2010年7月22日木曜日

経験は意図的に積め


こんにちは

「よくそんなに覚えていますね!」
新しい研究棟の建設を担当する方たちを、既存の研究棟へ案内したときそう言われました。
温故知新は何事でも大切ですから、新しい建物を建てるときはしばしばスタッフを引き連れて、既存の同種の目的の建物に案内して、いいところ、悪いところを説明するんです。
この分野の研究棟の目的はこうで、こんな実験を行うから、施工ではこういうところを注意してほしい。
機械室や電気室、実験室へ案内しながら説明します。
もちろん失敗したところ(設計時、建設時はわからなかったけど、運用してみたらちょっとまずかったところ)も説明します。
今の仕事はこれまでよりも少しでもよいものにするためです。

経験は意図的に積む。
ぼくの尊敬する国語教師である野口芳宏さんの言葉です。
ぼくの座右の銘のひとつになっています。
頻繁にこの言葉を口に出したり、書いたりして、実践に活かすようにしています。
もちろん今一緒に仕事をしているスタッフたちにも、何度も繰り返して伝えます。

つまり、ぼくが施設のことをよく覚えているとしたら、この繰り返ししゃべったりすることがその理由です。
復習する機会を自ら作り出すようにしているんですね。
何度も何度も書いたりしゃべったりする。
現地に何度も足を運び、それを説明することを何度もやる。
同じことを何度も繰り返せば、誰だって覚えちゃいますよ。
それに説明しながら自分もよく理解していないことがあったら、あとでこっそり勉強し直したりね。
そしてそれをまた、さも前からよく知っているような顔をして得々と説明する。
そうやって記憶に定着させてきたんです。

芦永奈雄『本当の学力は作文で伸びる』大和書房¥1500-から引用します。

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伸びない人というのは、一度やって理解したら終わり、とやってしまう人。
理解すれば力になると思い込んでしまう人ですね。
違います。
伸びる人はここがしっかりできているのです。ちゃんと復習をします。
「理解すること」は「力になること」ではありません。やっと前提にたどり着いたという状態です。(略)
「分かる」ということは前提で、実践しないと力にはなりません。(120p)
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そう、意図的に経験する、とは経験を体に染み込むまで「復習」することなんだと思います。
何度も何度も繰り返して、自分の血肉にしていく。
このことをきちんと身に着ければ、将来も役に立つぞと思うことを経験したとき。
その経験を繰り返し反芻する機会を自ら作るんです。
何度も人に説明してみる。
そのために時間を見つけては現地に連れて行く。

先日プレス関係者にスパコン棟を説明する機会がありましたが、それも同じですね。
チャンスがあれば「ぼくがやりますよ!」と手を挙げる。
やらせてもらうことによって、経験値を上げるんです。
めんどうだなんて言っていたら、経験は意図的になりませんよ。
確かにめんどうなんですがね、ラクして損するな、なんです。

ぼくは経験を意図的にするために「力業」も使っちゃいます。
それはどの分野の研究棟であろうと、<同じ思想>で造ってしまうんです。
各実験室の床面積あたりの電源容量、幹線の需要率、変圧器の不当率。
これまでいろんな研究棟を造ってきた経験から、こうすればまず失敗はないというものがあるわけです。
新しい建物を造るときも、同じパターンで造ってしまう。
そうすればそれ自身が繰り返し、復習になります。
もちろん研究分野によって微調整は必要ですよ。
でも基本思想がしっかりしていれば、微調整にだけ時間と労力を使って考えればいい。
微調整部分だけ長く深く考えて造れば、当然それも覚えちゃいますよ。
建物が出来上がって誰かを案内するとき、すらすら説明できちゃうのも当然でしょ。
つまりは、経験を意図的にするために自分をディレクションしちゃう、方向を着けてしまうってことです。


昨日は電気技術者協会の見学会で、ウィンド・パワー・かみす風力発電所を見てきました。
日本で初めての本格的洋上風力発電所です。
面白かったなー、好奇心満たされました。
チャンスを見つけていろんな施設を見に行くのも、経験を意図的にするためのひとつの実践です!

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