2008年10月22日水曜日

子どもは偏食

こんにちは

我が子はっちゃんはとっても偏食。
野菜はもちろん、肉は食べないし、魚もダメ。
ご飯とウインナーと果物くらいしか食べないんです。
幼稚園の給食もご飯しか食べていないみたい。
ま、元気なんだからそれでもいいかって思っています。

友だちのお子さんが偏食で困っています。
いやなに、偏食自体に困っているわけじゃなくて、給食で食べられないものが出たとき、先生に食べるまで解放してもらえないので困っているのだそうです。
時には放課後まで残されることもあるとか。。。
確かに食わず嫌いということもあるでしょうが、嫌々食べて偏食って直るのでしょうか?
嫌々食べたら益々それが嫌いになるのが、ものの道理ってもんだと思います。

ちょっと免疫の話をします。
ぼくたち人間の体は免役によって病原菌やウイルスなどから守られています。
この免疫力はすべての動物にあるかというと、そうではありません。
魚(硬骨魚類)より高等に進化した動物にしか免疫力はないのです。
サメ(軟骨魚類)や軟体動物、昆虫などには免役はないのです。
なぜ魚以上に進化した動物には免疫力が備わったのでしょうか。

生物は魚に進化してから急速にその生活圏が広がり、またそれぞれの環境に適した形に進化していきました。
これを進化論では「適応放散」と言います。
適応放散するためには、いろいろなエサを食べる必要があります。
いろいろなものをたくさん食べてたくさん子孫を増やせるようになったから、適応放散ができるようになったのです。

魚以前の進化段階にいる生物は、非常に狭い範囲にしか住めず、いつもいつも同じエサを食べています。
たとえばナマコは浅い海の砂地にしか住んでおらず、一生砂に着いたバクテリアばかりを食べて生きています。

それに比べて魚はいろいろなの種類のエサを食べるように進化しました。
そのことによって、すぐ目の前にある食えそうな物はなんでも食べるようになった。
そこにあるエサを食べればいいので、どこにでも住むことができるようになりました。
ところが、何でも食べられると言うことにはリスクも伴います。
エサというのは基本的に他の生物です。
毒を持っているかもしれませんし、食べることを通じて寄生されてしまうかもしまいません。
そういったリスクに対抗するために、免疫も進化したのです。
どんなエサを食べても自分の栄養にできるように、免疫も進化してきたのです。

ところで赤ちゃんは母乳しか飲みません。
母乳ばかり飲んでいる赤ちゃんは、別に偏食でもないし、栄養不良になるわけでもありません。
母乳の代わりにミルクは飲めますが、母乳より吸収効率が悪いそうです。
母乳しか飲まない赤ちゃんは、究極の偏食ですね。

赤ちゃんが少し成長し、1歳を過ぎる頃から離乳食を食べはじめます。
大人は野菜もたくさん食べないと体の調子が悪くなります。
だからといって赤ちゃんにも野菜を食べさせようとしたりします。
すりつぶしたりして、スプーンで口の中につっこむ。
でもあまり早い時期に植物性のもの、たとえばほうれん草やニンジンを与えても、赤ちゃんの体の側に植物性のものを消化吸収できる準備ができていないのです。
たとえすりつぶしてあったものでも、下痢してしまってそのまま出てきてしまいます。
赤ちゃんの離乳食としては、あまり消化が必要ない炭水化物や動物性のものの方が適しているのです。

生物学者エルンストヘッケルは「個体発生は系統発生をくり返す」と言いました。
赤ちゃんが胎児から育ってくる時には進化の道筋をもう一度なぞってくる、という意味です。
確かに妊娠初期の赤ちゃんは、最初魚のようであり、動物のようになってだんだん人間らしくなってきます。
姿形と同様に、免疫など体のシステムも進化をなぞるように徐々に完成していきます。
だから赤ちゃんが食べられるものは、母乳->炭水化物や動物性の離乳食->植物性の離乳食というぐあいに、だんだんとバリエーションが広くなってきます。

そう考えると、子どもの偏食も理解できるのではないでしょうか。
子どもがあるものが食べられないのは、まだそのものを消化できるだけの準備が体に出来上がっていないから。
それを食べないと栄養不良になるというなら無理にでも食べさせる意義はあるでしょうが、そうではないなら別に食べなくても困ることはありません。
もしそれを食べないと栄養不良になってしまうとしたら、それは偏食の問題ではなく、医療の問題になると思います。
赤ちゃんに母乳ばっかり飲んでちゃダメ、とは言わないのと同じに、子どもの多少の偏食はもっと大らかに考えていいんじゃないでしょうか。

ぼく自身の経験でも、小学3年生くらいまではトマトとかキュウリとかは苦手でした。
給食で出ても絶対に残していました。
ところが4年生になる頃、急に食べられるようになったんです。
給食の他の食べ物を食べてもまだお腹が空いていた。
じゃあトマトも食べようかなと思って食べたら、美味かったんです。
あんなに嫌いだったのに美味いと感じるのはどうしてなのか不思議でした。
きっとそれは、ぼくの体がトマトやキュウリも十分消化できるだけ成長したからなんだと思います。

そんな経験をしていたので、ぼくが教員だった時には偏食の子に給食を無理強いはしませんでした。
まだ進化の途中なんだと思っていました。
そのうち食べるようになるだろう、と思っていました。
元気なら問題なし、なんです。

でもちょっとは食べてみて欲しいという気持ちもありました。
食わず嫌いならちょっと挑戦して欲しい。
なので、ほんのちょっと、小さじ1ハイくらいよそってあげました。
嫌いなものがたくさんあったら「うげ~」ですが、ちょびっとだったら一口食べてみようという気になるかもしれません。
ちょびっとでも食べられれば自信にもなります。
あんがい美味しいことが分かるかもしれません。
それに、たくさん残して残飯にするのも心理的負担になりますよね。
ちょびっと残すだけなら、罪悪感も少ない。
その子が食べない分は、もっと食べたい子が食べればいい。

というわけで、我が子はっちゃんも順調に元気にスクスク育っているので、偏食はあまり気にしていません。
食べられないおかずは「食べてみる?」と聞いてみることは必ずしますけどね。
でもたいてい「いらなーい」なんですけど。。。
 
免疫の進化については、谷口克『免疫、その驚異のメカニズム』ウエッジ選書\1200-にありました。

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