こんにちは
昔の資料をながめていたら『学校運営研究』'93.10月号に書いた原稿が見つかりました。
もう15年も前ですねー。
その頃ぼくは某信販会社の電算機センターで働いていて、教育業界から技術者に方向転換したばかりの頃です。
技術者として何とか自立したいと思って、めちゃくちゃ勉強もしていた頃です。
見つかった原稿を読んでみて、15年前からぼくの言ってることって全然変わっていないことが分かりました。進歩がない?
学校の先生の仕事の第一は、面白くて役に立つ授業をして生徒に学力や技術・技能を身につけさせることであり、親や世間はそれを最も期待している。
それを抜きに、生活指導ばかりやるのは何か違うし、ピントが外れている。
生活指導も大事だが、それは生徒の学力を保障するための「手段」であってほしい。
それ自身を目的化した生活指導は、おせっかいである。
そう思って、この原稿を書いたんです。
その考えは今もちっとも変わりません。
原稿を以下に転記します。
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教師は今、どんな意識改革が必要か
立場が変わって見えてきた「学校の常識・世間の感覚」
異業種に変わって見えてきた「学校の常識・世間の感覚」
電気設備技術者 関口芳弘
--先生もねえ、忙しい忙しいって言うけれど、やることさえやってくれるの
なら、ゆっくりしていてもいいのにねえ--
俗にいう”下駄箱会議”で、ぼくたちは、よくこんな話をしている。先生方は
ご存知ないかもしれないが。
ぼくの同僚に、T君がいる。小学二年生の子どもの父親である。
ぼくとT君は同じ歳ということもあり、また、ぼくが以前教師だったというこ
ともあって、よく子どもの話をする。
T君の子どもは、男の子であるが、いわゆる”やんちゃ”な子どもなのであ
る。
T君の子の小学校の担任は、女性の先生らしいのだが、彼のやんちゃぶりには
手を焼いているらしい。
そのため、よく先生から電話がかかってきたり、学校へ呼び出されたこともあ
るそうだ。
それで何を言われるかというと、授業中のT君の息子の落ち着きのなさ、わが
まま、だらしなさ、などなどを、こと細かにならべたてるのだそうな。
そして彼女が、T君の息子の指導にどれほど大変なおもいをしているか、彼の
将来についていかに心配をしているか、実に丁寧に話してくれるそうである。
最後には「家庭でのしつけを、もっときちんとして下さい」というようなこと
を言われるらしい。つまり、説教されるわけだ。
ぼくはこの現代に、親を学校に呼び出して説教する教師が現存することにも興
味を引かれたが、それよりも、T君は親としてそのことをどう思うのか、興味
を持った。
息子と担任の先生についての話をぼくとしている時、T君はちっとも深刻そう
ではないのである。楽しげに、愉快に、むしろ息子のことを自慢しているよう
でもあるのである。
男の子なのだから、多少やんちゃでもいい。やんちゃな方が、子どもらしくて
いいじゃないか。--そのように考えているのだ。
そのような考え方は、けっして親バカだからというわけでもなく、無軌道な甘
やかしというわけでもないだろう。
それはT君自身の、これまでの生き方、人生観に裏打ちされたものなのだ。
T君自身、子ども時代、青年時代、そうとうなやんちゃだったらしい。彼の”
武勇伝”を聞くと、メチャメチャ面白い。
やんちゃであったT君も、技術者という、どちらかと言えば地味な仕事に就
き、結婚をし、子どもを生み育てているのである。
T君は、「姿勢の悪さと、歯の悪さは親の責任だ」とよく言う。
なんてかっこいい!
そんなT君であるが、学校では夏休みに入った日、ポツリと言った。
「夏休みは子どもに勉強を教えてやんなくちゃなあ・・・」
昨日の終業式の日、息子が持ち帰った通知票を見て、そう思ったのだそうだ。
あまり成績が良くなかったのである。
ぼくは、「T君の子どもはさ、頭が悪いんじゃなくて、単に授業態度が悪いだ
けだろ」と励ました。
T君はニガ笑いを返したが、やはり人の親、子どもの成績は気になってしまう
のだろう。わかるなあ。
T君に限らず親なら、通知票の「生活の記録」の欄は多少悪くても気にはしな
いが、「学習の記録」の欄はとても気になるのだ。学校の先生は、生活の記録
の方こそ重視してほしい、と思っているのかもしれないが、親としては、自分
の子どもが落ちこぼれていないのか、勉強についていけなくてイジケてしまわ
ないか、その方がやはり気になるのである。
T君はこうも言う。
--いろいろ好き勝手やってきたけれど、あんまり勉強しなかったツケが今ご
ろ回ってきたよなあ--
T君ばかりでなく、ぼくもまた同じ思いでいる。
ぼくたち設備管理技術者は、持っている資格によってできる仕事の幅がそうと
うに違ってくる。
国家試験の勉強をしていると、学校で習うことはものすごく役に立つのだな、
と実感する。もっとちゃんと勉強しておけばよかったと。しかし、すでに後の
祭りであるが。
資格のためばかりではない。日常の仕事をこなしていく時でも、昔学校で習っ
たこととの関連を見つけて、ハッとすることがよくある。
T君も感じているにちがいない。だから息子には勉強してもらいたいのだ。
さて、冒頭に戻る。
先生は忙しい忙しいと言う。かつてぼくも教師だったから分かるが、事実忙し
い。けれども、しなくてもよい仕事をかかえて、自ら忙しくしていないだろう
か。考えてほしい。
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