それを取り除くために猛烈に咳き込んでしまいます。そういうときによく「気管に食べ物が入った」と言いますが、実際には気管にまで食べ物は入ってはいません。食べ物がのどの奥の気管の先端に触れるやいなや、強烈な吐気反射が起こって激しく咳き込み、肺からの空気の圧力で食べ物を追い出してしまうのです。そういうときよく食べ物が鼻の方へと入ってしまいますが、鼻は息の通り道ですから肺からの強い吐気は鼻に抜けるのは当然です。この吐気反射があるために、嚥下反射が上手くいかずに気管側に食べ物が入りそうになっても、それを取り除いてくれるのです。
このありがたい吐気反射ですが、もし気管の先端に触れた食べ物がベタベタと粘り着く餅のようなものだったらどうでしょうか。咳き込んでもちょっとやそっとじゃ吹き飛ばされずに、気管に付着したままになってしまうことが想像されます。
痰が絡んで咳が止まらなくなるのも同じ原理です。
粘っこい痰が、気管の入り口あたりに張り付いてしまうと、意志とは関係なく反射が起こり、それが除去されるまで咳をし続けることになるのです。
話を戻して。
若い人の場合、餅を食ってもよく咀嚼してから飲み込みます。咀嚼中には唾液とよく混ぜ合わされますから、餅の粘性も弱くなります。唾液の量は、30歳代では一日に約1500cc、歳をとると分泌量が減り、50歳代では約800ccにも減ってしまいます。また、お年寄りは歯が抜けてしまっていたり、入れ歯だったりするので、咀嚼力も若い人のように強くはありません。顎の筋肉も弱ってきています。お年寄りになると、唾液の量が減り咀嚼力が弱くなるので、餅の粘性もねばっこいまま飲み込んでしまう恐れが高くなります。
さらに、お年寄りになると肺活量が低下するので、気管に入ろうとする食べ物を吹き飛ばす威力が劣ってきてしまいます。こうした複合要因で、餅をよく食べるお正月に、お年寄りが餅をのどに詰まらせて亡くなってしまうというわけです。
餅がのどに詰まって死ぬと言っても、餅が気管を全部ふさいでしまって窒息死してしまうという場合は少ないそうです。実際は、気管が完全に閉塞することはめったにありません。餅のかけらが気管の先端にくっついてしまい、吐気反射が起こりますが、いくら咳き込んでも粘っこい餅は取れずに、果てしなく連続的に咳込みが続いてしまうことになります。咳き込んでいる間は、十分な息ができなくなってしまいますから、結局は窒息状態に陥ってしまい亡くなってしまうというわけです。ぼくは子どもの頃ぜんそくでしたので、ずっと咳込みが続くのを想像しただけで、息が詰まりそうです。
餅がのどに詰まる事故を防ぐには、唾液が少なく咀嚼力の弱いお年寄りでも食べやすく調理することが大事です。つまり、餅は最初から小片にする、最初から柔らかくなるまで煮ておくといい。でも、そんな風に調理した餅を食べて、餅を食った気がしないというお年寄りもいるでしょうね。
赤ちゃん、幼児も全く同じです。
咀嚼力が弱く、肺活量も少ない赤ちゃん、幼児に餅などねばねばしたものを与えるのは危険。
こんにゃく製品での事故も、餅と同じ原理で起こったのです。
気をつけましょう。
餅がのどに詰まる原理は、正高信男『0歳児がことばを獲得するとき』中公新書\680-の63pあたりに書いてありました。
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