2010年11月15日月曜日

マニュアルを読め、マニュアルを作れ!

こんにちは

我が社の新人君に「帝王教育」を施しています。
入社したばかりなのにあちこち連れ回して、忙しくさせています。
伸びしろの大きい30代までは、忙しいくらいの方が育つんです。
それに何たってぼくはまもなく転勤?ですからー。

先日も配電盤の工場立ち会い検査に連れて行きました。
案の定、彼は手ぶらで工場へやってきました。
しめしめ。
検査が始まるときに、ぼくは彼に質問しました。

 検査と言うからには、何かを基準にして合否を決めるわけだよね。
 その基準は何だろう。

彼は「しっかり作ってあるかどうか見る」とか、抽象的な答えを言いました。
しめしめ。

 あのねー。ぼくらはこの配電盤を設計図に従って作ってもらっているの。
 受注者は設計図に基づいて見積をし、製作したわけ。
 設計図と照合してその通りに作ってあるかどうか検査する。
 だから、設計図は必ず持ってこなくちゃダメだよ。
 あるいは読んでくる。頭に入れてくる。

 さらに設計図には、こう書いてある。
 特記されている以外は『国土交通省共通仕様書』による、って。
 だから『共通仕様書』も持ってこなくちゃ。
 今回の検査に関連する部分を、事前に読んでくると予習になっていいよ。

工場の人に『共通仕様書』を出してもらって、読むべき箇所「機材の試験」のページを示しました。
そして、検査には明確な基準があること、それに従って合否判定することが大切であることを、彼に伝えました。
その上で、より使いやすく、安全にするにはどうしたらいいかを、現物を見ながら検討する。
それが工場立ち会い検査の意義であると言いました。

『共通仕様書』は公共工事に関するマニュアルです。
工事のマニュアルは過去の失敗や事故の反省のもとに作られているものです。
マニュアル通りに作れば、失敗する確率を小さくすることができます。
少なくとも安全に関しては失敗しないはずなんです。
だから、先ずはマニュアル通りに作ること。
そのためには、マニュアルをしっかり読むことです。

仕事のほとんどはOJT(オンジョブトレーニング)で修得していくものです。
でもただ流れてくる仕事に対応しているだけでは、実力は身に付きません。
その仕事の「意味」を理解しながら、経験して行かなくてはいけないと思っています。
仕事の意味を理解するための有力なツールが、マニュアルです。
ぼくの仕事、建設技術者にはしっかりしたマニュアルが揃っているんです。
これを活用しなくちゃ。

『共通仕様書』も分厚い本です。
これを全部読むのは大変だし、その必要もない。
今やっている仕事に関連した部分だけ拾い読みすればいい。
工場立ち会い検査だったら「機材の試験」の部分ですね。
そうやって、その場その場で必要な部分を読む。
同じ箇所を3回も読んで仕事に対応すれば、マニュアルは自分のものになります。
マニュアルが身に付けば、判断に迷うことが無くなり、仕事のスピードが上がります。
当然、完成してからの不具合も減り、事故確率も低くなる。

世間では「マニュアル主義」とか言われて、マニュアルを馬鹿にする風潮があります。
でも少なくとも技術者にとっては間違いです。
マニュアルをとことん使い倒すのが正しいのです。
マニュアルを馬鹿にする人ほど、その時々の感情や思いつきで仕事をすすめてしまい、失敗を招いているんです。

吉越浩一郎『会社を踏み台にする生き方』マガジンハウス¥1429-から引用します。

###
ビジネスマンは、目の前の遅れを取り戻すために汗をかくのではなく、長く利用できるシステム作りのためにこそ汗をかくべきだ。
その日、その日の、目の前にある”作業”に費やす時間と労力を、そのまま”作業のシステム作り”にあてれば、仕事のやり方が効率化される。
そして、会社全体がいい方向に進むだけではなく、自分自身も長期的には必ず楽になる。(54p)
###

システム作りとはマニュアル作りと読み替えてもいいでしょう。
過去の遺産であるマニュアルを身に着けた後、自分でもマニュアルを作っていく。
今あるマニュアルだけではどうしても自分自身の仕事に完全にはフィットしないものです。
だから自分自身が活用できるようにしていく。
仕事を毎回試行錯誤でやらなくていいようにマニュアル化していくんです。
常にそういう意識をもって仕事に当たる。
それは仕事をシステマティックにしていく方法だから。
そうしていけば、失敗も減り、仕事も楽にできるようになります。
そしてその中から他の人も真似できる「技術」が生まれてくるんだと思うのです。

さてその後の新人君、いつも『共通仕様書』を携行するようになりました。
素晴らしい。
時々、今はここを読むといいんだよ、とアドバイスしたりしています。
早く独り立ちしてねー。

0 件のコメント: