2009年5月3日日曜日

レシピを創れ

こんにちは

ぼくは普段ほとんどテレビを見ませんが、出張に行くとホテルでボーッと見ることがあります。
ボーッと見てたら、グッチ裕三が出ていました。
グッチさんはコメディアンだと思っていたら、最近は料理人としても有名なんですね。
その番組でグッチさんが言うことには、

 料理作りが200を越えたとき、
  料理店で美味い料理を食べたら
   すぐそのレシピが想像できるようになった。
 どんな素材を使っているか、
  調味料は何をどれだけ使っているか。

なんだって。
さすがですねー。
やっぱり意図的に経験を積むと、料理の「原理」が見えてくるんですね。

ぼくの仕事のメインは、新しい研究施設や実験施設を造ることです。
その施設ごとにだいたい1年から3年のプロジェクトとなります。
プロジェクトごとに違う人たちとタッグを組んで仕事を進めます。
違った会社、違った経験を持つ人たちです。
その人たちとぼくは、1年から3年くらいつきあうことになるわけです。
一緒に仕事をして、プロの仕事ができる人とできない人がいることが分かります。

その人がプロかどうか見わける方法があります。
それは次のような質問をしてみることです。

 ・この仕事、いつまでに完成する?
 ・この仕事、いくらでできる?

この質問に即答できる人はプロの腕前を持っている人です。
検討します、とか、社に戻って上司と相談してきます、なんて言う人は失格。
たとえ名刺に「課長」とか「主任」とかの肩書きが書いてあっても、とてもその職位にふさわしいプロの仕事ができる人とは思えません。
プロの仕事ができる人は、上の質問に即答でき、さらにその仕事が完成してみると、ほぼ言ったとおりの期日に、言ったとおりの金額で、必要な品質のものができあがるのです。
つまり、プロの腕前とは、ひとことで言えば「概算=見積もりができること」なんです。

概算ができるためには、

1.どのような方法でやればよいかを知っている
2.それにいくらかかるか知っている
3.それがいつまでにできるか知っている

が必要です。
つまり、「仕事のレシピ」が作れるってことですね。

これらは互いに関連しています。
方法が決まらないと、コストと期日も決まりません。
また、コストが決まっているのなら、それによって適切な方法を選択する必要があり、コストと方法が決まれば期日も決まります。
期日が指定されているなら、そのためにかけられるコストを見込んで方法を選択しなければなりません。
おおよそプロの仕事とは、この三つについて知識と経験に裏打ちされているものだと思います。
だから上のような質問にも即答できるわけなのです。

プロの仕事ができる人と一緒に仕事をすると、ホントに気分いい。
何が気分いいかというと、手もどりが少ないのです。
手戻りとは、あるやり方で仕事を進めているときに途中でにっちもさっちも立ちゆかなくなって、方針転換して最初からやり直すこと。
手戻りがあると、コストがかかりすぎてしまって、このまま進めると予算オーバーになってしまう。
時間がかかりすぎてしまって、このままでは期日に終わらない、他の工程に影響が出過ぎてしまう。
やり直しが多い仕事ほど消耗するものはありません。
お金や時間ももったいないですが、今までの努力を無にしてしまうほど精神的ダメージが大きいものはありません。

では、プロの仕事を身につけるにはどうしたらいいでしょうか。
ぼくの尊敬する小学校教師、野口芳宏さんの言うとおり「意図的に経験を積む」ことだと思います。
ぼくはいつも、この仕事はどんな方法でやっつければいいか、いつまでに終わらせることができるか、いくらかかりそうか、を意識してきました。
つまり、仕事のレシピを自分でつくってみるんです。
そして、その予想を誰かに公言してしまう、約束してしまうようにしてきました。

時には予想が外れてしまうこともありました。
失敗のリカバーに手間取ることもあった。
恥をかくこともなかったとは言えません。
でも、だんだん「言った通り」にできるようになってきたと思います。

こういうことを15年ほど繰り返してきた結果、ぼくも見積もりができるようになりました。
できあがった建物や設備を見ても、だいたいどのくらいの時間がかかったのか、どのくらいの費用がかかったのか、つくった人の腕はどのくらいか、見えるようになってきたんです。
愉快、愉快。

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