2009年11月24日火曜日

築城3年、落城1日

こんにちは

事業仕訳で心配していた次世代スパコンプロジェクトですが、応援してくださる方も多く、明るい希望が見えてきました。
文科省へのパブコメも何千通と届いているらしく、そのほとんどがスパコンプロジェクトはやるべきだ、というものだったそうです。
嬉しいですねー。ありがとうございます!

次世代スパコンで使われる予定のCPUも完成しています。
CPU単体での性能は世界一、計算速度あたりの消費電力も世界一という優れもの。
現在日本2位のスパコン、JAXAで稼働開始したFX-1は、このCPUの一世代前のSPARC64 VIIを使用していますから、実績、安定性という意味でも有望です。

事業仕訳で蓮舫議員が「1位じゃなくちゃだめなんですか。2位でもいいじゃないですか」とおっしゃっていましたが、2位でもいいんです。
1位を取ることが大事じゃなくて、「使えるスパコン」が必要なんです。
2位でも3位でもいいんですが、日本に世界トップレベルの高性能スパコンがあることが大切だと思います。
でも30位じゃダメなんですよ。

もちろん遅いマシンでも計算はできますよ。
パソコンレベルのマシンだって、時間さえかければどんな計算もできるんです。
でもその時間が現実的に有意な時間なのかどうかが問題なんです。
パソコンでもできるけど100年もかかるとしたら、意味のないものになってしまいます。
次世代スパコンに使われるCPU SPARC 64 VIIIfxの単体での計算速度は128ギガフロップス。
ぼくらが使っているパソコンの計算速度はせいぜい3ギガフロップス程度ですから、50倍近い差があります。
まして次世代が目指す10ペタフロップスと比べると、300万倍にもなります。
次世代スパコンで1日で完了する計算をパソコンでやろうとすると、300万日=8200年もかかるわけです。
8200年先に結果の出る計算に、まるで意味はないと思います。

現在のtop500リストによると、1位のアメリカジャガーは1.7ペタフロップス、日本最速の地球シミュレータⅡは120テラフロップスで31位。
1位と30位の速度差は15倍近くあります。
つまり、同じ計算をするために、30位のマシンでは1位の15倍もの時間がかかる、ということです。
たとえば1位のマシンなら1日でできる計算が、30位のマシンでは15日間かかるわけです。
日本最速のマシンを15日間もひとりで占有して使えることなんかできません。
割り当てられたマシンタイムをやりくりして計算結果を出すには、さらに多くの日数が必要になってしまうのです。
この時間差が、科学や技術の開発力の差になってくるわけです。
だからトップレベルのマシンが日本にないとやばいんです。

トップレベルのマシンを造るには、最初から2位、3位を目指すことなんかできません。
各国が今現在の技術レベルで達成可能なマシンを、しのぎを削って開発しているのです。
各国の技術差はごく僅かです。
1位を目指さない限り、トップレベルのマシンは造れないのです。
もちろん総額1200億円という膨大な税金を投入しての開発ですから、無駄なく着実に実行する必要があるのは当然です。

最近のぼくの座右の銘は「築城3年、落城1日」です。
城を築くためには3年間コツコツとやり続ける必要がある。
でも油断したらたった1日で落城してしまう。
築城も落城も一番大切なのは「信用」「信頼」でしょう。
信用、信頼を得るためにはコツコツとした努力を3年続ける必要がある。
でも信用を失うのはあっという間なんです。
心してぼくの役割を着実に果たしていきたいと思っています。

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