2008年8月30日土曜日

プロはオーソドックス

こんにちは

前便でこう書きました。

###
同じく同じ人種の中でも、ひとりひとりホンの少しずつですが遺伝子は違っています。
それが「身体の個性」なのです。
個性があるから、自分が何に向いているか、自分は何を鍛えていけばいいかは、ひとりひとり違っているし、違うべきなんです。
個性に向いていないことを無理して努力しても、よい結果は得られません。
自分の個性を見極めて、自分の可能性を考えていくのがいいんです。
###

誤解しないでくださいよ。
個性を見極めなくちゃいけないって言うのはオリンピック選手レベルの話。
ビジネスマンでも、トッププロでの話なんです。

ごくごく普通の人は、あたりまえながらそこまで行けないわけです。
素質がなかったり、努力ができなかったり、経済的に無理だったり、学歴がなかったり、家庭の事情があったり、いろいろな要因があるでしょう。
でも、オリンピック選手にはなれないかもしれない、トッププロになれないかもしれないからと言って、それは自分の個性に合っていないからとあきらめちゃうのもバカですよ。
それは、自らを限るものでしかありません。
努力をしない、努力をしたくない言い訳にしちゃっているだけです。

黒人だって、遺伝的にオリンピックの水泳選手レベルにはなれないからと言って、水泳をまったくしないというのももったいない話です。
練習すれば泳げるようになりますし、泳げた方が人生楽しくなります。
トップにはなれなくても、ある一定レベルまでだったら、正しいやり方で一定の努力をすれば、誰でも泳げるようになるのです。

ビジネスマンでも同じです。
トッププロは無理としても、ほどほどの成果をあげることはできるようになります。
それは、遺伝とか才能とかと無関係なんです。
正しいやり方で一定の努力をすれば、誰でもプロになれるんだと思っています。

大久保幸夫『ビジネス・プロフェッショナル』ビジネス社\1400-にこうありました。

###
一つだけ勘違いしてはいけないのは、歴史上確立されたその仕事の技術や知識については、好き嫌いをしてはいけません。
たとえば、経済学者なら、ノーベル経済学賞をとったような経済学者がどんなことを理論化して何を研究してきたのかといったことを、絶対に知っていなければいけないのです。
いま現在次々に誕生している新しい技術や知識は、いずれ消え去ってしまうものでありますし、あるいは、方向性がずれてきて別の領域に発展していくものもあります。
このため、現在進行形の技術や知識は、そのすべてを徹底的に追いかける必要はなく、情報として知っていれば、その中身にはまったく無関心でもかまわないのです。
しかし、そうして次々に誕生した知識が研ぎ澄まされて、やがてその仕事の固有のものとして確立されていれば、これはプロとして一人前になるまでに必ずマスターしなければならないものとなります。(141p)
###

オリンピックの選手だろうと、ビジネスマンのトッププロであろうと、その能力の95%は基礎的、普遍的、共通的な部分なんだと思います。
それは、歴史上確立された技術です。
オリンピックに出場する体操選手であれば、今や「月面宙返り」なんて技は誰もができます。
そのような95%はできて当たり前なんです。
その上で、クリエイティブな部分である5%で勝負をしているのです。
オリンピック選手と言えどもオーソドックスな訓練が95%も積み重ねてきたわけで、華やかな5%の部分だけ見ていると間違えます。

華やかな5%で勝負することは、実はとても厳しいことです。
オリンピックに出場できる人数は限られたものだし、メダルを取れるのもさらに厳しい。
だからとてもリスキーなんです。
オリンピックに出られなければ、メダルを取れなければ、あまり評価されないんです。
でもオリンピック選手は5%の部分で勝負するしかないんですね。

ところがビジネスプロは違います。
たいてい95%の部分で勝負しているのです。
だってたいていの問題は、基礎的、普遍的、共通的な知識、技術、技能で解決可能なんですから。
弁護士資格、公認会計士資格、技術士資格、電験資格だって、この95%部分を試験しているのです。
基礎的、普遍的、共通的なことが必要十分であるから、国はその仕事を任せてもよいとお墨付きを与える。
決してクリエイティブな5%の部分を評価しているのではないのです。
95%の部分には教科書があります。
正しいやり方で一定の努力をすれば、誰もがなれるレベルと言っていい。

でもたとえ弁護士資格、公認会計士資格、技術士資格、電験資格を持っていても、プロとは呼べても、トッププロでは必ずしもない。
ビジネスでは、ごくごくたまーにクリエイティブな事案に取り組む必要が出てくるわけです。
というより、自分の能力を高めるため、おもしろいから5%にもチャレンジするわけですね。
そこには当然、教科書はありません。失敗もあるはずです。
でも95%の部分が盤石なら、ちょっとくらい失敗してもプロ生命は保てるってわけです。
つまり、「余裕」があるから困難なことにもチャレンジできるんですね。
95%がしっかりしているから、トッププロは5%を持てるようになるんだと思っています。

0 件のコメント: