2008年10月11日土曜日

オーケストラは工業製品

こんにちは

ピアノはクラッシック音楽に欠かせない楽器です。
この楽器、かなり昔から存在すると思っていたら、意外と新しい楽器なのです。

ピアノは、以前はピアノフォルテと呼ばれていましたが、小さい音(ピアノ)から大きい音(フォルテ)まで幅広く表現できるのが特徴です。
ピアノには、ピアノ線が張ってあります。
このピアノ線をハンマーで叩いて、ピアノは音を出します。
鍵盤を強く叩くと、とても大きな音がします。

大きな音を出すためには、ピアノ線をピンと強く張らなくてはなりません。
ピンと張る力のことを張力といいますが、ピアノ全体では20トンもの力で引っ張っているのです。
この大きな力を支えているのは、鉄でできたフレームです。
鉄製のがっしりとしたフレームが作れないと、ピアノは作れないのです。

そもそもピアノ線自体、鋼鉄製です。
いったん調律したら、そう簡単に音が狂っては困ります。
大きな張力にも耐えて、延びたり切れたりしてはいけません。

ピンと張ると、音は高くなってしまいますから、低い音を出すためには太いピアノ線を張る必要があります。
ピアノのふたを開けて低い音のピアノ線を見ると、一本のピアノ線の周りに太いピアノ線がぐるぐると密に巻き付けてあります。
こんな精密な加工もできないとなりません。

つまり、ピアノは「工業製品」なのです。
鉄工業が発展し、安定な鉄製品が製造できるようになったのは、産業革命以降です。
産業革命は西暦1800年頃に起こりました。
この頃になってようやく、安定した鋼鉄が製造できるようになったのです。
ピアノもこの頃できた楽器だったのです。
ですから、せいぜいまだ200年程度しか経っていない楽器なのです。

ではなぜピアノは大きな音を出す必要があったのでしょうか。

産業革命以前、音楽は貴族が室内楽として楽しむものでした。
少人数で聞くわけですから、それほど大きな音を出す必要がありません。
ピアノの原型となる楽器はチェンバロですが、弱い張力で張った弦を鳥の羽ではじくだけの楽器です。とても小さな音量しか出ませんが、室内楽なら十分でした。

産業革命によって、ブルジョア階級という市民が生み出されました。
ちょっとお金を持っていて、余暇も楽しめる人々ですね。
そういう人が音楽を楽しみたくなったわけです。
この頃初めて、貴族以外にも音楽を楽しみたいという需要が生まれたのです。

ブルジョアの人たちはちょっとお金を持っていても、貴族ほど豪勢なことはできません。
なので大きなホールに集まって、みんなで音楽を楽しむようになったわけです。
すると、室内楽程度の音量では小さすぎて聞こえません。
大きな音量を出す仕組みが必要になりました。

そこで発明されたのが「オーケストラ」。
バイオリン、チェロなどそれ自体で大きな音が出ない楽器は、演奏者数を増やすことによって大音量にしたんですね。
ピアノは鉄工業のおかげで、大きな音を出す楽器へと変身できたわけです。

オーケストラもずっと昔からあると思っていたら、これも産業革命以降に発明された200年程度しか経っていないものだったんです。
コンサートホールでオーケストラの音楽を聴くなんて、お金持ちの趣味みたいに思っていましたが、小金持ち程度の趣味だってことです。
その意味で、オーケストラも近代が生み出した工業製品のひとつと言ってもいいかもしれませんね。


ピアニストの中村紘子さんの講演会を聴いて、それをヒントに、ちょっと調べて書いてみました。

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