こんにちは
ぼくの仕事のひとつは工事の監督員です。
昨日は日帰りでSPring8へ出張してきました。
加速器の制御を行う研究者との打ち合わせです。
今や研究実験施設も、建物と実験装置を独立に造れることはなく、一体的に造っていかないとよい施設ができないのです。
だから、研究者との打ち合わせを綿密に行い、思想(コンセプト)を理解し、すりあわせておかなくてはなりません。
思想(コンセプト)が共有できれば、あとはお互いプロフェッショナルですから、それぞれの分担を地道かつ的確にすすめていくことができるのです。
よい施設を造るために、ぼくも監督員なりに心がけていることがあります。
それは
施工する人が実力を発揮できる環境を提供する
ことです。
施工者が得意とする分野で力を発揮してくれれば、自ずと良い出来になるわけです。
そのために具体的には、「見通しをつけてやる」ことが大事だと思います。
リソースの分配を間違えない、と言ってもいい。
実際の工事があまりない段階では、じっくりと設計図や施工図の検討をする。
必要な打ち合わせはこの時期にすべて終わらせてしまうようにする。
あるいは、書類を作ったり役所への届出など事務的な仕事をやっつけてしまう。
そして工事が本格化したら、工事だけに専念できる状況にしてしまうわけです。
人はいくら有能であっても、二つも三つも同時に仕事をすることはできません。
やはり一つに集中するからいい仕事ができるのだと思います。
そういう状況を作ってやるのがぼくの大切な仕事だと心得ています。
でもこれは逆に考えれば、非常に厳しいことでもあります。
いっぺんにいろいろな仕事が重なったためにいい仕事ができなかった、という言い訳を許さないからです(昨日の藤原和博さんの話と通じるでしょ)。
いい仕事をして、そして最後には施工した人も自分の会社で評価されるようにする。
そしてぼくもいい実験施設を造って、職場やサイエンスに貢献する。
お互いwin-winの関係を築く。
よい結果へと上手く接続していきたいと、常に考えているのです。
永守重信『奇跡の人材育成法』PHP文庫\419-から引用します。
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何事もパーフェクトにできる人間はいない。
だが、わずかでも余裕があれば、行動を起こす前にもう一度考えてみることができる。
ところが、このゆとりがなく、いつもギリギリの状態で物事を進めていると、小さなミスもどんどんふくらんでいく。
そして、あらゆることがルーズになって、それが当たり前になってしまう。(102p)
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要は余裕を作ることなんですね。
直前になって、その場になってあたふたしないで済むような状況を作るんです。
昨日の研究者との打ち合わせで得られた方針を、建築技術の言葉に翻訳して、かつ施工上適切な時期に施工者に伝えていく。
そのことによって施工者も余裕を持って工事に邁進できる。
ゆとりがあれば、ミスも少なくなります。
それがぼくの監督員の仕事のやり方なんだと思っています。
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