2009年12月29日火曜日

自分という資産


こんにちは

昨日は御用納め。
一昔は御用納めの日は昼過ぎから宴会でしたが、最近は定時まで通常勤務。
とは言え御用納めの日はさすがに重要な打ち合わせなどなく、年休を取ってしまう人も多い。
ぼくは資料が乱雑に積まれた机の上を片付けて過ごしました。
片付けも終わり、定時になったので退勤です。

帰りがけに電気監視員室に立ち寄りました。
彼らは交代で正月も出勤して、キャンパスの電気設備の運転監視をしてくれます。
ぼくは既に電気主任技術者を辞してはいますが、隣のセクションのことでもあるし、近所に住んでいますし正月に遠出もしないので、万が一事故があった時は連絡するよう伝えました。
まあ何もないとは思いますが、監視員の人だって万一の時に連絡が取れる所がある方が安心でしょう。
これもぼくの「余分な仕事」だと思っています。

以前、昼休みにこの監視員室に調べ物があって行ったとき、若い技術員が何やら熱心にパンフレットを眺めている。
除いてみると、投資や外貨取引のものでした。
「へー、投資の勉強してるんだ。面白い?」と聞きました。
彼は目を輝かせて、「100万円で月に20万円稼げるんですよー」と答えました。
20万円というと、彼の月収くらいです。
「毎月君が160時間労働して稼ぐ金額を投資で稼げるとしたら、まじめに働く気がなくなっちゃうねー」と、ぼくは言いました。
詐欺まがいの変な金融商品にだまされないように、やんわりと注意したつもりですが、伝わったでしょうか。

金融工学の研究で、長期的に最大利益を得る投資方法は、すべての株にまんべんなく同金額を投資することである、と数学的に証明されているんです。
そんなことは実際にはできませんが、事実日経株価指数に取り上げられている会社全部に分散投資するような投資信託商品もあります。
すべての株にまんべんなく投資して得られるリターンは、我が国の経済成長率と同等です。
我が国の経済成長率(年率)は、高度経済成長の時代で10%、バブルの頃で5%、近年は1%程度なんです(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4400.html)。
もちろんプロの投資家は成長株を見極めて投資するので、短期的にこれより高いリターンを得られるでしょう。
それでも近年は年利5%程度がいいところのようです。

4人程度の家族があまり不足なく暮らしていくためには、年収500万円くらいあるといいですね。
500万円を投資で稼ぐためには、原資としてどのくらいのお金が必要か計算してみましょう。
投資利率を5%とすれば、これで割り戻すと500万円÷0.05=1億円です。
有能な投資家が1億円を原資として投資をすると、年に500万円稼げるということです。
つまり、1億円もの現金資産を持つ人が、最高度の投資の知識と技術を持ち、日々投資に専心して稼げる金額がやっと500万円足らず、ということなのです。
投資に頼って家族が暮らしていくために必要なお金を稼ぐためには、最低1億円の資産を持っている必要があるのです。
まあ、普通の人は1億円の現金資産なんか持っていないですよねー。

これを逆に考えてみます。
年収500万円稼ぐサラリーマンはごく普通にいます。
500万円稼ぐためには、何かを原資にしなくてはいけません。
サラリーマンの原資は何なのでしょうか。
それは「自分自身」に他なりません。
サラリーマンは自分自身を原資にして、労働という投資をして、収入を得ているわけです。
ですから、年収500万円のサラリーマンの自分自身の資産価値は、年利5%の時代であれば1億円であると計算できます。

自分の年収が500万円だと考えると、あまり嬉しくないかもしれません。
でも、自分の資産価値が1億円もあると考えるとちょっと嬉しくなりませんか?
自分は1億円の価値があると思えば、自分を大切にしたくもなるでしょう。

橘玲『知的幸福の技術』幻冬舎文庫にこうありました。

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経済合理的に考えるならば、元金100万円しかない人は資産運用などせずに働いた方がいい。
年10%の運用益をコンスタントに達成するのは(投資の)プロでも困難だが、年間10万円の追加収入を得るのはさほど難しくない。
その上投資は損をするリスクがあるが、働けば確実に利益が増える。
効率的に投資できるのはまとまった元金のある人だけなのだ。(115p)
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年10万円余分に稼ぐということは、自分自身の資産価値がそれだけ上がるということでもあります。
10万円余分に稼ぐためには、それだけ労働時間を増やすので経験値が上がりますし、スキルも上がります。
つまり、経験値やスキルこそが自分自身の資産価値を上げるものだと言うことができます。

さてさて、ぼくも自分自身の資産価値を上げるべく、今年もがんばってきました。
もちろんやみくもに苦しみながらではなく、楽しみながらね。
ぼくの職場は公務員系なので、実際の働きではなく人事院勧告など政治的なもので賃金が決まってしまうので、年収自体は昨年よりダウンしました。
ちょいと残念ではありますが、政治だから仕方がない。
それでも、スバラシイ人に出会ったり、その人たちと一緒にいい仕事を残したり、もちろん自分自身も楽しく努力して、確実に去年よりもいい1年だったなーって思っています。


写真は、XFEL加速器で造られた高品質電子ビームを既存蓄積リング棟へも打ち込めるようにするための電子ビーム輸送トンネルです。
もう間もなく完成。

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