2010年3月4日木曜日

自尊心

こんにちは

いきなりですが池田清彦『そこは自分で考えてくれ』角川学芸出版¥1400-から引用します。

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今の先生は夏休みも学校に行かされているらしい。
生徒もいないのに学校に行ってどうするのか。
クーラー代がかかるだけではないか。
学校がはじまれば、教育委員会とモンスターペアレントという二種類の敵に挟撃されて防戦を余儀なくされるのだから、夏休みぐらいゆっくりさせてやればよいのにと私は思う。
オレたちの税金でやとっている公務員である教員を遊ばせてなるものかと思っている非寛容な人が結構多いのかもしれないね(そういう人に限って税金を払ってなかったりしてね)。
しかし、人間は機械ではないから、いじめられればいじめられるほど、働かなくなるのである。
働いたふりだけはうまくなるかもしれないけどね。
かくして現場の教師をしめつければしめつけるほど、教師は真面目に働かなくなる。(32p)
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今や教師受難の時代ですね。
それで教育効果が上がるならまだしも、反って教師のやる気を削ぎ、教育効果を下げているとしか思えませんよ。
とても損なやり方だと思います。

子どもをダメにする育て方をお教えしましょう。
それは「お前はバカだ」「ダメだ」「もっとちゃんとしろ」と言い続けて育てること。
こう言い続けて育てると、確実にバカでダメでだらしのない子どもに育ちます。
なぜなら子どもの自尊心を破壊するからです。
親や教師は子どもをもっとしっかりと育てたくて、往々にしてこう言い続けてしまう。
善意で言っていると勘違いしてしまうのです。
でも逆効果なんですよ。

自尊心とは自らを尊ぶ心です。
他人から否定的評価を受け続ければ、自分を尊ぶ心なんか生まれるわけがありません。
結果、「どうせぼくはバカなんだ」「ダメな奴なんだ」「生きる価値なんかないんだ」と思うようになる。
そう思い込んだ子どもが、ちゃんとしよう、しっかりしようと思うわけがありません。

もちろん時々は叱らなくちゃならないこと、子どもを正さなければならない時もありますよ。
そういうときはちゃんと叱る必要がある。
でも子どもの側に自尊心が育っているからこそ、叱ることも効果的になるのです。
自尊心のない子どもをいくら叱っても、のれんに腕押しになるだけです。

これは子どもだけではなく、大人だって同じです。
バカだ、ダメだ、ちゃんとしろと言われ続けて、やる気になる人間なんていません。
大人だから、叱られない程度に適当にやりすごすようになるだけです。
よくダメな部下をガミガミ叱るばかりの上司がいますが、これは部下をダメにしているだけです。
いい上司はたとえ叱ったとしても、結果的に最後は褒められるところまで部下を持って行っています。
ぼくのよく怒る元上司もそうでしたよ。

自分は最も大切な資源(リソース)ですが、何よりも大切なのは自尊心だと思います。
大人だって、自尊心を育み、守るために自分でも努力して行かなくちゃいけない。
リスクを避け、致命的な失敗をしないよう注意して、小さくてもいいから成功体験を重ねる。
オレってなかなかやるじゃん、という気持ちを持てるようにする。
そしてやがては周りの人たちにも認められるようになる。
自尊心が高まり、やる気も十分。
心が健康になります。
すると身体だって健康にもなるわけです。

自尊心が満たされた人は、周りの人たちも大切にするようになります。
だって、周りの人たちは自分を助けてくれる人なんですから。
よりよく助けてもらうためには、周りの人たちの自尊心を損なうような言動は慎まなければなりません。
そんなことをすれば、反って自分が損であることが分かっている。
もちろん不正なことや邪悪なことには厳しく対処しないといけませんよ。
一部の人が不正である場合、それを放置すると、その他大勢の自尊心を破壊しますからね。

現代日本人の多は、人は厳しくすればちゃんとするものだ、と誤解しているようです。
それはたぶん、自分たちもそういう扱いを受けており、自尊心が破壊されているからなんかないか。
それで、他人も同様に扱ってしまう。
そう扱うことによって、自分の不満を少しでも解消しようとする。
損得や合理性よりも、そっちを優先してしまう。
それは自らの自尊心がないからなんだと思います。

さて、学校の先生の話に戻ります。
教育委員会もモンスターペアレンツも、自尊心を育むという重要な教育原理を知らないようです。
自尊心を破壊された教師はどうなるでしょうか。
当然、子どもたちの自尊心を破壊しようとするでしょう。
そのために子どもの些細な欠点ばかり見つけるようになるでしょう。
欠点をあげつらって、直接的には「バカだ」「ダメだ」とは言わないでしょうが、そういうメッセージを子どもへ送り続けるでしょう。
ああ恐ろしい。。。

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