2008年12月29日月曜日

10歳は新車

こんにちは

我が家の小さな庭で、ほんのささやかな畑を作っています。
果樹も何本か植えています。
植物を育てていて分かったのは、苗のときに手をかければよく育つ、ということです。
苗のときはちょっと油断していると虫が着いちゃって、成長が遅くなったり、下手すると枯れてしまう。
ほんの数日見ないでいると、あっという間に葉っぱがなくなっちゃったり。
だからこまめに虫をつぶしたり、ちょっと殺虫剤を使ったりする必要がある。
苗の時期を過ぎると、ホントに丈夫になります。
ちょっとぐらい虫が着いても、株全体に影響しない。
放っておいても大丈夫。

子育ても同じだと思うんですよね。
子どもが小さいうちはマメに手をかける。
虫がつかないように気をつけるわけです。
ある程度大きくなったら手を離す。
多少虫がついてもいいし、その方が反って丈夫になる。

ではいったい何歳ぐらいから、手を離すことを始めたらいいのか。
ぼくは「10歳を目安にする」といいんじゃないかって思っています。
10歳からは徐々に子どもの意思を尊重し、子どもに任していきたい。
親が直接手をかけるのは10歳、小学4年生までだと考えているのです。

ぼくが小学校の教師だったとき、一番面白かったのは4年生を担任していたときです。
4年生になると、論理的な思考ができるようになる。
屁理屈が言えるようになるんですね。
だから、ちょっと何かを教えるとそれを自分で発展させることができるんです。
打てば響く、といった年齢なんです。
これは6年生よりも、中学生よりもそうなんです。

この年齢は、昔から「9歳の壁」と言われています。
9歳の時にきちんとした教育すると見違えるように成長するけど、いい加減だと成長しない。
すなわちそれが、9歳の壁なんです。
9歳の壁を上手に乗り越えられると、しっかりとした子どもになるんです。
9歳の壁を乗り越えられた10歳の子どもだけが、自分の力で人生をスタートさせることができるのだと思うのです。

『Dad-Garage』英治出版\1100-に、ホテル・ドゥ・ミクニのオーナーシェフ三國清三さんのインタビューが載っていました。
三國さんは、小学3年~6年生の子どもに「キッズシェフ」という味覚の授業をボランティアで行っています。
子どもたちの味蕾を開花させ、その味覚を鍛えることが目的の授業です。
三國さんは次のように言います。

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8歳~12歳の間に人の一生の味覚が決まります。
講演などで私がよくいうたとえなんですが、小学三年生の子どもの体というのはいわば新品の車で、新品のエンジンがついている。
ガソリンも満タン。
でも、それだけでは車は始動しません。
誰かがキーを挿して、回して、エンジンに点火する必要がある。
味蕾から受け取る刺激物、酸っぱ味や苦味といった味がそのキーの役割、つまり、脳を始動させる役目を果たしているんですよ。
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子どもを新車に喩えるって、いい表現ですね。
確かにこの時期の子どもは、ピカピカの新車のようです。
でもそれだけじゃいい車にならない。
エンジンをかけて、十分慣らし運転をする。
慣らし運転の時期が過ぎたら、その性能を発揮できるドライビングコースを走る。
そうやって新車は鍛えられていくんです。

子どもも同じ。
ピカピカの新車は、誰かにキーを挿してもらってエンジンに点火してもらわなくちゃならない。
その役割は親じゃない方がいいんですよね。
子どもが尊敬できる人にやってもらった方がいいと思っています。
その方が子どもはいい車になれる。
親がいつまでも補助しているんじゃ、子どもは自分の才能を発揮できる道へ出て行くことができない。
その時期が8歳から12歳だって三國さんは言うのです。
三國さんは子どもたちのエンジンキーを回すために、キッズシェフの授業をしているんですね。

じゃあ、親の役割は何なのでしょうか。
ぼくは親の役割は、新車を完成させるまでなんじゃないかって思うのです。
新車にもピンからキリまでありますよね。
なるべくなら高級車に仕上げたい。
高級車ならよりすばらしいコースを走れるようになる可能性が大きいと思います。
高級車じゃなくても、せめて欠陥車にはしない。
コースに出て、故障して止まってしまわないように。

だから子どもが10歳くらいになるまでは、親は一生懸命手をかけてやる。
それに10歳くらいまでは子どもも親の言うことを聞いてくれます。
そういう発達段階にあるんです。
親のコントロールが効くこの時期までに、しっかりした躾をするし、基礎的な知識、技能を身に着けさせる。
そうすれば、ピカピカの新車ができあがるんじゃないかと思っています。
そしてあとは、チューンナップは素晴らしい誰かにゆだねる、ゆだねることができるようにしたいですね。

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