2010年3月16日火曜日

偉人伝を読む年代


こんにちは

理研和光キャンパスに建設が始まった脳センター動物解析研究棟。
この建設予定地に電話線など重要なインフラケーブルが埋設されており、これを盛り換えないと建物が建たないという話を、前便でしました。
ようやくすべてのケーブルの盛り換えが完了しました。
昨日、最後に残った古い光ケーブルを切断したんです。
このケーブル、使っているのかどうか誰に聞いても分からなかったものです。
でも用途はLAN用だと分かっていましたし、基幹LANケーブルは新たに別のルートで配線済みだったので、まあ大丈夫だろうとは思っていました。
でもいざ切断するときにはドキドキしましたよ。
その後1時間、誰かから苦情の連絡がくるかどうかハラハラ待機していました。
誰からも何もなかったので、ホッとして東大で開催される研究会へと向かいました。

このケーブル盛り換えを仕切ってくれた若い代理人、なかなかいい仕事をしてくれました。
若いのに肝が据わってるんです。
すっかり気に入ってしまいましたよ。
彼は40歳ちょい手前の年齢。
いい仕事をしてくれたお礼に、そして引き続きいい仕事をしてもらいたいという気持ちを込めて、『栄光なき天才たち』というマンガをプレゼントしました。

このマンガの内容は偉人伝です。
今は全巻とも絶版のようですが、アマゾンマーケットプレイスなど古本で見つけたら、ぜひ皆さんも買っておくといいですよ。

作・伊藤智義 画・森田信吾
『栄光なき天才たち』1巻 集英社文庫\650-
 古橋廣之進、サチェル・ベイジ、人見絹枝、ドルトン・トランボ
 サルバドル・サンチェス、樋口一葉、吉岡隆徳、鈴木商店、東大野球部

森田信吾
『栄光なき天才たち』2巻 集英社文庫\650-
 澤村英治、川島雄三、島田清次郎

森田信吾
『栄光なき天才たち』3巻 集英社文庫\650-
 アベベ、円谷幸吉、マンチェスター・ユナイテッド

作・伊藤智義 画・森田信吾
『栄光なき天才たち』4巻 集英社文庫\650-
 鈴木梅太郎、北里柴三郎、山極勝三郎、野口英世、理化学研究所

4巻目には科学者の伝記が描かれていますが、ぼくの勤める理化学研究所(通称;理研)も取り上げられています。
理研は1917に設立された日本で初めての自然科学研究所です(http://www.riken.go.jp/index_j.html)。
今でも「リケンのわかめスープ」など<リケン>の名を付けた企業がありますが、それは戦前に理化学研究所で発明された特許を商品化した会社なのです。
日本で初めて、世界で2番目にサイクロトロン(http://www.rarf.riken.go.jp/newcontents/contents/about/history.html)という加速器を造ったのも、仁科芳雄博士が率いる理研の研究者たちです。
このサイクロトロンは終戦時、アメリカ軍によって原爆研究に用いられる恐れがあるとして、東京湾に沈められました。
そういったことも、4巻目には描かれています。

最近の子どもはあまり「偉人伝」「伝記物」の本を読まなくなってしまったようです。
それが子どもが大きな志を持たなくなった原因の一つにもなっているんじゃないでしょうか。
子どもの頃に偉人の話を読み、憧れを持つことは大切な成長の一過程だとぼくは思います。
このマンガは、小学校高学年から中学生くらいの子にぜひ読んでもらいたいマンガです。
学級文庫に置いて欲しいですし、家庭にもひとそろいあるといいです。

森信三『一生の羅針盤--偉人伝記のすすめ--』に、偉人伝を読む意義が説かれています。
とてもいいことが書いてありました。
それは、

 人生には偉人伝を積極的に読まねばならない時期が二度ある

ということ。
一度目は、少年期、12歳頃から18才頃にかけて。
この時期は「立志」の時期ですから、偉人の偉業に触れて、自分もこうありたいと志を立てることが大事。
まー当然で、ぼくもそう思って我が子のために偉人伝の本を買いそろえつつあるんです。
子どもが偉人伝を読むのは当然かつ必要なことなんです。

で、二度目は、中年期、35才頃から40才頃にかけてなのだと書いてありました。
この二度目の時期についてはぼくも理解していませんでしたので、びっくりです。
なぜ大人が偉人伝を読まねばならないのか?

森氏によると、この時期は「発願」の時期なんだそうです。
20才頃から35才頃までは、社会人として自分の立ち位置を確立するためにがむしゃらにやってきた。
ようやく一通りの苦楽を味わい、一人前になれたと感じる年代です。
つまり、35歳頃までは「自分のため」に生きる時期なんですね。
それが終わる時期にもう一度偉人伝を読むことが大事だと、森氏は言うのです。

それは、一人前に自立した後は、その能力を活かして今度は人のため社会のために生きなければならない年代になるからです。
自分は人生の後半戦にいかに生きていくべきか「発願」する。
その時の指標となるのが偉人の生き方なんですね。
だから偉人伝を読まねばならないのです。

そんな思いもあって、もうすぐ40歳になろうとする代理人さんに『栄光なき天才たち』をプレゼントしたってわけなんです。
一緒にいい仕事をしていきたいと思っています!


写真は切り替え中のケーブル。
心線1本1本を手作業でつなぎ換えていきます。
けっこう楽しかったなー。

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