2011年2月18日金曜日

安物買いの銭失い


こんにちは

出張中、爪が伸びていたのに気づきました。
ぼくは子供の頃アトピーだったので、今もかなりの乾燥肌。
かゆくて無意識にひっかくこともある。
爪が伸びていると皮膚を切り裂いて流血させてしまう。
なので、いつも爪はきれいに切っておく必要があるのです。

出張中だったのでもちろん爪切りは持っていませんでした。
でもどうしてもすぐ切りたい。
爪切りを買おうと思った。
たまたま出張先の駅前に100円ショップがありました。
1回使うだけだから、100円のもので十分だと思いました。

100円ショップで爪切りを買い、さっそく駅のホームで爪を切る。
ところがうまく切れないんです。
細かなコントロールが効かないので、爪の端が残ってしまう。
おまけに刃に力がうまく伝わらず、切りにくいったらない。
だんだんイライラしてきました。
しまいにはとうとう肉を切ってしまい、血がにじむ。
イテテテテ。。。

やっぱり100円ショップの爪切りではダメでした。
全部の指を切り終える前に、この安物爪切りを使い続けることは不可能だと判断。
ふたたびスーパーに行き、ちゃんとしたものを買いました。
450円でした。
今度は快適、とてもスムーズに切れます。
最初からこれを買えばよかったよ。
安く上げようと思ったのに、かえって無駄遣いになってしまいました。
とほほほ。。。

『40歳の教科書』講談社¥838-似鳥昭雄(ニトリ社長)「本当の豊かさは安さで実現される」にこうありました。

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ものごとの価値は「価格」と「品質」のバランスによって決まります。
価格を大幅に上回るだけの品質があれば、その商品には「価値がある」と見なされる。
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ただ金額が安いだけじゃ、人は価値を認められないんですね。
絶対額じゃないんです。
安いものでも品質が粗悪じゃだめなんです。
たとえ金額は高めでも、品質と比べてオトク感があるかどうかなんですね。
でもねー、よのなかには安さしか売れるもののない会社というのも多々あるんですよ。
逆に言えば、品質という観点のない会社は安さしか売るものがなくなってしまうんです。
でもそれじゃあお客さんは結局離れていってしまいます。

モノの値段というのは「1/3の法則」というのがあって、だいたいこんな割合になっているのです。

 1/3が原材料費、
 1/3がそのモノを作るために必要な直接的な人件費、
 残り1/3が間接費や利益

これはほとんどすべてのモノに当てはまる法則です。
たとえばマクドナルドのハンバーガーでも、値段の1/3はパテやパンにかかる金額で、1/3は店員さんたちの給料、残り1/3がお店の家賃や光熱費、本社費用と利益なんです。

ぼくの本業の電気工事でも同じようなことが言えます。
たとえば分電盤の値段を見積もるとき、ぼくはこんなふうにやっています。
分電盤に必要な材料費、ブレーカーや金属箱、内部配線の値段をざっくり見積もります。
個々の材料費はカタログやWebで調べられますし、ぼくは長年こんなことをやっているのでだいたいの単価は記憶しています。
で、材料費合計を3倍すればほぼ適正価をはじけるんです。

先日もある工事を発注しました。
変電所から幹線を配線し、分電盤を設置する工事です。
この分電盤の価格は、ぼくの概算では350万円くらいが適正なものでした。
発注前には予定価格を立てますが、ぼくの概算を正式な資料として採用はできません。
なので盤製作メーカー数社から見積を取ります。
この見積と、ぼくの弾いた概算額や市場価格を勘案して、見積額を査定するわけです。
この盤に対するあるメーカーさんの見積書には、なんと1200万円と記載されていました。
うわー、ベンツが買えちゃう値段だぜー。
絶対こんなわけありませんよ。
やっぱり契約額は適正価である350万円程度になるはずなんです。

入札が終わりました。
予定価格よりかなり安い金額での落札でした。
落札した電気工事業者さんの札には、見積内訳書が添付されています。
これを見ると、ケーブル配線費用などはほぼ適正でしたが、分電盤の値段がすごく安い。
そこには200万円と記載がされていました。ぼくの概算額の2/3以下です。
だから合計した工事費を安く入札できたんです。
落札業者さんに「ホントに設計図に記載された仕様と品質で作っていただけますか」と聞きました。
まあ当然「はい」と言いますよ。
不安を抱えながらも、この落札業者さんに発注することになりました。

大規模工事なら工場出荷前に工場立会検査を実施して納品してもらいますが、小規模な工事だったので分電盤は製作後、直接現場に搬入されてきました。
もちろん事前に製作図を提出してもらい、そのチェックもします。
が、図面にはすべての事項を記載できるものでもなく、当然満たすべき暗黙の了解事項は記載されないのが普通です。
たとえば、電気設備技術基準という経済産業省令に記載されているものまで、製作図には書いてない。
法令準拠はあたりまえのことだからです。
で、搬入されてきた分電盤をチェックすると「なんだこれ?!」。
想定される電流値に対して許容電流値のが満たさない細い電線が使われていたんです。
こんなんじゃ場合によっては過熱、出火してしまいます。
電気設備技術基準に適合していないのは明白です。
ぼくは直ちに是正を指示しました。

適正価の2/3ですから、いくら経費削減、コストカットに努めても無理が出ます。
どこかでこの無理を吸収しないとならない。
そこでつまんない部分でケチってしまったんでしょう。
でもそれでいいのでしょうか。
結局、是正させられて二度手間になってしまい、コストもかかり、元請け電気業者さんにも恥をかかせ、発注者にも悪い印象を残す。
万一、不適合が発見されずこのまま使われて火災にでもなったらどうするつもりだったんでしょうか。
まったく割りに合わない損なことだと思うんですがねー。

この盤を製作したメーカーは、1200万円の見積をしたメーカーでした。
それを200万円で受注したんですね。
見積価の1/6です。
こういう見積をするメーカーさんの心理が透けて見えますよ。
品質で勝負できないから、価格で勝負してるんです。
とにかく安けりゃ客は納得するだろう、と安易に考えているに違いありません。
安さを強調するために、見積価格を釣り上げ、値引き率を大きく見せかけているんだと思うのです。
せこいよねえ。
こんなの意味のある仕事なのかなーって、ぼくは思いますよ。

ニトリ社長はこうも言っています。

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だから、子どもが自分のおこづかいを使うときも、価格と品質を天秤にかけて、本当の価値を考える習慣を身につけてほしいですね。
これは自分の身を守る上でも、大切な心がけになります。
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さすが「お値段以上、ニトリ」ですね。
ぼくもわが子たちに「値段だけに騙されないように」ということは、強く教えていきたいですね。
値段はそのモノの価値を表すものだ、価値のないものはいくら安くたって高いものになってしまう。
高くたってそのねだん以上の価値を持つものならは、人は「安い」と喜んで買ってくれる。
モノだけじゃなく、人だって同じだ。
価値のある人間なら、高い給料を払ってくれる、高く買ってくれるんだってね。



写真は完成間近の神戸研iPS研究棟。
今日、完成前の監督員検査をしてきました。
お値段以上の施設ができたと自負しています!

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