こんにちは
研究者から、3φ200V3kWの超低温冷蔵庫の電源を増設する依頼がありました。
超低温冷蔵庫の仕様書によると、30Aコンセントを要求していました。
ということは当然、30Aブレーカから給電です。
この仕事を若い技術者君に任せました。
プランができたら見せるように、と指示して。
図面ができたので、見せにきました。
そこには配線として直径1.6mmの芯線の電線を使うと記載されていました。
ぼくはそれを、2.6mmのものに書き直しました。
若い技術者君は怪訝な顔をしました。
彼はこう質問してきました。
消費電力3kWの機器の運転電流は11Aくらいです。
それなら起動電流を考えても1.6mmの電線で十分のはず。
よろしい、よろしい。
疑問を持つこと、質問することは大切です。
そういう人は成長しますね。
ぼくはこう答えました。
確かに今予定している冷蔵庫ならそれでも十分。
ショートしたときでも安全な範囲。
でも、そのうち冷蔵庫は交換するでしょ。
同じ容量とは限らないよね。
もしかすると冷蔵庫じゃなくて、オートクレーブ(滅菌器)を
取り付けたくなるかも知れない。
30Aのコンセントが付いていたら、30Aまで使えると思っても仕方ない。
電気のことはよくしらない素人の研究者ならね。
ならば30Aまで安全に使えるように最初からしておいた方がいい。
電線サイズを1.6mmから2.6mmに変えるくらい、それほどのコストもかからないし。
要するに、ぼくは使う人があまり考える必要のない設備を作りたい。
空気のように自然にここにあるような設備。
いちいち使えるか使えないか考えなくてもいいなら、その分節約した思考と時間を、研究に振り向けられる。
その方が、職場全体として合理的であり、オトクなんだと思うのです。
ぼくの仕事は、研究施設の建物を造ることです。
建物の中にある電気設備や空調設備も含みます。
いわゆる「インフラ」ですね。
インフラとは正しくは、インフラストラクチャ(infrastructure)と言います。
structureとは「構造」という意味です。
infraは、「下部の」という意味の接頭語です。
インフラとは「下部構造」という意味なのです。
つまり、インフラとはいろいろな人間活動を「下支えしている」設備だということです。
インフラストラクチャ以外に、infraという接頭語が付く言葉を調べてみました。
infrared=赤外線、infrasound=超低音という言葉がありました。
赤外線は目に見えませんし、超低音は耳に聞こえません。
でも赤外線は肌でほんのり暖かさが感じられますし、超低音も体を揺すられるような感覚を与えます。
建物や設備も同じじゃないか。
直接的には見えたり感じたりしないんだけど、ちゃんとここにあって役立っていることがほんのりと感じられる。
普段は特段に意識しなくてもいいけど、それがちゃんと役立っている。
それがぼくの考える理想のインフラなんです。
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