2009年3月31日火曜日

仕事の原理

こんにちは

フリーターやニートが増えたためか、子どもや若者にしっかりとした職業観を持ってもらうための本がたくさん出版されるようになりました。
たとえば村上龍『13歳のハローワーク』がベストセラーになりましたよね。
この本にはいろんな職業が紹介されています。
風俗関係の仕事まで紹介されていて、なかなか面白い。
もちろん子どもに風俗の仕事をオススメしているわけじゃないけど、きちんとリスクや倫理も説明されていて、ハナから道徳的に全否定していないところがいいです。
説教臭くないのでベストセラーにもなったんでしょうね。

でもぼくは、今あるいろんな職業について紹介したり説明したりすることも大事だけど、もっと仕事の本質的なことも子どもや若者に伝えたいなーと思うのです。
仕事の原理ですね。
どんな仕事に就こうとも、この原理は成り立つ。
この原理を知り、身に着けていれば、どんな仕事に就こうともそこそこ上手くやっていけるというもの。

だって、いろんな職業を知って自分のなりたい仕事を子どものうちに見つけたとしても、その仕事に就けるかどうか分かりませんからね。
だいたい子どもの憧れる職業って、プロ野球選手とかサッカー選手とかアイドル歌手とか、並みの才能と努力じゃなれないものばかり。
よほどの運もなくちゃなれませんよ。
たいていはごくごく普通のありきたりの仕事に就いちゃうわけです。
ぼくだって子どもの頃は電気技術者になるとは思っていませんでしたよ。
行き当たりばったり、成り行きですね、たいていの大人はみんな。
そして、そういうごく普通のありきたりの仕事のことなんか、子どもは知りもしなかったりします。

それに今の子どもたちが大人になる頃、今ある仕事がまだあるとは限りません。
今花形の仕事でも、10年後、20年後は斜陽だったりしてね。
倒産、転職なんか当たり前の人生が待っているんです。
その中で、よりよい人生を自力で造り上げていく力が必要なんだと思います。

岩谷誠治『国語算数理科しごと』日本経済新聞\1500-にもこんなことが書いてありました。

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考えてごらんよ。
美咲(子ども)が、仕事に就くのは10年以上先になるよね。
だから、美咲が学ぶべき仕事というのは今の仕事ではなくて、10年後にある仕事でなければ役に立たないわけだ。
そのころには今は存在しない、当然、今は名前も付いてない仕事がたくさん出てくるはずだよね。(21p)
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たとえ成り行きで就いた仕事だとしても、そこで成功することは大切です。
成功とまで言えなくても、上手くやっていくにこしたことはありません。
仕事とは何かよくわからないために、現実と折り合えず、ふらふらと転職を繰り返したり、ニートになってしまうのは、人生の浪費です。
だからそのために必要な「原理」は身に着けておいた方がいい。
仕事とは何か、その本質を理解しておいた方がいい。

では、仕事の本質とは何か。
岩谷さんはこう言います。

  仕事とは「約束を守ること」だと思っているんだ。(23p)

シンプルですねー。
同じようなことをジャーナリストの日垣隆さんは、「依頼と納品」と言っています。
依頼とは、何をいつまでにやってほしいか合意しておくこと、そしてその見返りは何かを合意しておくこと、です。
見返りは金銭に限りません。ボランティアだって、心の満足みたいな見返りはあるわけです。
依頼とは約束を「決めること」に他なりません。

そして納品です。
決めた約束を守ることです。
納品は物を納めることだけではありません。約束を果たすことすべてです。
決めた期日に、決めた品質で納品し、ちゃんとその対価を支払う。
依頼と納品が確実に履行されるから、信頼が生まれ、社会は安定するのだと思います。

約束を守ること、依頼と納品を常に意識することが、仕事の本質であり、原理なんだと思います。
これさえ理解し、身に着けておけば、どんな仕事でもそこそこやっていけます。
ごくごく当たり前のことなんですが、身に付いている人少ないですよ。
だからこの原理、基本が身に付いているだけでアドバンテージが出る。
子どもにはぜひ身につけさせたい基礎基本です。

もちろん、ぼく自身も実践していますよ。
依頼の時は、期日と品質と対価をよーく合意しておく。
後で、言った言わない、約束が違う、ということがないように。
そして約束の通りに納品です。

仕事だけじゃありません。
全ての人間関係の基本にもなっていると思います。
夫婦でも家族でも、多少緩やかでいいし、緩やかな方がいいでしょうが、約束を守ることは信頼を築くために必要なことでしょう。
よくお父さんは子どもとの約束を「仕事の都合で」なんていってドタキャンしますよね。

あれ、子どもの教育にとって悪いですよ。
もちろんたまにならそういうこともあるでしょうが、頻繁に子どもとの約束を反故にすると、子どもにこの「依頼と納品」という仕事の原理が身に付かなくなります。
とても損なことです。

そう考えると、学校でやることは意外とこの仕事の原理の練習になっているんですよね。
たとえば宿題。
先生は何をいつまでにやればいいのか明確にする。
それを生徒は履行して、納品(提出)する。
そしてきちんと履行した生徒は、褒められ、いい成績をもらう。
たとえば定期試験。
先生は試験日までにこの範囲をしっかり勉強するよう指示する。
生徒は合格点、すなわち納品目指して努力する。
きちんと合格点を採れれば、いい成績をもらい、褒めてもらえる。

最近、学校であまり宿題を出さなくなっちゃったそうです。
宿題出されてもやらない生徒も多いらしい。
ちょっともったいないなーってぼくは思います。
仕事の本質を理解し、その優れた練習機会を放棄しちゃっているんですから。
宿題の意義を語れる先生がいないのかもしれませんね。

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