2009年5月27日水曜日

共生菌を含めての命

こんにちは

コンビニ弁当などの保存料に「ソルビン酸」がよく使われています。
ソルビン酸を添加すると、48時間くらいは雑菌の繁殖が抑えられ、食品の鮮度を保つことができます。
なぜ雑菌は繁殖しないのでしょうか。
それは、ソルビン酸の分子の形を見ると分かります。

 ソルビン酸 
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BD%E3%83%AB%E3%83%93%E3%83%B3%E9%85%B8

この形は乳酸ととてもよく似ています。

 乳酸
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B9%B3%E9%85%B8

乳酸の左側に、ヒゲのようなものがくっついたのが、ソルビン酸の分子です。
右の方は乳酸と同じ形をしています。
雑菌はこの分子の形にだまされるんですね。

乳酸は雑菌の大好きな食べ物。
乳酸があるとぱくりと食べます。
ソルビン酸は乳酸とそっくりなので、だまされて食べてしまいます。
食べたものは当然消化して、雑菌自身の栄養となります。
ところがソルビン酸にはヒゲ構造が付いています。
そのため、消化ができないんです。
消化ができなければ栄養が不足しますから、繁殖もできなくなる。
つまり、食品の鮮度を保つことができる、というわけです。

ソルビン酸自身は無毒とされています。
ヒトの体細胞をシャーレで培養し、そこにソルビン酸を振りかけても、体細胞は死滅せず劣化もありません。
異常なく細胞分裂して増殖もしていきます。
なので、ソルビン酸は雑菌に特異的に効果のある、人体には無害な食品保存料として認可された添加物なのです。

でもちょっと待ってください。
ヒトの腸内には一人当たり100種類以上、100兆個以上の腸内細菌が生息しています。
成人の体細胞は約60兆個ですから、体細胞より多くの腸内細菌がいるのです。
ぼくらが排泄するうんこの重さの約半分が腸内細菌またはその死骸であると言われています。
この腸内細菌は、雑菌と同様な生物です。
ソルビン酸は、腸内細菌にも食べられ、腸内細菌の増殖も抑制してしまう恐れがあるのです。

腸内細菌は、ただヒトの腸の中に住んでいるわけではない、ということが近年の研究で分かってきています。
外部から悪い細菌が入ってきたときに、既に腸内にいる細菌が悪い細菌をブロックしている。
悪い細菌が繁殖しないように防御しているんです。
それどころか、腸内細菌はビタミンなど栄養素を生産して、それをぼくらは吸収して利用したりしているんです。
つまり、腸内細菌はヒトと「共生」しているのです。
ソルビン酸は、このような共生者である腸内細菌を弱める可能性もあるんです。

藤田紘一郎『ゼロ歳からの免疫力』集英社be文庫\600-にこう書いてありました。

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私はかつてアメリカで実験のためにコレラ菌を飲んだことがあるが、なんともなかった。
ところが腸内細菌を抗生物質で弱らせてからコレラ菌を飲んだら、ものすごい下痢になってしまったことがある。
専門家の間では「腸内細菌は臓器のひとつ」とさえ言われているほど、人が生きていくのに欠かせないわけだ。(35p)
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ぼくらの体は腸内細菌も含めて命を保っていると言えそうです。
その意味で、ぼくらの体の一部、命の一部なんです。
腸内細菌を大事にしないのは、ぼくら自身の命をいじめていることでもあるんです。

最近の新型インフルエンザ騒動で、感染者に若者が多いようです。
その一つの原因に、食生活の問題もあるんじゃないかって思っています。
コンビニ弁当やインスタント食品など、保存料がたくさん含まれている食品を頻繁に食べている。
それによって腸内細菌がいじめられ、元気がなくなっている。
そこにインフルエンザウイルスがやってきて、それに対抗できなくなっているんじゃないか。

腸内細菌はぼくらの臓器のひとつなんです。
大切にしなくちゃね。


ソルビン酸の防腐剤としての原理は、TBSラジオ「サイエンスサイトーク http://www.tbs.co.jp/radio/xitalk/ 」での、福岡伸一さんの放送で聞きました。

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