2008年9月10日水曜日

過剰品質に気をつけろ

こんにちは

ぼくの仕事は、研究所の電気設備や機械設備を作る仕事です。
仕事柄「過剰設備」には気を遣います。
過剰設備とは、必要以上の容量と品質を持つ設備のことです。
たとえば、700ルクスの照度が必要な実験室に、1万ルクスのシャンデリアを付けるようなこと。
つまり無駄な設備ですね。
でもあんまりギリギリに設計してしまうと、将来の拡張性がなくなってしまいます。
だからある程度の余裕は必要です。

技術者とは、右手に理想を、左手に現実を握りしめている存在です。
理想ばかり追い求めると、とんでもなく過剰なものを作ってしまいます。
予算だってオーバー。
逆にあんまり現実ばかり見ていると、つまらない仕事しかできません。
理想と現実のバランスを考えて、過剰にもならず将来への発展の可能性も残した設備にする。
余裕は見込みつつ過剰設備にはしないというのが、技術者の腕の見せ所なんです。
技術力のない技術者は、過剰設備を作りがちなんですよ。
それは自分の保身のため、安全側、安全側に作るからです。
こういう人は後で誰からも文句を言われないようにしたいだけなんです。
で、人の金を使って無駄なものを作っちゃうんですね。
「完璧に作ってくれ」なんて言う人は、それだけで技術力のない証拠なんです。
 
普段の仕事でも同じです。
能力のない人に限って完璧に仕事をしようとする。
それは誰からも文句が出ないようにしたいという、自己保身からなんですね。
その心がけはいいと思うんですが、それが過剰品質だって気づいていないんですね。
そして締め切り日を守れない、守らない。
困りもんです。
たいていの仕事は完璧にやる必要なんかないんです。
ポイントさえ外さなければ、60点の出来で十分。
相手の求める品質を見極め、求められているレベルにちょっと+αするのが一番喜ばれます。

和田秀樹・大塚寿『転職力』PHP\1300-を読みました。

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(略)「過剰品質」という概念である。
私(大塚)が最初にこの概念に触れたのは、アメリカのビジネス・スクール時代だった。「オーバー・クォリファイド」という表現なのだが、お約束のように頻繁に登場するのには驚いた。
点数が足りなくて落ちるのは当たり前だが、できすぎて落ちるのは納得がいかないと思う人は少なくないだろう。
しかし、人材獲得のための予算が決まっている以上、将来的に必要以上にコストがかかりそうな人材は採りたくないというのが企業の本音だ。
また、課長ポストの人間を取る場合に、部長よりも優秀な人材を採ってしまうと、組織になじまなくなる。それでは、その課長は本来の能力を発揮できなくなる。
人材としての優秀さだけではなく、組織全体のバランスも見ながら採用するために、過剰品質の人材は必要なくなるのである。
これが転職と受験との決定的な違いだ。(67p)
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設備だけじゃなくて人に対しても「過剰品質」という概念があるんですね。
そういえば最近やった仕事で、あるメーカーが配管清掃の人件費をひとり1日7万円で見積もってきて、ビックリしたことがありました。
いったいどんな偉い方に掃除をさせるのだろうか、って思ってしまいました。
ちなみに、技術者としての最高峰である技術士の標準人件費が技術士会で決められています。
それによれば、ひとり1日7万2千円です。
技術士並の人に清掃をさせちゃあ。。。ですよね。
高い人件費を取る人にはそれにふさわしい仕事をしていただかなくては、その人に失礼です。

学校に勤めているとき、教頭先生が校庭の草取りやゴミ焼きをしているのを見ました。
公務補さんがお休みしたときとかなら分かるのですが、毎日やっている。
教頭先生の人件費に見合った仕事なのかなあ、って疑問でした。

学校の入学試験なら100点なら文句なく合格ですが、企業の採用試験では100点の人は「過剰品質」となってしまうため落とされることもある、という話は面白い。
逆に採用される側の労働者から見ると、求められるに過不足ない、求められているレベルにちょっと+αだけの能力をプレゼンできると、採用されるってことですね。

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