こんにちは
先週、日経新聞の取材を受けました。
次世代スパコンは、マシンは当然最先端技術を使っていると思うが、それを収納する建物にも最先端技術を使っていると思うので、それを聞きたい、とのこと。
それでスパコンプロジェクトに最初から関わり、建屋建設を牽引してきたぼくが取材を受けることになったわけです。
取材を受けるのも初めての経験だし、コーヒー断ちの禁断症状で頭の回転がボーッとしていて、記者の方の質問にスパッと答えられませんでした。
当然そらんじているはずの基本的な数値も、スッと出てこなくて困りました。
それに加えて競争の激しい分野での国家プロジェクトですから、秘密にしなければならないこともあり、言論統制(?)されていたことも頭の回転を鈍らせました。
そんなこんなで伝えたいことを十分伝えられず、取材の後はかなり落ち込みましたよ。
新聞に掲載された記事では、ほどよくまとめられていて安心しましたが。
ぼくの伝えたかったことは、こういうことです。
残念ながら建屋建設には最先端技術は使っていません。
なぜなら建物は最先端のマシンを支えるインフラだからです。
安定したインフラが求められていると考えるからです。
スパコンプロジェクトが始まった頃に、高橋団吉『新幹線をつくった男』(小学館)を読みました。
東海道新幹線を実現させたエンジニア島秀雄さんの物語です。
この本を読んで新幹線が成功した秘訣が分かりました。
新幹線も大プロジェクトだったわけです。
大プロジェクトを成功させるには、
proved techniqueの集積
が大切だ、ということがわかりました。
proved techniqueの集積
が大切だ、ということがわかりました。
provedとは「実証された」「確立された」という意味です。
新幹線は新規な技術を使ったものではなく、実証された技術、確立された技術を集積したものだったんですね。
つまり、決して新奇な技術を使うのではなく、安定して信頼できる技術を上手く組み合わせることです。
まさにインフラとしての技術を支える根本的思想だと思いました。
新奇な技術開発にはリスクが伴います。
安定的に使える技術になるまでは失敗も避けられませんし、時間も読みにくい。
もちろん開発予算だって必要ですが、見込み通りにならないってことはよくある話。
言ってみれば「アテにならない」ものなのです。
プロジェクトの三要素とは、目標と期限と予算です。
だから、プロジェクトを成功させるためには新奇技術に頼ってはいけないのです。
期限と予算の読み切れない新奇技術は、プロジェクトの障害にすらなり得ます。
スパコンプロジェクトには、地球シミュレータという先行した施設がありました。
proved techniqueを知るために、ぼくは何度も地球シミュレータ施設を見学させてもらいました。
技術士会の見学、電気技術者協会での見学、もちろんスパコンプロジェクトメンバーと一緒に。
最初に行ったのは技術士会衛生工学部門での見学会だったと思います。
その時に、地球シミュレータセンターの建屋施設担当の方や電気主任技術者の方と知り合いになりました。
ぼくは見学会の時に、積極的に質問したりして顔を売る、名刺交換をする、見学後すぐに電子メールを送るようにもしています。
こうして10回以上も見に行き、センターの方の話を聞き、運用開始後の状況も教えてもらい、次世代スパコンでも踏襲すべきところ、改善した方がいいところを学んでいきました。
建屋建設工事に着手してからも、施工スタッフを引き連れて見学させてもらいました。
その時センターの方に「質問は関口さんにしてください。既に関口さんの方がお詳しいので」なんて言われちゃいましたー。
写真は計算機室です。
高さ1.5mのフリーアクセスフロアになります。
マシン同士をつなぐ大量のケーブルスペースになるとともに、冷却空気のサプライチャンバにもなっています。
この技術も地球シミュレータセンターに学んだもののひとつです。
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