2009年9月9日水曜日

自由な楽園は不断の努力から

こんにちは

ぼくの職場で嫌な事件が起こってしまいました。
とても残念です。
かつて在籍していた朝永振一郎は、我が職場のことを「科学者たちの自由な楽園」と言っていました。
この事件で、自由な楽園が失われてしまうかと思うと、残念でなりません。
たったひとりの人がおかしなことをするだけで、みんなの自由が奪われてしまうんです。
だから自由とは他から与えられるもの、所与のものではなく、すべての人が不断の努力を続けることでしか得られないものなんだと思います。
『板倉聖宣その人と仕事』(キリン館\2060-)から引用します。

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僕は研究所に入ったときからクビになることを覚悟してやっていた。
しかし、「いつクビになってもいい」といってもね、ハレンチ罪や汚職でクビになったりするのはいやなんだよ。
ガリレオみたいにカッコよくクビになりたい(笑)。
困る人間をクビにするときには、そういうのでクビにするんだよ。
実際には、それが理由じゃないんだけども。
だから俺は、使い込みだとか、婦女暴行だとかはしないと(笑)。品行方正でいくと。
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この本は板倉さんが’95に国立教育研究所(現・国立教育政策研究所)を退官したときの記念誌です。
板倉さんは国立教育研究所の物理教育室長でしたが、仮説実験授業の研究をメインにして、脚気治療の歴史を研究したり、江戸時代の米の生産量から歴史の新事実を発見したり、あまり物理教育と関係ないような仕事を続けてきた。
職場の枠をはみ出しても、自分のやりたい研究、多くの人に役立つ、楽しい研究を続けてきた。
要するに自由にやってきたわけです。
なぜ自由にできたかと言えば、「品行方正」だったからに他なりません。
不自由になるのは、たいていくだらない理由からなんですよ。
くだらない理由で、自分の自由、志をドブに捨てるのは人生の損失なんです。
板倉さんはこうも言います。

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クビになって困るのは、給料が入ってこなくなることでしょ。
それから、官舎に入っていたりすると、官舎から出ていかなければならなくなる。
だから僕は、何年間か給料が入らなくても、何年間かの生活はできるようにしておくと。
それから、家は建てる。官舎には入らないと。
それから、本は自分で買うと。
そういうことで路頭に迷わないようにしておこうと。(216p)
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組織だけでなく、個人としても自由を確保するには、きちんとした人生設計が必要ということなんですね。
自由とは束縛されない、ということです。
官舎なんかに入るのは、金銭的に多少自由になるお金が増えるけど、失うものもあるってこと。
クビになって住むところがなくなってしまったら、自由どころではありません。
自由に生きるためには品行方正、しっかりとした準備。
個人としても不断の努力が必要なんだと、ぼくは思っています。

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