2009年1月24日土曜日

健康診断も過ぎたるは及ばざるがごとし

こんにちは

先日職場の健康診断がありました。
最近は、レントゲン検診を受診するかどうか、自分で選択できるようになってきましたね。
レントゲン、すなわちX線も「放射線」の一種ですから、被曝することにもなるからでしょう。
被爆すれば、何らかの悪い影響も受けてしまいます。
特に妊婦が被爆すると、胎児に影響が出やすい。
そんなこともあって、一律にレントゲン撮影を強制的にやることはしないで、各自の判断に任されるようになったのでしょうね。

日本人の自然放射線による被曝量は年1.5[mSv;ミリシーベルト]であり、世界平均の2[mSv]に比べると少ないそうです。
自然放射線は地球や宇宙からやってくる放射線です。
日本の大地は地質年代があたらしいため、古い地質のユーラシア大陸などと比べると出てくる放射線が少ない。
また、日本の家屋は木造なので、石造り、つまり大地を材料にしたヨーロッパなどの家に比べると、放射線被曝は少ないのです。
ところが、年平均総被曝量を比べると、世界平均は2.4[mSv]なのに対し、日本人は年3.75[mSv]。
日本人の方がたくさん被爆しているのです。
なぜなら、日本人は医療放射線として年間2.25[mSv]も被爆しているからなのです。(世界平均の医療放射線被曝量は0.4[mSv])。
平均値が高いということは、たくさんの人が医療放射線を浴びているとうことです。
すなわちそれは、治療のためではなく診断のために多くの人が被爆しているということなのです。
1回X線写真を撮ると2.5[mSv]も被爆してしまいます。
日本人全体の平均値2.25[mSv]とかなり近い数字ということは、かなりの数の国民が検診によって被爆していると考えられます。
放射線被爆を受ければ、その被曝量によって傷害を受けます。
多量の放射線を浴びれば、将来ガンを発症する可能性も高くなります。

放射線は細胞分裂の盛んな年齢ほど敏感に作用します。
放射線が遺伝子を傷つけるので、細胞分裂の時にうまく遺伝子をコピーできなくなるからです。
遺伝子にコピーミスが起こると、その細胞がガン細胞に変化したりするわけです。
だから、放射線によるガンの発生率は年齢が低いほど高いのです。
若い人ほど成長したり新陳代謝が盛んだったりと、細胞分裂も盛んだからです。

年齢を横軸にとりガン発生率を縦軸にとると、右下がりのカーブを描くグラフとなります。
一方、肺結核や心臓病などによる死亡率は40才前後から急激に上昇します。
よって、X線検診によって病気を早期に発見する「御利益」も40才前後から上昇することになります。
年齢を横軸に、X線検診による御利益を縦軸にとったグラフは、右上がりのカーブを描きます。

この2つのグラフからある年齢において、X線検診を受けた方が利益を得るか、やめた方がいいのかどうかの判断ができます。
神戸大学の中川氏(放射線環境科学)は

 「7歳以下はやめときなさい。
   男性は31歳、女性は39歳で不利益と利益がつりあう」

と言っています。
子どもは、骨折など治療の時にX線撮影することは仕方ありませんが、健康診断のために、どこも具合悪くないのにX線撮影することは、絶対にやめた方がいい。
事実、WHOは1974年に、小中学生の集団での胸部X線検診の廃止を勧告しました。
たしかに、ぼくが子どもの頃は全員が学校で胸部X線検診をした記憶がありますが、最近の学校では行っていないようです。
もう少し成長した若者も、健康で元気なら検診による被爆は避けておいた方がいい。
特に妊娠の可能性のある女性は十分気をつける。
日本人は健康診断が好きな国民です。
職場の定期健康診断だけでは飽きたらず、自分でも人間ドックを受診したりね。
それによって病気を早期に発見できるかもしれません。
でもリスクもある。
そのことは知っておいて、どっちが得か判断しながら健康診断を利用するようにしたいですね。


この話は、兵庫物理サークル会報「にわとりの卵」に載っていた神戸大学中川さんの講演をもとに、コラムにしてみました。

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